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セカイの日常

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セカイの日常。
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パン食べすぎ人間の最適化計画

パン食べすぎ人間の最適化計画

「我々はパンを食べすぎている」

紺地のローソファーに身体を預けながら、お気に入りのバタースコッチを食べている時だった。

大きな口でかじりついた瞬間から、仄かなバターの香りとふんわりしっとりした生地が嗅覚・味覚の支配権を奪い取って『さあ、バタースコッチ色に染まりなさい』とわたしに語りかけてくる。

咀嚼するごとに意識は甘美で満たされ曖昧になり、脳内では一面にバタースコッチ畑が広がっていた。

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誰でもライターになれるけれど、誰でも文章が書けるわけじゃない。

誰でもライターになれるけれど、誰でも文章が書けるわけじゃない。

この間、敬愛するエッセイストの塩谷舞さんが、Xでこんなポストをしていた。

日本で生まれたわたしたちは、幼い頃から日本語を学び、国語を学び、文章を書いて生きてきた。最低限の言葉の扱い方が分かるからこそ、誰だって"ライター"になることができる。

学生だから、社会人だから、なんて年齢も関係ないし、ライターという仕事は未経験だから、なんて経験値もまるで関係がない。やれば誰だってなれるのがライターだと、

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オムライスの旅路

オムライスの旅路

ーー鏡よ、鏡よ、鏡さん。
この世でいちばん可愛らしい料理は、なに?

ーーそれは、もちろん。まあるく膨らんだ三日月に、淡い橙色の太陽の粒、そして真っ赤なリボンがあしらわれた「オムライス」でございます。

ーーなんて、可愛らしい!!

もし、わたしが料理の可愛さを知る鏡だったら、一刻も迷うことなくオムライスと答えたい。

ぷくぷくっとしたフォルムも、柔らかく色付いた卵の黄色も、ケチャップが幾重にも混

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"何者か"になりたくて苦しいけど、たぶん、未来から見たら愛おしいのだろう。

"何者か"になりたくて苦しいけど、たぶん、未来から見たら愛おしいのだろう。

家に「Emilia(エミリア)」という名を持つ、テディベアがいる。サラサラと滑らかな美しい光沢のある毛並みに、反射した光を内包するつぶらな黒い瞳。ほんのり口角を上げた口元で、いつもじっと、そこにいる彼女は、日々変わらず"愛らしい"という癒やしをもたらしてくれる。

「Emilia(エミリア)」という名を持って生まれた彼女は、表参道にあるSteiff青山店に並べられ、わたしという人間に見初められた。

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フリーランスは毎日が仕事であり、休みである。

フリーランスは毎日が仕事であり、休みである。

フリーランスという生物は、わたしの周囲ではなかなか珍しいのか、友人からは"何をしているのかよくわからない人"と思われていることが多い。

だからこそ、受ける質問もかなりふわっとしたもので、「普段、なにしてるの?」と聞かれることが多々ある。

返答に困った挙げ句「仕事してるよ」と返してしまい、何とも煮えきらない間が生まれるのがいつものルーティン。その後、広告作ったり、記事の校正校閲したり、その時々に

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パンが大好きなので最高にうまいパン屋を紹介する

パンが大好きなので最高にうまいパン屋を紹介する

小麦粉って、罪よね。

ただの粉の集合体が「パン」に変わると、もう本当、我を忘れてお腹をパンパンに満たしてしまう、パンだけに(つまらない)。

ーーということで、週1でコメダ珈琲のモーニング(あんこトースト)を食べ、月2〜3ペースでパン屋を巡る、体の内側がほぼ小麦粉でできていると言っても過言ではないパン好き人間の一押しベーカリーTOP5を紹介しようと思う。

これまで訪れたベーカリーは数知れず。関

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ライティングでご飯を食べるようになって2年。やっと豊かになってきた。

ライティングでご飯を食べるようになって2年。やっと豊かになってきた。

小さい頃、よく折り紙で遊んでいた。

『かんたん!おりがみブック!』みたいな、1.5cm程は厚みのある折り紙のレシピが詰まった本を開いて、そこに描かれた花や動物を表現することに"憧れた"。

あくまでも"憧れていた"というのは、わたしは本の中で活き活きと芽吹く植物も、今にも動き出しそうな動物も、再現することができなかったからだ。

折り紙の基本は「やまおり」と「たにおり」を知るところからはじまる(

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育休後のキャリアに悩む友人に何と答えるべきだったのだろう

育休後のキャリアに悩む友人に何と答えるべきだったのだろう

好きに生きたらいいのに、という言葉は、薄情に聞こえてしまうのかもしれない。

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空一面に隙間なく分厚い雲が敷き詰められた、湿っぽい昼どき。部活帰りの学生たちに囲まれながら、錆びたコンクリートの階段を降りると、改札の向こうで久しい顔がこちらを見ていた。

高校から続く十年来の友だちと、その子どもだ。この間、会ったときはハイハイしていたはずなのに、しっかり両足で立っている姿に成長の早さを感じて、

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女性だから、男性だから、なんて枠を飛び出す勇気がほしい

女性だから、男性だから、なんて枠を飛び出す勇気がほしい

セクシュアリティについて、考えることがある。

女性だから、男性だから、と性別によって当たり前のように区分されたり、あたかも常識であるかのように決めつけられたりする風習が、いつからか苦手になった。

たぶん、発端は小学6年生の誕生日。クラスの友だちが誕生日プレゼントとして「ディズニープリンセスのジャスミン」のピンバッジを贈ってくれたときから、違和感は始まっていた。

小学生のわたしは、「ありがとう

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消費されない仕事人生を送っていきたい

消費されない仕事人生を送っていきたい

仕事をしていると「あ、今、消費されたな〜」と思うことがある。

たとえば、
・仕事を押し付けられてしまった
・感謝の言葉を一言も貰えなかった
・愚痴の捌け口にされてしまった
・まるで空気のように扱われてしまった
など、相手に都合よく使われてしまう経験のことを、わたしは「消費」と呼んでいる。

「消費される」ということは、自分の中にある何かが消耗するということ。

本来であれば、感謝・笑顔などのポジ

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「友だちと遊ぶのが面倒くさい症候群」の要因を考えてみる

「友だちと遊ぶのが面倒くさい症候群」の要因を考えてみる

友だちと遊ぶのは、好きだ。けれど、面倒くさい。

予定を立てるまでは良いけれど、いざ遊ぶ前日になると「面倒くさいなぁ……」と思ってしまう。もちろん当日の朝も「面倒くさいなぁ……」と思っている。

べつに、その友だちのことが嫌いなわけでも、苦手なわけでも、一緒にいてつまらないわけでもない。「楽しかった!」と帰ってくることだって、しばしばある。

それにも関わらず、あまりにも「面倒くさい症候群」を発症

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魔法にかけられたい大人のディズニーランド

魔法にかけられたい大人のディズニーランド

大型バスから一歩出て、足を地に着けた瞬間、ぴりぴりとした不思議な感覚が身を包む。

緊張のような、ワクワクのような、夢の世界ならではの刺激が足先から頭のてっぺんまでスッと通り抜けて、わたしは思わず息を吐いた。

一歩踏み入れた瞬間、今日が楽しい1日になることを確信させてくれる。
"魔法にかかる"とは、まさに、このことだ。

今年で40周年を迎えるという人生の大先輩であり、幼少期の頃から幾度もお世話

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ポンコツな人なんていない。環境が合っているのか、合っていないのか、それだけ。

ポンコツな人なんていない。環境が合っているのか、合っていないのか、それだけ。

ポンコツとは、どこかに少し欠陥があったり劣化してしまったりして、調子が悪いことを表す言葉だ。

わたしは「またポンコツなことをしちゃったな」と落ち込み、涙することがよくある。
元より感受性が高く、涙腺が緩いタイプの人間なので、刺激が一定ラインを越えるとすぐに涙が噴水のように湧き上がってくるのだ。

昨夜は洗濯機をまわすつもりで洗剤を投入していたのに、電源ボタンを入れるのをすっかり忘れてしまった。

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普通って、生きてきた道らしいよ。

普通って、生きてきた道らしいよ。

「普通、ウェディングドレスは着たいよ! 結婚式は女子の憧れ〜!」

「え、子ども欲しくないの? 女性って普通、子どもは産みたいものかと。へぇ……そういう女性もいるんだね」

「19時からMTG入れたから。は? 定時? いや仕事だから。残業なんて、社会人なら普通だよ」

「好きなバンドの歌詞が掲載された広告がクレームで取り下げられた! なんで!! 普通に良い歌詞なのに……!」

「普通、コップを使っ

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