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いなくなったきみへ | #創作大賞感想



 rinさんの「いなくなったきみへ」は、今年の創作大賞に応募されている作品を読んでいる中で出会いました。

 「いなくなったきみへ」は、恋愛小説です。

 恋愛小説というものは、誰にも書ける小説でありながら、誰にも書けない小説でもあります。
 自らの経験を虚実織り交ぜながら書き連ねれば、一応書くことはできます。しかし、物語として恋愛小説を1から書いていくことは難しいことです。

 どうしても、最後に結ばれたとか別れたとか、新たな人を見つけたという平板なオチになりがち。

 「いなくなったきみへ」には、性的な描写はほとんどなく、清潔感があります。
 雰囲気的にいうと、「いなくなったきみへ」は、黒井千次「春の道標」と夏目漱石「こころ」との間にあるような。

 まだこれから読む方にも、古河律子を探してもらいたいと思いました。
 第10話と最終話が印象に残りました。とくに1番最後の場面が、切なさの余韻を残しつつ美しい。
 私の好きな物語の終わり。より多くの方に読まれることを願っています。
 

記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします