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書き手のつぶやき。

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フリーランスのライター・ディレクターとしての話、教員としての話、子育ての話など、雑多なものいっぱい。
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#エッセイ

私は、冬の北陸を愛してる。#未来に残したい風景

私は、冬の北陸を愛してる。#未来に残したい風景

あけましておめでとうございます。

今年は2年ぶりに、北陸で正月を迎えました。

いま住んでいるのは宮崎県。
雪とは無縁の、カーンと晴れたひなたの国。

北陸で生まれながら、宮崎で育った5歳の娘は、雪をほとんど見たことがない。

「えるさのくに、いくの?」

娘にとって、雪国は「アナと雪の女王」に出てくるようなファンタジーランドらしい。

「そうだね。雪と氷の国だね」

私は、生まれも育ちも富山県

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ずっと、のび太になりたかった。眠るのがヘタな、あの頃の私へ。#眠れない夜に

ずっと、のび太になりたかった。眠るのがヘタな、あの頃の私へ。#眠れない夜に

私は、とても寝付きが悪い。

「眠るのがヘタ」とでも言うべきか。

最初の自覚は、3歳までさかのぼる。

***

3歳の頃、私は保育園に通っていた。
2~3歳は、年少少クラスにあたる。「あかぐみ」さんと呼ばれていて、平屋建ての保育園の中で一番端のクラスだった。

そしてどこの保育園でもあるように、毎日「おひるねのじかん」があった。

「さあ、おひるねしますよ~」

お昼寝の時間になると、広いスペ

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トイストーリー的な4歳娘の「To infinity...and beyond!(無限の彼方へ!)」

トイストーリー的な4歳娘の「To infinity...and beyond!(無限の彼方へ!)」

「おかあさん、ろけっとにのろう」

4歳の娘が生み出す世界は、いつも唐突だ。

「ロケット?」
「こっち、こっち」

通称「ふとんのへや」と呼ばれている、その名そのまま布団が敷いてある部屋に連れて行かれる。

「はーい、ろけっとはっしゃしますー。はいってくださーい」

娘が羽毛布団に潜り込み、手の先だけぴこぴこ出して私を誘う。枕元には、ノベルティでもらったキーホルダーと、洗濯ばさみと、クレーンで取

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「お前は小説家になれない」

「お前は小説家になれない」

今、宮本輝のエッセイ「二十歳の火影」を読んでいる。

こどもたちが休校のさなか、私は「よし、本を10冊読もう」と決め、とりあえず近くの本屋で目についた本10冊を大人買いしてきた。そのうちの一冊が「二十歳の火影」である。

なぜこれを選んだかというと、ぱらぱらとめくったときに「私と富山」という章が目に入ったからだ。

幼少期、宮本輝氏が富山に住んでいたことは何となく知っていたが、彼の目から見て富山は

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じぶんですすむ、という実感。

じぶんですすむ、という実感。

8歳の息子に、新しい自転車を購入した。

幼稚園から使っていた青い自転車は、もうサドルは禿げてハンドルは錆びて、ずいぶん使い倒した風貌をしている。
けれど我が家では、それはそのまま4歳の娘が使う運命にある。

自転車屋で会計をしながら、そばにいる娘に

「今度は自転車の練習してみようねぇ」

と言うと、娘は満面の笑みで

「うん! あのね、ぴんくの、ぷりんせすのじてんしゃがいい!」

と答えた。

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【エッセイ】あの日、私と京都は。その2/午前3時、坂の上のパン屋で。

【エッセイ】あの日、私と京都は。その2/午前3時、坂の上のパン屋で。

学生時代、私の目覚ましは2種類のセッティングがあった。

ひとつは8時。月水金。
1コマ目の授業に間に合うように。それなりに真面目である。

もうひとつは、3時。
午後ではない。朝の3時だ。

ピンパラピンパラピンパラピ

「・・・・・・」

折りたたみケータイをパカッと開けて、時刻を確認する。
火曜、午前3時。辺りはまだ暗い。ていうか布団に入ったときと同じ、完全な夜だ。
学生的には、そろそろ酔い

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冬の嵐、娘との朝。

冬の嵐、娘との朝。

今日は風の強い日だった。

毎朝自転車で娘を送るのだが、今日は安全に送り届ける自信がなかったので徒歩で行くことにした。娘は「じてんしゃがいいー」と言ったけれど、外に出てびゅうううと風に吹かれたら、黙って手を握って着いてきた。

私は雪国育ちなのもあり、吹雪で登下校した経験も幾度となくあるので、「雨も雪もなく単に風が強いだけ」なら割と平気である。けれど南国育ちの娘は終始「こわい」と言い、園につくまで

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ある日の息子の日記に、思わずキュンとした話。

ある日の息子の日記に、思わずキュンとした話。

小学生の息子は、週末に日記の宿題が出る。

私はあんまり日記を見ないのだけれど、今回はたまたま、書いているときにのぞき込んだ。

「何書いてるの?」

「こうえん、いったこと」

見てみると「まず○○をしました。次に○○をしました。それから○○がありました。たのしかったです」という風に、事実の羅列をしていた。
なんというか、タイムスケジュール並だ。何時何分何があり、何時何分何がありました、その繰り

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愛は、循環する。【#たすけてくれてありがとう】の裏側

愛は、循環する。【#たすけてくれてありがとう】の裏側

先日、「#たすけてくれてありがとう」のnote企画にエッセイを投稿した。
↓↓↓

↑↑↑
これは息子が0歳のときなので、今や6年以上前の話になる。
「たすけてくれてありがとう」という言葉を聞いたとき、真っ先に浮かんだエピソードだ。
このときのご婦人は元気でいらっしゃるだろうか。顔もおぼろげだし傘も返せていないけれど、お元気だといいなぁ。

この話に限らず、子供を産んでからというもの、見ず知らずの

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0歳との帰り道、突然の雨。傘もない私の前に現れたのは・・・【子育てエッセイ】

0歳との帰り道、突然の雨。傘もない私の前に現れたのは・・・【子育てエッセイ】

その日、私は鬱々としていた。

0歳の息子が生まれて、しばらく経った頃。

出産直前までバリバリ働いていた仕事はパタッとなくなり、引っ越したばかりのアパートで24時間、子供と向き合う日々が続いていた。

そりゃあ、息子はかわいい。笑うようになってきたし、寝返り続けて部屋の端まで移動するし、やわらかな舌でなんでもアムアム食べるのもかわいい。

でも、なんだろう。
このモヤモヤは。

社会は日々動いて

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【エッセイ】あの日、私と京都は。その1/晴れた日の午後、『活きた時間』を語る教授。

【エッセイ】あの日、私と京都は。その1/晴れた日の午後、『活きた時間』を語る教授。

最近、1日があっという間だ。

朝ご飯と弁当つくって、息子を送り出して娘送って、仕事して仕事してそれから仕事して、娘迎えに行って息子の宿題見て、夕飯つくってお風呂入って寝かしつけ。起きれたら早朝か夜中に仕事を少々。

気づけば「えっ、もう夕飯?」だし、何なら毎週「あれ?もうサザエさん?」を繰り返している。
そのうち「ん、もう年末?」になるのは目に見えている。

別に、この速度感自体は嫌じゃないのだ

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もうすぐ父の日。5歳息子の意外な願い。「あのね。ぼくは、ぱぱと・・・」

もうすぐ父の日。5歳息子の意外な願い。「あのね。ぼくは、ぱぱと・・・」

もうすぐ父の日がやってきます。

父の日といえば、数年前、息子が5歳頃だったときのことを思い出します。

「父の日、何しようか?」

「ちちのひ? ちちのひって、なんにち?」

「次の日曜日だね」

「あ! そのひは、ようちえんの、さんかんびだよ」



そうか。幼稚園の参観日か。

確か、前の年もそうだった。
日曜参観なのもあり、お父さんやお母さん、場合によってはおじいちゃん・おばあちゃんまで

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日々の宝物は忘れてもいい。きっと、ずっと、なくならないから。

日々の宝物は忘れてもいい。きっと、ずっと、なくならないから。

3歳の娘は、歩くのが好きだ。

「今日は自転車だよ。乗らない?」

幼稚園の迎えは、雨の日以外は自転車で行く。
こちらとしては乗ってくれた方が早く帰れるのにな、もうすぐお兄ちゃんが帰ってくるから鍵開けに帰らないといけないのにな、などと思ったりするのだが、彼女は決まって、ぷるりと首を振る。

「のあない(のらない)。あうくの(あるくの)」

幼稚園のリュックや体操服が入った手提げなんかも「かごに入れ

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私よ。葛藤せよ、人と。ーー半エッセイ・半小説:note企画「社会人1年目の私へ」

私よ。葛藤せよ、人と。ーー半エッセイ・半小説:note企画「社会人1年目の私へ」

「あんたが、つくるんか?」

10年前。
この世に生まれ落ちて、23年目の秋。

「なら、ええのつくってほしいねん」

私は人生で初めて、「人」と葛藤していた。

***

「葛藤? そんなの、中高生ぐらいから山ほど経験してるよ」って人は、きっとこの世にゴロゴロいるんだろう。
でも私は、あんまり葛藤してこなかった。あんまり、いやかなり、いや結構、いや、実は全然。

なぜか。
それには、私の性格が大

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