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第十一章:マボとトロル兄弟!?6 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

「たごさく、心配するでねえ。この野兎みたいなチビをみろ。オラの指先でぶるぶる、ぶるぶる震えているでねえか。こんな子供が妖精の騎士のわけはねえだ。それに、妖精の騎士だとしても、オラが負けるわけねえ!」このトロル達は実際に妖精の騎士と戦ったことがあるわけではありません。この界隈では一番強いと言う自信もありますので、怖い者知らずだったのです。それから、マボを地面にこそいったん降ろしましたが、逃げないように周りを巨大な手で覆っていました。

「そ、それもそうだな。じゃあ、早速、2人で半分に分けてすっかり頭から食べてしまおう!」
このたごさくの恐ろしい提案に、兄トロルは納得いかずに言い返しました。
「たごさく、何を血迷ったことを言っとるだ。今回は俺の番だ。お前になんで半分も分ける必要がある!?」
「確かに今回は兄者の番だ。だけれど、この前は兄者に分けてやったんだから、俺も食べるのは当然だべ!」
「確かにそうだな。なら、こうするべ。すっかりまわりを食べてしまったら、残った骨をお前にめぐんでやろう、ありがたく思え!」
「骨だって!」
「ああ、お前みたいなもんは、骨だけで十分だ。それを、ちゅぱちゅぱ、しゃぶってればええだ!」

すると、たごさくは地団太を踏み、怒り出しました。まるで地震が起きたようにあたりが揺れ出しました。
「兄者、それじゃあ、割に合わねえど! 俺にも肉がついたものを半分くわせろ! このドケチが!」
「何言っとるだ! このチビは俺のもんだ!」
「何をこのしみったれのはちべえめ。かわいい弟に優しくしない奴は今に痛い目をみるぞ!」
「かわいい弟だって!? お前、その醜い面を鏡で見たことはねえのか、この無駄飯ぐらいのろくでなしのぬけさくめ!」
「ぬけさくっていうな、俺はたごさくだべ!」

ついにトロル兄弟は取っ組み合いをはじめ、さらには喧嘩になり、拳を作って殴り合いを始めたのです。その恐ろしい光景といったらありません。塔のようにそびえたつ2人の巨人が、ごつごつした拳でなぐりあっているのですから!拳は時に空をきり、あちらこちらの岩山を打ち砕きました。その岩山の破片が飛び散り、頭を抱えてブルブル震えるマボの近くにドスン、ドスンと落ちたのです。

とはいえ、震えていたマボですが、逃げるとしたら今しかありませんでした。怖くて足がなかなか言うことをききませんが、マボは覚悟を決めてよたよたと逃げ始めたのです。

樫の木庵のマボ(第1巻 全話完結)|遥ナル (note.com)

マボ:5歳の男の子。臆病で控えめだが、優しい子供。家は貧しく、町はずれの傾いた掘立小屋で暮らしている。
モモ:5歳の女の子。おてんば、おしゃべりで元気な子供。施設育ちで、街一、二位を争う金持ちシュールレ奥さんにひきとられている。
ネネ:5歳の女の子。お金持ちの子供で、つんとおすまししたお嬢様。

ニルバーニア:めったに人界に姿を現さない大賢者。若い娘のような顔立ちだが、老婆のような話し方をする。動物(特に鳥族と仲が良い)と話すごとができ、様々な魔法を使うことができる。自宅のログハウスでは、猫のピッピをかわいがっている。

キッチュ:エルフの女の子。愛しのバブバブ坊やを探している。人間の子供を見つけると、虫に変えようとする。

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