ご応募ありがとうございました

ご応募ありがとうございました

「第36回 福島正実記念SF童話賞」は9月末に応募が締め切られました。 これから選考期間に入り、結果の発表は来年の4月の予定です。 ご応募くださったみなさま、ありがとうございました。 と、お礼を書いているわたし自身、この賞の第17回の受賞を機にデビューいたしました。もう20年以上前……2000年のことです。 デビュー作(その年の応募作)「ママがこわれた」の書影を上に貼っています。 (今は隔年開催ですが、当時は「毎年」でしたので、36-17の数字とはズレが出ますが)

スキ
5
【短編小説】ハカセのストレス発電機

【短編小説】ハカセのストレス発電機

踏むたびにきしむ音のする階段を、ぼくは駆け足で登ってく。 2階の廊下の一番奥にある部屋の前まで来ると、いつも通りドアに掛かってるオモチャのハンドルの中央にあるクラクションを押す。ププー、と大きな音が部屋の中で鳴ってるのが聞こえる。これがこの部屋のインターフォン代わりだ。 返事はない。勝手に部屋に入ると怒られることがあるのだけど、3回鳴らしても出てこなかったので、ぼくは恐る恐るドアノブを回してドアを開ける。 中に入ると、ハカセが部屋の中央で、うつ伏せで抜け殻のように横たわって

スキ
14
やっとスタートラインに立てた
+3

やっとスタートラインに立てた

 子どものころに読んだお話が、ずっと心のなかにある。わたしは、そのお話とともに、大きくなってきた。  小学生のころ、わたしはこの物語が大好きだった。 「SOS!時計よとまれ」くもん出版 さとうまきこ 作 伊藤良子 絵  この本は学校の図書室にあった。わたしの目にはこの本が本棚のなかで、ひときわ輝いて見えたのだ。わたしの図書カードには「SOS!時間よとまれ」のタイトルばかりが並んでいた。借りては返し、借りては返していたのだ。一年間で、たくさん図書室の本を借りた人のなかに自

スキ
8
「オオカミ族の少年」読了。

「オオカミ族の少年」読了。

【オオカミ族の少年】ミシェル・ペイヴァー=作 さくま ゆみこ=訳 酒井駒子=画 「クロニクル千古の闇」シリーズ1作目。 酒井駒子さん画の表紙が独特の雰囲気を醸し出すファンタジー小説。 【あらすじ】紀元前4000年。 父親と二人で森に暮らしていたオオカミ族の少年・トラクは、悪霊に取り憑かれた熊に父親を殺される。最後に父と交わした「万物精霊の宿る山を見つける」という誓いを果たすため、トラクは旅に出る。旅の途中で出会った生後間もないオオカミ「ウルフ」と、ワタリガラス族の少女・レ

スキ
2
劇団6年2組

劇団6年2組

週一回の勤務だが、半年以上経つと、それなりに関係もでき、学校司書としての信頼もでき、相談も受けるようになった。 先日も、5年生の担任から、発表会の劇のために、「劇や劇団がテーマや出てくるおはなし」を紹介して欲しい。子どもたちに演じてもらい最後は、劇の幕が上がって終わるようにしたい。つまり、劇ができていく経過を劇にしたいとのこと。わかりやすく、具体的に必要とする図書を説明してもらったのだが、逆に具体的過ぎて思いつかない。 まっ、困った時のネット!検索ワードを色々入れて検索し

スキ
5
『やさしさ』1話

『やさしさ』1話

今日は平成が始まって、さいしょの夏休み。澄みわたる空に、きれいな水がやさしく流れる小川。夜になると、星空とともにカエルの合唱が聞こえる田んぼ。 そんなおだやかで、人々が生き生きとしたこの村に、小学四年生の千絵ちゃん一家は暮らしていました。そして、今日の千絵ちゃんの予定は、まさに分刻み。朝から自然体験教室に参加して、夕方はおばあちゃんと買い物へ行く約束がありました。いつもは苦手な早起きを、本日は成功させて、もう玄関前にたどり着きました。 「それじゃあ、おばあちゃん。わたしが戻っ

スキ
2
『やさしさ』2話

『やさしさ』2話

おばあちゃんは、あわててぞうりを履き、千絵ちゃんが走っていった方向へ追いかけます。どうやら、山道の方へ行ってしまったようです。 「チエちゃーん、チエちゃんやー」 自慢の体力で、声を出しながら足を進めるおばあちゃん。だんだん木々が増えていき、道には日陰が多くなりました。それから数分が経って、おばあちゃんは座りこんでいる千絵ちゃんを見つけました。 「チエちゃん、悪い思いをさせたね。本当にごめんね。さあ、日が暮れないうちに帰ろう」 千絵ちゃんは、後ろを向いたままで、立ち上がろうとは

スキ
1
『やさしさ』3話

『やさしさ』3話

大正10年 新潟県糸魚川 「窓の外を見ての通り、今年も桜が満開に咲きまして ───」 ここは、糸魚川にある安藤医院。新年度のあいさつをしているのは、安藤俊夫先生。少しお話が長くなりそうです。先生は33歳になる今、自身の医院を持ち、主に内科と小児科を診てきました。つねに患者のことを考える、思いやりのある方でした。 安藤先生のあいさつを、後ろの方で聞いている谷原梅香は、緊張していました。新人看護婦として、みんなの前で軽くあいさつをしなければいけなかったからです。 「それでは、今

スキ
1
『やさしさ』4話

『やさしさ』4話

医院の中へ入ると、安藤先生が朝の準備をしていました。 「おはようございます」 「おはよう、谷原さん。昨日はよく眠れました?」 倒れこむように寝たとは、恥ずかしくて言えず、素直に「はい」と返事をしました。 「今日の谷原さんは、婦長さんと一緒に小児科をお願いします」 看護婦は、梅香やみどりを含め五人いました。その中でも、婦長さんは安藤先生より二十ほど年が上で、体も大きく、ちょっと緊張する存在でした。 「仕事のことで、厳しく言われるかもしれないけど、ガンバってください」 「わ、わか

スキ
1
『やさしさ』5話

『やさしさ』5話

「ウメカー、おつかれー!」 梅香が帰りのしたくをしていると、みどりも内科の業務を終え、合流しました。 「今日はさ、わたしすごくほめられたの!」 どうやらみどりも、今日の仕事に充実感を覚えたようです。二人が喜びを分かち合っていると、一人の女性が近づいてきました。 「二人ともおつかれさま」 そう言ったのは、安藤先生の奥さんであるタカさんでした。医院での担当は、おもに事務の仕事です。ちょっと前までは、手当ての補助もしていました。梅香たちより少し年が上なので、お姉さんのような存在でし