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第十一章:マボとトロル兄弟!?3 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

途端にあたりがしんと静まり返り、聞こえるのは泣き声のような風の音だけになりました。しかし、すぐにドスン、ドスンと轟音を響かせ、何者かが近づいてくる足音がしました。足音が鳴るたびに地面がぐらぐらと揺れ、そこかしこにある岩山の石がごろごろ転がり落ちる音がするので、マボの心臓はすっかり高鳴りました。そして、おそるおそるお輿の隙間から外を見たのでした。

マボが見たのは、もちろんトロル兄弟でした。天をもつくようないかめしい岩山が2つばかり動いたと思われましたが、それは兇悪で巨大なトロルだったのです。
全身はごつごつとした岩のような肌をしており、所々に緑色の苔が生えています。白目の中の黒い瞳はギラギラしてぎょろりと動き、鼻は高く伸びています。マボのことなど一口で簡単に呑み込めそうな大きい口からは、よだれがだらだらと垂れており、その表情は不快で醜いものでした。きっとお腹をすかせにすかせて、小人の貢物を楽しみにしていたのでしょう。マボはまるで自分が蟻んこにでもなって、人間を見上げているような気分になりました。
こんなトロルが兄弟で現れたものですから、マボはもうこの世の終わりに出くわしたとしか思えませんでした。マボは輿の中で息をひそめて、キッチュが来るように祈るばかりだったのです。
 

トロル兄弟は約束通り、貢物の小人がやってきたことに満足していました。ですので、兄のトロル…弟からは”兄者”と呼ばれており、名前は”はちべえ”と言います…が満足そうに言いました。

「あの、小人どもは本当にはしっこいのう。俺たちをみたら一目散に姿をくらましてしまった。挨拶ぐらいしていけばいいのに…何もあいつらまでとって食らうわけでないのにのう」
「何を言っとるだ。挨拶しようもんなら兄者はその腕を伸ばして、4人とも一掴みにして平らげちまうだろうが!」

弟トロルが言うと、「もっともだ」と2人で顔を合わせてゲタゲタと笑いました。その笑い声の不気味なこと、大きなこと、不快なことといったらありません。マボは耳がおかしくなりそうなので、手でふさがなくてはいけないほどでした。
「さてと、では小人の子供をいだくとするかな…久しぶりのごちそうだ!」

樫の木庵のマボ(第1巻 全話完結)|遥ナル (note.com)

マボ:5歳の男の子。臆病で控えめだが、優しい子供。家は貧しく、町はずれの傾いた掘立小屋で暮らしている。
モモ:5歳の女の子。おてんば、おしゃべりで元気な子供。施設育ちで、街一、二位を争う金持ちシュールレ奥さんにひきとられている。
ネネ:5歳の女の子。お金持ちの子供で、つんとおすまししたお嬢様。

ニルバーニア:めったに人界に姿を現さない大賢者。若い娘のような顔立ちだが、老婆のような話し方をする。動物(特に鳥族と仲が良い)と話すごとができ、様々な魔法を使うことができる。自宅のログハウスでは、猫のピッピをかわいがっている。

キッチュ:エルフの女の子。愛しのバブバブ坊やを探している。人間の子供を見つけると、虫に変えようとする。

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