Cadd9 #29 「枯れることのない大きな木」
十一月の終わりまで、直は樹の家で過ごした。
包帯が巻かれた直の顔を見て、樹は「誰にやられた?」とまっさきにきいた。直はしばらく考え込んでから、自分だ、とこたえた。もちろん、直が自分の手で左目を傷つけたわけではないことは、樹もわかっているはずだった。むしろ、そのひとことで大体のことを悟ったはずだ。それでも樹は、自分の身体が傷つけられたような、とてもつらそうな表情を浮かべていた。
四日目に、ナスノさんが病院に付き添ってくれた。医者は包帯を外してレントゲンを撮り、左目に光を当て