見出し画像

第十一章:マボとトロル兄弟!?7 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

とはいえ、震えていたマボですが、逃げるとしたら今しかありませんでした。怖くて足がなかなか言うことをききませんが、マボは覚悟を決めてよたよたと逃げ始めたのです。

7

トロル兄弟はすっかり喧嘩に夢中で、マボが逃げたことにも気づきません。マボは逃げ切ることができたのでしょうか?
残念ながらそうではありませんでした。トロル兄弟は間もなく喧嘩に飽きてしまい、「わかった、今回は特別だ。お前にも少しわけてやるべ」という兄トロルの提案に妥協をみたのです。それから、マボはどこに行ったと辺りを見回しました。

マボは森とトロルの丁度半分の距離をよろよろと逃げていました。森に入ることさえできれば、獣のように木々の中に身をひそめることができます。ですが、マボが逃げたことに気付いたトロル兄弟は怒って、追いかけてきました。そして、トロル兄弟は大股で数歩ほど歩くと、あっという間にマボにおいついたのでした。
「このチビめが、逃げても無駄だ。お前の足では逃げられんど!」
兄トロルが手を伸ばすと、マボは再び簡単に捕まってしまいました。
「今度こそすっかり食べてやるべ!」
兄トロルは再び口を大きく開けて、マボを丸のみしようとしました。
「いっただきま~す」
今度こそマボは万事休すでした。しかし、この時、とても不思議なことが起きたのです。

実を言えば、マボは気付いていませんでしたが、一匹の美しいカラフルなオウムがいくばくか前に、頭上はるか空高くに現れていたのです。荒野を縄張りとする鷹たちは怒って、そのオウムにいっせいにおそいかかりました。しかし、オウムは軽やかに、それでいてとても素早く動き回るので、追いつくことができません。結局、つかれきった鷹たちは、すごすごと去って行ったのです。

樫の木庵のマボ(第1巻 全話完結)|遥ナル (note.com)

マボ:5歳の男の子。臆病で控えめだが、優しい子供。家は貧しく、町はずれの傾いた掘立小屋で暮らしている。
モモ:5歳の女の子。おてんば、おしゃべりで元気な子供。施設育ちで、街一、二位を争う金持ちシュールレ奥さんにひきとられている。
ネネ:5歳の女の子。お金持ちの子供で、つんとおすまししたお嬢様。

ニルバーニア:めったに人界に姿を現さない大賢者。若い娘のような顔立ちだが、老婆のような話し方をする。動物(特に鳥族と仲が良い)と話すごとができ、様々な魔法を使うことができる。自宅のログハウスでは、猫のピッピをかわいがっている。

キッチュ:エルフの女の子。愛しのバブバブ坊やを探している。人間の子供を見つけると、虫に変えようとする。



ご覧いただきありがとうございます!