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居眠り猫と主治医 ⒈不養生猫 連載恋愛小説 全33話予定 目次 リンク有

あらすじ 愛鳥のかかりつけ医を求め、動物病院ジプシーぎみの守屋文乃。動物の扱いが異様に上手い、すわゴッドハンドかという獣医師、夏目祐にたどりつく。 家庭環境の影響から自己肯定感が低めの彼女は、クリニック患者たち(飼い主)との交流会が、安らぎの場になっていく。 体内時計が乱れがちで、とくに食事がおざなりになっている文乃は、オカン並みの料理の腕前を持つ祐に胃袋をつかまれる。 彼のそばにいると、なぜか安心してぐっすりと眠れるのだが… とある理由で、親密になればなるほど文乃は追

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カメリア~紅蓮~

■前回までのお話はこちら■本編「椿、着替え終わったか」  ノックもせずに扉が開けられ、その向こうには着物姿で腕組みをした父が立っていた。椿はその無作法を咎め立てする元気もなく、ベッドに腰かけたまま、「まだだけど」と仏頂面で答えた。ベッドの上には過剰なまでにフリルのついたどぎついピンクのドレスワンピースが広げられていた。  父はため息を吐くと、「先方がお待ちだ。急ぎなさい」と言ってドアを閉めようとした。 「今のお父さんを見たら、お母さんは何て言うかな」  矢島家から贈って寄越し

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居眠り猫と主治医 ⒗矛盾猫 連載恋愛小説

なにも話さず電車に揺られていると、高校生だった頃のまっさらな感覚がよみがえってきて、疲れた体と心が少しだけ癒えた気になる。 相手の意図がどうであれ、どうしようもなく惹かれているのは、シンプルな事実だ。 車窓の景色をながめている横顔を、そっと盗み見る。 「電車通学でした?」 物思いにふけっていたのか、気の抜けた返事が返ってくる。 初の共通点に、じんわり喜びをかみしめる。 降りる駅が近づくにつれ、無性に名残惜しくなってきて、 「もうすこし一緒にいたいです」 と文乃はつぶやいた

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居眠り猫と主治医 ⒔ 桜の甘酒 連載恋愛小説

お酒で飛んだ記憶が、ある日まるっと戻ってきて、はじめて病院以外で祐と言葉を交わしたのは、春だったと気づく。 「桜を見て泣いてる女、はじめて見た」 泣いてないですよと唇を動かすと、目じりから数滴こぼれ落ちた。 青空に映える薄紅の花びらが風に揺らめく。 院長厳選の穴場スポットは、地元の花見客がちらほらいるだけで、夜のように静まり返っている。 このまま異世界に迷いこみそうな、不思議な空間。 *** 「その飲みかた、やめたほうがいい」 文乃を現実に引きずり戻す、重い声がした。

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居眠り猫と主治医 ⒉初診 連載恋愛小説

することもないので両手で頬杖をつき、彼の事務作業をぼうっと観察する。 しばらくすると、眉間にシワを寄せてこちらへやってきた。 「気にさわったんなら、やめます。もう見ない」 返事をせず、祐は無造作に文乃のあごにふれ正面を向かせた。そのまま顔を近づけたかと思うと、文乃の目の下あたりに親指を置く。 「貧血だな」 下まぶたの内側を確認したらしい。 なんの前ぶれもなかったので、心拍数がおかしい。 心臓の音聴かせてくださいねー、とか動物相手にはあんなに穏やかなのに。なんなんだ、この落

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居眠り猫と主治医 ㉕狙われた獣医 連載恋愛小説

すべてを遮断する気でいたけれど、里佳子とは何度か会っていた。 彼女も夏目祐のゴッドハンドにひれ伏したクチで、あっという間に意気投合した仲。そういう人との絆は、切っても切れない。 「ルリルリ元気ですか?」 彼女のインコはマメルリハという種類で、鮮やかなブルーの美女だ。 「ちょっとそれが聞いてよー」 英国王室御用達の超高級シードを買ってみたところ、愛鳥はそれ以外受け付けなくなったという。 「もー、破産。オーガニックって単語、聞きたくもない」 「うわ。真のプリンセス」 「ほんと

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短編 | 瑠璃色の1%

 その日の勢いで、彼にすべてを曝そうとした。しかし、また、直前になっておじけづいてしまった。 「ごめんなさい。やっぱり無理です」 「そうか。それじゃ仕方がないね」  そう言うと、彼はベッドからおり、服を着始めた。 「ごめんなさい、本当に…」  彼は私の目を見て微笑んだ。  体を重ねる寸前になって、勇気が持てずにそのまま何もなく…というのは今回で3回目だった。  彼のことを信頼していないわけではない。彼のことが嫌いはわけではない。しかし、処女を捨てるという決断がど

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青春はらすめんと シロクマ文芸部

子どもの日だからって、浮かれる歳でもない。 高校生だからって、みんながみんな青春しているわけでもない。 まして、今年は受験生。入試の日まで、1年切っている。 夢の影すら見あたらないまま、リタイヤの許されぬ登山はすでにはじまっていた。なんのためにがんばっているのか、わからなさすぎて笑える。 息苦しい毎日の清涼剤は、塾だ。 もちろん口やかましく暑苦しい講師などではなく、他校の女子生徒。 いちど僕のスマホを拾ってくれたことがあり、なんとなく言葉を交わすようになった。 送迎バス

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居眠り猫と主治医 ⒋オトナのお子様ランチ 連載恋愛小説

いくら倒れそうなほど眠かったからといってアレは非常識極まりなかったと、あとから冷や汗ものだった。 「あの、ずうずうしくて申し訳ありませんでしたっ!」 勢いでトートバッグの中身が飛び出し、小学生かよとツッコまれる。 セレクションの理由は、果物だったらスタッフでシェアしやすいのではと思ったから。 「食のアンテナが干からびてるので、スイーツとか選べなくて」 甘党かどうか今さら祐に確かめ、好きでも嫌いでもないと返答をもらう。 *** 「わあ…これ、ウチのサラそっくり」 とあるテ

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『もしかして』 #新生活20字小説

息子のクラス名簿に、元彼と同じ苗字の子。 [完] #新生活20字小説

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居眠り猫と主治医 ⒎オカンの腕前 連載恋愛小説 

夏目祐の部屋は、なんというか殺風景だった。 分厚い専門書のようなものが目に入る以外、とくに特徴がない。 多忙で、寝に帰ってきているだけなのかもしれない。 「さっさと脱いで」 「あ…はい。お先にいただきます」 さすがに緊張するなと思いながら、人んちのシャワーを借りる。 湯舟につかったわけではなかったが、ほっと一息つけた。 入れ替わりに浴室に入った彼は、いつも以上に仏頂面で完全に嫌われたなと文乃は思った。 「なんでドライヤー使わなかった?」 「時間かかるので」 先生を待たせて

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居眠り猫と主治医 ㉘夏目先生のお料理教室 連載恋愛小説

次の日、スーパーに寄って手巻き寿司の材料を買いこんだ。 「あ。初デートだ」 「どこが」 昨日の彼はどこへやら、すっかりクールな夏目祐に戻ってしまっている。 おぼつかない手つきの文乃に業を煮やし、祐が包丁を取り上げた。 「刺身があとかたなくなる」 刺身包丁でなくても二回に分けて引くように切るといいと、職人技を見せてくれる。 文乃は卵焼きをねだって、その魔法のような箸さばきに目を丸くし、料亭並みの味だと絶賛した。 *** 満を持して、得意料理を披露する。 こころを救ってくれ

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居眠り猫と主治医 ⒖潮干狩り猫 連載恋愛小説

潮干狩りでは、極力接触しないようにした。 これ以上近づいたら、どツボにハマるのは目にみえているし、彼に迷惑をかけるのだけは避けたかった。 「守屋さんて、夏目先生のこと狙ってる?」 気配を消して真横に陣取っていた小静《こしずか》美佐に、文乃は肝を冷やす。サングラス越しでもよくわかる、気合いの入ったマスカラ。 なにを考えているのかわかりづらくて苦手だと、否定した。 「あー、まあね。でも、そこがよくない?」 はまぐりやアサリを前日にまいてあるから、広く浅く表面をふわっとさぐるだ

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居眠り猫と主治医 ⒓ セカンド猫 連載恋愛小説

キッチンは素通りしたので、ごはんはお預けかと、文乃はちょっとがっかりした。 半裸のままで始まってしまい、全部脱ぐより刺激が強くてたじろぐ。 それでも、文乃の体調を気にするのがデフォルトになっている祐は、ひたすら慎重だった、避妊も含めて。 逆立ちしても一番になれないと知っていたから、今まで言ったこともないセリフが口をついて出る。 「次は…先生の好きなようにして?」 祐の目の色が変わり、それだけで充分だと思った。 *** 「自制心ぶち壊してどうする。自殺行為なんだけど」 「

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【毎週ショートショートnote裏お題】真夜中万華鏡

 真夜中、妖怪小豆あらいは一人の少女と出会った。  少女はうずくまって泣きそうな顔をしていた。  みると足を挫いている。  小豆あらいは、少女を背負い、家に送ってやった。  少女は何度も御礼をいい、庄屋の家の門をくぐった。  それ以来、小豆あらいは胸が苦しい。  妖怪と人間、しかも庄屋の娘、叶わぬ恋であることは重々分かっていた。  それでも止められない。  深夜、人目を忍び、逢瀬を重ねた。  それは真夜中万華鏡のように一刻一刻が夢のように煌めいていた。 「会うのを最後

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居眠り猫と主治医 ⒚ 猫、海へ行く 連載恋愛小説

腰ほっそ、と里佳子が目を剥く。 足のつかない海でなど泳ぐ気はさらさらなかったが、水がかかってもいい格好をとお達しがあったので、水着にした。 羽織っていたシャツワンピのボタンを、文乃はすばやく閉める。 「そんなこと、言われたことないですけど」 「いやいや、華奢で色白って眼福すぎ。あ、ごめん。私、アイドルオタクもやってて」 ちいさくてかわいいもの好きが高じて、とある女性グループのファンになったそうだ。大人の階段をのぼっている頃合いが、とくに推しだという。 「あー、成長してませ

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居眠り猫と主治医 ⒕投げやり猫 連載恋愛小説

「で、なにがいいですか。お礼」 話の内容はどうでもよく、この人の空気感が居心地良くてずっとしゃべっていたくなる。 「ふたりで会うとか?」 「えーサラ抜きはちょっと…。あ、うそです。いいですね、デート」 何をおごろうかなあと思案しているうちに、まぶたが待ったなしで重くなる。いい具合の肩が手近にあったから、文乃は安心して目を閉じた。 *** 「ああー!患者さんに手え出すの御法度ですよ、夏目センセ。文乃ちゃん、激カワだけどもー」 里佳子の大声で目が覚めた。 「ハイ、ごめんな

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ゆうぐれあさひ

 夕方になると、夕日を見に行きます。  何を当たり前な、となるかもしれませんが、わたしの夕日は晴れ空でも雨空でも見ることができるのです。もやもやしたときには、夕日を見るに限ります。  もやもやしているのは、職場のゲーテさんのせいです。  わたしは都内の駅前にある、こじんまりとした書店で働いています。ショッピングビルがにょきにょきと竹のように林立する中にあって、竹になり損なった筍のように小さな店です。そこには正社員が二人いて、一人が「ゲーテさん」とわたしが勝手に心の中で呼んでい

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居眠り猫と主治医 ⒊河川敷フリマ 連載恋愛小説

河川敷でのフリマイベントにて団体出店が決まり、文乃はためこんでいた小鳥雑貨を放出することにした。 収納場所に困っていたので、渡りに船だった。 バラエティー豊かな商品の中で異彩を放っていたのは、小静美佐の手づくりアクセサリーと夏目祐の調理グッズ。 どちらも玄人ウケしそうな匂いを漂わせている。 *** 「どれも大ぶりなのに、センスある」 小鳥会のドン・水野里佳子にほめられ、美佐はちょっと意外そうに眉を上げた。犬会と小鳥会は折り合いがよくないのだ。 「水野さんも気に入ったのあ

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居眠り猫と主治医 ㉗病み医者 連載恋愛小説

かみ合わない会話に疲れたのか、祐の言葉がそこで途切れた。 どことなく彼らしくない気がして様子をうかがうと、顔色が悪いし覇気がない。 「あの…体調大丈夫なんですか。クリニック大変だって里佳子さんが」 「大丈夫なわけないし」 いきなり失踪されて寝れるか、と吐き捨てる。 あれほど自己管理が行き届いている人なのだから、ここまで憔悴するのはどう考えてもおかしい。 「…おかんボックスは?」 「作ってない。ひとりじゃ食べる気しない。なにも手につかない」 まるでメンタルをやられた守屋文乃

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