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©はるナル @東京/寺社仏閣・清掃業/文章とイラストを描いています/猫好き/イラスト歴:二年/好きな作家/シュピリ(ハイジ)、ルイス(ナルニア国)、バーネット(小公女・小公子)、宮沢賢治(銀河鉄道)

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樫の木庵のマボ(第1巻 大賢者ニルバーニアと双頭の魔女)

樫の木庵のマボあらすじ 樫の木村に、小さな男の子と目の見えないおばあさんが、ひっそりと暮らしています。男の子の名前はマボ、まだ5歳です。少し臆病で控えめですが、優しい性格です。 このマボのお友達に、気が強く好奇心旺盛な孤児モモ、お金持ちを鼻にかける、つんとすましたお嬢様のネネがいました。樫の木村にある時、世界に広がっているはやり病がおそいました。 そこに普段姿を現さない大賢者ニルバーニアが現れました。大賢者は6歳まで病気にならないことに目を付け、マボ、モモ、ネネを、村を

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    • 第十一章:マボとトロル兄弟!?7 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

      とはいえ、震えていたマボですが、逃げるとしたら今しかありませんでした。怖くて足がなかなか言うことをききませんが、マボは覚悟を決めてよたよたと逃げ始めたのです。 7 トロル兄弟はすっかり喧嘩に夢中で、マボが逃げたことにも気づきません。マボは逃げ切ることができたのでしょうか? 残念ながらそうではありませんでした。トロル兄弟は間もなく喧嘩に飽きてしまい、「わかった、今回は特別だ。お前にも少しわけてやるべ」という兄トロルの提案に妥協をみたのです。それから、マボはどこに行ったと辺り

      • 第十一章:マボとトロル兄弟!?6 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

        「たごさく、心配するでねえ。この野兎みたいなチビをみろ。オラの指先でぶるぶる、ぶるぶる震えているでねえか。こんな子供が妖精の騎士のわけはねえだ。それに、妖精の騎士だとしても、オラが負けるわけねえ!」このトロル達は実際に妖精の騎士と戦ったことがあるわけではありません。この界隈では一番強いと言う自信もありますので、怖い者知らずだったのです。それから、マボを地面にこそいったん降ろしましたが、逃げないように周りを巨大な手で覆っていました。 6 「そ、それもそうだな。じゃあ、早速、

        • 第十一章:マボとトロル兄弟!?5 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

          「そうだが…こんな時にエルフを呼び出されたら、面倒なことになるかもしれんな」 用心深い兄トロルはそう言うと、輿の中に指を入れてマボの腰をつかんでひょいと掴み出したのです。 5 マボは空中で手足をばたつかせましたが、どうにもなりません。さらに下を見ると、その高いこと、目がくらむことといったらありませんでした。はるか下にポツン、ポツンとはえた低木は、黒い点にしか見えません。マボと同じ高さのところを、鷹が旋回しているほどでした。トロルが指を気まぐれに離そうものなら、マボは何十メ

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        樫の木庵のマボ(第1巻 大賢者ニルバーニアと双頭の魔女)

        • 第十一章:マボとトロル兄弟!?7 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

        • 第十一章:マボとトロル兄弟!?6 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

        • 第十一章:マボとトロル兄弟!?5 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

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          第十一章:マボとトロル兄弟!?4 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

          弟トロルが言うと、「もっともだ」と2人で顔を合わせてゲタゲタと笑いました。その笑い声の不気味なこと、大きなこと、不快なことといったらありません。マボは耳がおかしくなりそうなので、手でふさがなくてはいけないほどでした。 「さてと、では小人の子供をいだくとするかな…久しぶりのごちそうだ!」 4 兄トロルはお輿に手を伸ばしました。その広げた手のひらは、マボの体が簡単にすっかりおおわれてしまうぐらい大きなものでした。そして、マボの乗るお輿をつかむと軽々と持ち上げたのです。 「い

          第十一章:マボとトロル兄弟!?4 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

          第十一章:マボとトロル兄弟!?3 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

          途端にあたりがしんと静まり返り、聞こえるのは泣き声のような風の音だけになりました。しかし、すぐにドスン、ドスンと轟音を響かせ、何者かが近づいてくる足音がしました。足音が鳴るたびに地面がぐらぐらと揺れ、そこかしこにある岩山の石がごろごろ転がり落ちる音がするので、マボの心臓はすっかり高鳴りました。そして、おそるおそるお輿の隙間から外を見たのでした。 3 マボが見たのは、もちろんトロル兄弟でした。天をもつくようないかめしい岩山が2つばかり動いたと思われましたが、それは兇悪で巨大

          第十一章:マボとトロル兄弟!?3 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

          第十一章:マボとトロル兄弟!?2 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

          そうこうするうちに、お輿もいよいよトロル兄弟の住処に近づいてきたのでしょう。あんなに楽しそうに話していた小人たちは、すっかり黙り込んでしまいました。 2  それからいくばくがたつと、お輿は迷い森をぬけ、赤茶色の地面とごつごつとした灰色ではだかの岩山がつらなる大変開けた場所に出たのでした。見渡す限り草ひとつはえておらず、太古の岩々が塔のように天高くそびえ立っているので、荒野という表現がぴったりの場所でした。風が強く吹いており、空にあるいわし雲がすごいスピードで流されていきます

          第十一章:マボとトロル兄弟!?2 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

          第十一章:マボとトロル兄弟!?1 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

          「マボさん、ありがとう、頼んだよ~!」 チャッピが手を振ると、小人たちがそろって真似をしました。いよいよマボはトロル兄弟のところに向かったのでした。 1 4人の小人がマボが入ったお輿を抱え、えっちら、おっちら森をかけています。といっても小人たちは呑気なもの、しばしば足を止めて、 「あ、ごらん。みやまきんぽうげがこっちに向かっておはようとあいさつしてるよ!」 「あちらも見てごらんよ。りんどうの美しいことときたら、ずっと眺めていたいものだねえ」 「そんなそばから、花の上を蝶々

          第十一章:マボとトロル兄弟!?1 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

          第十章:小人村は大騒ぎ!?13 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

          「うーん、とにかく、マボさんに任せておけば、ミィちゃんも安心だね!」 「そうですよ、私たちはこの日を樫の木庵のマボの日にするように長老に頼まないといけないですね!」 「本当にねえ。マボさんのおかげで、小人村も平和が訪れるねえ」 マボはこれを聞いて、さらに心に重たい石がドスンと落ちるような気持になったのでした。マボはよろよろと階段を下りました。 13 「マボさん、おはようござます!」 家族が全員そろって頭を下げました。そして、マボはお母さんが持たせてくれたお弁当を持って、再

          第十章:小人村は大騒ぎ!?13 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

          第十章:小人村は大騒ぎ!?12 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

          つまり、マボのわずかなのぞみは完全に絶たれたのでした。ですが、マボはキッチュの助けもなしにトロルとの対面にのぞむことなど考えたくないことでした。マボは「きっと、キッチュに僕の声が届いているよ、明日にはきっと来てくれるはずだ」そう自分に言い聞かせました。そして、なかなか寝付けずに何度も寝返りをうっていましたが、いつのまにか眠ったのでした。 12 次の日の早朝、楽しげに小鳥がおはようの歌を外で歌い始めました。マボが目を覚ますと、ベットの横に誰かがいる気配がします。マボは思わず

          第十章:小人村は大騒ぎ!?12 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

          第十章:小人村は大騒ぎ!?11 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

          多くの大人たちはマボの周りにわっと集まり取り囲むと、早くも胴上げを始めたのです。それから、再び歌い踊り始めたものですから、もう収容もつきそうにありませんでした。しかし、長老が何とかなだめ、小人たちはついに家々に帰って行ったのでした。 マボはチャッピにつれられ、彼の家で一晩過ごすことになったのです。 11 チャッピの家は川原広場のすぐそばにありました。お父さんとお母さん、弟の4人暮らしです。 夜も更けたとあって、マボはすぐに屋根裏部屋に通されました。そこはお客さん用のベッ

          第十章:小人村は大騒ぎ!?11 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

          第十章:小人村は大騒ぎ!?10 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

          「僕からもお願いします、ミィちゃんを助けてください」 「お願いします!」 「お願いします!」 とチャッピ、デカ、チビも言いました。ミィを見ると、目には涙がたまっています。 10 もし、ここでマボが首を横に振れば、ミィは明日にはトロルのところにつれていかれ、食べられてしまうでしょう。マボは思わず、モモやネネが同じような目にあっていたら、どんなに辛いだろうと思いました。そして、何とか助けてあげたいとも思いましたが、いったいマボに何ができると言うのでしょうか。見るにいかめしい武

          第十章:小人村は大騒ぎ!?10 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

          第十章:小人村は大騒ぎ!?9 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

          長老の一言で歓迎会は終わりました。マボはほっと溜息をつきましたが、まだ続きがありました。長老を始め、小人たち300人がマボの前に座ったかと思うと、みんながみんな平伏したではありませんか。まだ平伏の意味を知らない赤ちゃん小人たちだけが、不思議そうにきゃっきゃっと笑いながら、周りを見ています。もうこうなると、マボはお地蔵さまのように固まるよりほかありません。 「マボ様、実を申し上げれば…」  長老はやっと本題を話し始めました。長老によると話はこうでした。 樫の木庵のマボ(第1巻

          第十章:小人村は大騒ぎ!?9 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

          オマージュ、イラスト1

          キャラクターデザインが好きなので、練習のために描いています♪ そのまま描いてもおもしろくないので、オマージュしています。

          オマージュ、イラスト1

          第十章:小人村は大騒ぎ!?8 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

          リーダーのボバンフールがこう言うものですから、戦士小人はすっかり興奮してしまい、携帯している武器を腰や背中から抜いて、振り回すばかりか、中には打ち合う者まで現れました。それは、とても危なっかしく、マボはすっかりドギマギしました。 8 しかし、今度はその様子を見ていて老婆の小人が歩み出ると、マボに手を合わせ始めています。 「こんな機会はめったいにないからのう。死んだじいさんにも一目でいいから、伝説のマボ様をお目にかけてやりたかった」 などと言っています。 「ばあさんの言うと

          第十章:小人村は大騒ぎ!?8 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

          第十章:小人村は大騒ぎ!?7 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

          また、たき火を囲み、音に合わせて踊る小人の影がゆらめくものですから、何ともいえない幻想的な雰囲気を醸し出しているのでした。小人たちはみな楽しそうにしていますし、そのうれしそうなことと言ったらありません。しかし、マボの気持ちは沈んだままでした。 樫の木庵のマボ(第1巻 全話完結)|遥ナル (note.com) 7 ですが、さらに追い打ちをかける出来事がありました。いつのまにか演奏や踊りをぼんやりと見とれていたマボの後ろに小人たちが横一列に整列し、ひざまずいているではありま

          第十章:小人村は大騒ぎ!?7 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)