マガジンのカバー画像

お気に入り

110
運営しているクリエイター

#エッセイ

お母さん (日記)

お母さん (日記)

遠い昔、母が語った言葉が、ふと蘇る。
当時、私は小学生だった。
その話しを聞いた時、何だか切なくて胸が苦しくなったのを覚えている。

当時、母はどこかで聞いてきた話しを語り始めた。
話しの内容は、こうだ。
ある所に、母親を亡くした少女がいた。
就寝時には、毎回母親の着物を胸に抱きながら、眠りに就いた、と。

私は話しを聞きながら想像した。
少女は、まだまだ母親が恋しい年頃だろう。
母親の残り香は、

もっとみる
治ると信じているけど治らなくても絶望しない

治ると信じているけど治らなくても絶望しない

 左耳の聴力が著しく落ちた。
 特に低音が聞こえない。テレビで「上田と女が吠える夜」を観ていても女性ゲスト達の声は聞き取れるが司会の上田の発言が判然としない。両耳を塞ぎ右耳だけ離してみる。音が聞こえる。左耳で同じことをしてみる。手は離しているのに聞こえは手で塞いでいる時と変わらない。仕方なくテレビのボリュームを上げた。低音が聞こえてない左耳だけで聞くバラエティ番組は電波が悪いラジオ放送のようで、「

もっとみる
ドーナッツの真ん中

ドーナッツの真ん中

ドーナッツが好き。
たまに何だか食べたくなる。
それも着飾った甘いカラフルなものではなく、昔ながらのおばあちゃんが油で揚げたような、あの穴のあいたシンプルなドーナッツ。
お砂糖がパラパラと振りかけられた優しい甘さのドーナッツ。

ドーナッツの真ん中に見える景色は遠い日の思い出。

右回りでドーナッツを食べてみた。
私はおばあちゃんと硬い椅子の鈍行の汽車に乗って、親戚の家へ向かっていた。
汽車が駅に

もっとみる
「大河の一滴」 五木寛之

「大河の一滴」 五木寛之

「人はみな大河の一滴」ふたたびそこからはじめるしかないと思うのだ。」

「大河の一滴」 五木寛之

五木寛之さんは、この本の中で

「人はみな大河の一滴」
であると語っています。

人は生まれながらにして、「生老病死」という重い枷をはめられて生まれてきます。

故に

五木さんが最近、本気で思うようになったと記している空想の物語があるといいます。

それが、人間は「大河の一滴」であるというストーリ

もっとみる
決意 (詩)

決意 (詩)

ありきたりな言葉だけど
潮どき、かもね
この恋、そろそろ終わりにするわ
一時の幸せより、未来の幸せを望んでるの
だから、私を探さないでね

私より大事な人
大事なものがあること
分かってるわ
それでも構わない
そう思ってた

だけどこれ以上あがいても、もう前には進めない
あなたを独り占めにできない
ここから去っていくしかないみたい

大丈夫よ
寂しさには慣れてるから
私には1人が似合う

だから

もっとみる
1ミリも太ることがダメな理由

1ミリも太ることがダメな理由

まさか、この私が人前でダンスを踊ることになるとは、想像することすらできなかった。

5年前、ベリーダンスのお試し体験講座に行こうか
どうしようか、ちょっと悩んだ。
元々、スポーツは全て苦手。ダンスと名のつくものも全て経験ゼロ。

(こんな私がダンスなんて踊れるんだろうか?
でも、やってみないと分からない。自分に合わなかったら、もうやらなければいいんだし。
あっ、そうだ。ベリーダンスは皆、女性だけ?

もっとみる
noteの決算情報から数字を読み解いてみた話→会員数663万人★MAU4,573万人★ポイント制導入★11月期も赤字予測

noteの決算情報から数字を読み解いてみた話→会員数663万人★MAU4,573万人★ポイント制導入★11月期も赤字予測

先日noteから2023年11月期第2四半期決算が発表されました。noteの最新情報が知りたい方は是非読んで見てください。
noteはずっと赤字ですが今回特に目玉となる施策もなく、相変わらずのんびりゆっくり黒字化を目指している感じです。

⏬この記事はこんな悩みを持つ方を対象にしています。
✔ noteでビジネスを成功させたい方
✔ noteが大好きで生計を立てたい方
✔ noteことがとにかく知

もっとみる
夜の図書館 (掌編小説)

夜の図書館 (掌編小説)

#オールカテゴリ部門

もし、本に意識というものがあったとしたら?
午後7時、出入り口の施錠を終えた職員達が、
次々と出て行く。
その後、責任者の職員が館内の最終チェックを終えて出て行くと、図書館は無人状態となる。
時折、幹線道路を通り過ぎる車の音が聞こえるくらいで、館内はしんとした静けさに満ちている。

不意にどこからか、ぼそぼそと話し声が聞こえてきた。
「連日、猛暑なのに毎日ぎゅうぎゅう詰めに

もっとみる
雪中に果つ 4 (小説)

雪中に果つ 4 (小説)

#オールカテゴリ部門

(やっと見つけたわ)

真紀は、ジリジリと裕二に近づいて行った。

(まるで、獲物に近寄る猛獣みたいだわ)

自嘲気味に、そう思った。
真紀の姿を見た裕二は雪の上にうつ伏せになったまま、あからさまに驚きを露わにした。
まるで、幽霊でも見たかのような表情だ。事実、幽霊だと思ったのかもしれない。真紀はとっくに死んだ、と思っていたのだろうから。

「真紀、生きてたのか?」
「残念

もっとみる
雪中に果つ 3(小説)

雪中に果つ 3(小説)

#オールカテゴリ部門

酷く寒気がした。
体の芯が冷え切っているようだ。
そして、何だかムカムカする。気持ち悪い。
理由は分からない。
すると、今度は頭部に鈍い痛みを感じた。
この具合の悪さは何が原因なのか?
寒さに耐えきれず目蓋を開けようとするが、意思に反してなかなか開けない。
でも体が、本能が、覚醒を促している。
そして重い目蓋を、やっとの思いで開けた。
視界は、真っ白だった。
顔に、何やら冷

もっとみる
雪中に果つ 2(小説)

雪中に果つ 2(小説)

#オールカテゴリ部門

昨夜から降り続いた雪のせいで、道路の除雪が追いついていないようだ。
裕二は慎重に運転しているが、所々道路がでこぼこになっているため、何度かハンドルを取られそうになった。
その度に、真紀はハッとする。雪道で車が制御不能となり、ガードレールや木に激突して命を失うのは
避けたい。そんな死に方は嫌だ。理想の死とかけ離れている。

やがて、前方に通行止めのフェンスが見えてきた。
ここ

もっとみる