Cadd9 #34「失くしたものを取り戻すまで」
ミナミとの電話のあと、樹はラジオを枕元に置いて小さな音量で流しながら、布団に寝転がって本を読んだ。ラジオは街を離れる日にテルジが餞別がわりにくれたものだ。最初は彼が年がら年中履いている長靴を渡されそうになったが、色々と理由をつけてなんとかそれは回避し、代わりにラジオを譲り受けた。長靴もラジオも、テルジにとっては大切な宝物なのだろうが、彼は何の惜しげもなくそれを与えようとしてくれた。
たまたま放送していたラジオ番組の終わりに、中島みゆきの「時刻表」が流れた。樹は本を胸の上に置