マガジンのカバー画像

art & fashion

51
アートとファッションにまつわるエッセイ集です。「○○とアート」「○○とファッション」などのシリーズはこちらに。
運営しているクリエイター

#デザイン

【いとへんの旅】秋田・西馬音内盆踊りの端縫い衣装を着てみたら

【いとへんの旅】秋田・西馬音内盆踊りの端縫い衣装を着てみたら

日本各地の布や服をめぐる「いとへんの旅」

今回は秋田・羽後町の西馬音内という地域の盆踊りの衣装をめぐる旅をしてきました。

そして着てきました。

だって、服は着てみないと理解できないですしね。ウェディングドレスの仕事をはじめるときだって、まずはじぶんで着てみることからはじめました。ほとんどそのために結婚したようなものですから。(それでいいのか)

今回の記事では、わたしが端縫い衣装を知ったきっ

もっとみる
ディオール夢のクチュリエ展 イギリスと東京ではどうちがう? ロンドンV&Aレポート

ディオール夢のクチュリエ展 イギリスと東京ではどうちがう? ロンドンV&Aレポート

この記事では2019年にロンドンで開催されたクリスチャン・ディオール「DESIGNER OF DREAMS展」の展覧会レビューと、会場となったV&A(ヴィクトリア&アルバート)博物館の旅のレポートをお届けします。

展示される国ごとに異なるキュレーションが話題になっている「DESIGNER OF DREAMS展」(「クリスチャン・ディオール 夢のクチュリエ展」)

パリ、ロンドン、上海、成都、ニュ

もっとみる
4年分の日記を見かえしてみたら文字どおり「自分」が大きくなっていた。

4年分の日記を見かえしてみたら文字どおり「自分」が大きくなっていた。

4年前からつけている日記を読み返してみたら、字が大きくなっていた。

ところで、だれかの日記を読むのは楽しいものだ。文芸誌で作家の日記特集が人気だというのもうなずける。noteでみんなの日記を読みにいくのも好きだし、自分の日記を見かえすのもまあまあおもしろい。

わたしはこんなアホなことを考えてたのかとクスッとなったり、あきれるほど壮大な夢を語っていたり、すっかり忘れていることもあったりしてけっこ

もっとみる
絵画とファッション 「スコットランド国立美術館展」で描かれた衣装について。

絵画とファッション 「スコットランド国立美術館展」で描かれた衣装について。

土曜日の夜にスコットランドへ行ってきました!

といっても実際に行って来たわけではなく、「スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち」展を観に行ったのです。(2022年9月25日まで神戸市立博物館にて開催中)

そこで今回は、展示された絵画たちを「衣装」という切り口で鑑賞してみました!

北国を彩る巨匠たちサタデーナイト・フォトアワーですって!?会場となった神戸市立博物館では、「

もっとみる
なぜ婚礼衣裳は白なのか? 「ジャパニーズ・ウェディング展」をみて考えた

なぜ婚礼衣裳は白なのか? 「ジャパニーズ・ウェディング展」をみて考えた

奈良県立美術館で6月19日まで開催中の「ジャパニーズ・ウェディング 日本の婚礼衣裳展」へ行ってきた。

この「ジャパニーズ・ウェディング展」は、江戸時代から昭和初期にかけての婚礼文化を、婚礼衣裳を中心に紹介する特別展である。

わたしはウェディングドレスの制作とリメイクをなりわいとしているが、ウェディングドレスのことは知っていても、日本の婚礼衣裳のことについては案外知らないことが多い。最近英会話を

もっとみる
「バンドTシャツをバンドで買う人初めて見ました」と店員さんに言われまして

「バンドTシャツをバンドで買う人初めて見ました」と店員さんに言われまして

夫のTシャツがあまりにもヨレヨレで不憫なので、新しいのを買ってあげた。

イギリスの音楽が好きな夫は、持っているTシャツのほとんどがミュージシャンのいわゆる「バンドTシャツ」だ。そしてそれらのTシャツは、彼のイギリス音楽への深い愛のなせる技なのか、元来ものもちがいいのか、みんなおしなべてヨレヨレである。

なかでもこの「ジョイ・ディビジョン」のは特にヨレヨレで、元は黒だった(はず)なのに、いまはも

もっとみる
東京都庭園美術館「奇想のモード」展の鑑賞記を小説風に

東京都庭園美術館「奇想のモード」展の鑑賞記を小説風に

不思議な館のヴンダーカンマーその屋敷は森の中にあった。美しい早春の森だ。

小雨のなか、桜の花びらがはらはらと降る庭を、僕は招待状を手に森を進む。黒い招待状には青いコルセットと玉虫色の甲冑襟の写真があしらわれ、鮮やかなショッキングピンクの文字で「MODE SURREAL」と印字してあった。超越のモード。屋敷のヴンダーカンマー(驚異の部屋)への招待状だ。

森を抜けると、やがて目当ての館が現れた。お

もっとみる
ドレスは学問に貢献できるか?

ドレスは学問に貢献できるか?

わたしの活動が、なんと論文に掲載されました。

ドレスの仕事をしながら通信制大学に通うわたしですが、「論述」は大の苦手。このnote上でも、たびたびそのできなさっぷりを披露してきました。そんなわたしが、なんと論文デビューです。といっても、自分で書いたのではありません。

なんと、わたしのドレス活動が、学生さんの卒業論文に掲載されたのです。論文タイトルは「ウェディングドレスから見るファッションの消費

もっとみる
チョコレートは着るものです。

チョコレートは着るものです。

数年前のある日「わたし、ウィリー・ウォンカになりたいんです」という女性から、衣装づくりの依頼を受けました。(わたしの本業は、オーダーで衣装やウェディングドレスをつくるドレス作家です)

ウィリー・ウォンカとは、ジョニーデップ演じる「チャーリーとチョコレート工場」の工場長。これがまあエキセントリックで不気味なチョコレート工場で、ダークファンタジー好きにはたまりません。

この映画のイメージで、チョコ

もっとみる
「声をあげるドレス」 女性たちは何を着て闘ってきたのか。 #国際女性デーによせて

「声をあげるドレス」 女性たちは何を着て闘ってきたのか。 #国際女性デーによせて

政治や選挙に関する記事はあまり人気がないかもしれませんが、服を仕事にするわたしが書くなら、ファッションにからめて書いてみます。タイトルは「声をあげるドレス」です。

「DRESS TO PROTEST」
書きたいと思ったきっかけは、HARPER'S BAZAAR(ハーパース・バザー)UK版・2021年3月号の、「DRESS TO PROTEST」という特集記事です。「抗議するドレス」として、政治的

もっとみる
失われた「かわいい」を求めて、 原田治展

失われた「かわいい」を求めて、 原田治展

わたしは一時期、「かわいい」についてめちゃくちゃ考えていた。

「かわいい」会社でファッション商品の企画デザインに携わる会社員として、常に「かわいい」を考え、「かわいい」を使い、「かわいい」を作ってもらい、「かわいい」を売ってきた。それは誰からもわかる「かわいい」なのか。どうすれば「かわいい」が伝わるか。

かわいいについてはイヤというほど考えてきたつもりだったけど、まだまだちっとも足りていなかっ

もっとみる
もしも旧グッゲンハイム邸が、あの「グッゲンハイム」じゃなかったら。

もしも旧グッゲンハイム邸が、あの「グッゲンハイム」じゃなかったら。

花嫁様の召使い、ウェディングドレスの仕立て屋タケチヒロミです。

昨年夏、神戸のウェディング関係者に衝撃が走りました。

「旧グッゲンハイム邸って、別人宅だったってよ!」

私たちが「旧グッゲンハイム邸」だと言っていた洋館は実は別人宅で、本当の旧グッゲンハイム邸は、20メートル北側にある「旧竹内邸」と呼ばれていた建物だったそうなのです!衝撃です。

神戸新聞に掲載されたそのニュースは、業界関係者の

もっとみる
しあわせな仕事おさめ

しあわせな仕事おさめ

2020年の仕事納めは、海辺の洋館での召使い業務でした。お屋敷付きの衣装係として、花嫁様のお支度をお手伝いするのです。

素晴らしいお天気に恵まれた、とてもしあわせな1日でした。

今年はいろいろあったけど、こうして花嫁さまのお手伝いで今年の仕事を締めくくることができて、こんなに幸せなことはないです。

ウェディングの仕事が自分にとってどんなに大切だったのか、改めて知ることのできた一年でした。

もっとみる
ファッション × 英語学習 「LANVIN」の創設者 ジャンヌ・ランバン

ファッション × 英語学習 「LANVIN」の創設者 ジャンヌ・ランバン

ドレスの仕立て屋タケチヒロミです。noteでフェイスブックの投稿をシェアできるようになったので、早速。バースファッションミュージアムの、クリスマスにぴったりなモミの木みたいなジャンヌ・ランバンのドレスの投稿をシェアします。

ゴージャスなグリーンのシルクタフタドレスが私たちをお祭り気分にさせてくれます。こちらは1919年、ジャンヌ・ランバンによる「ローブ・ド・スタイル※」のドレスです。シンプルなボ

もっとみる