藍晶

小説、エッセイ、書評、映画感想文、絵、デザイン

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    日記 葛藤や気づき、パラダイムシフトが起こった時のこと、決意表明など忘れたくない今を書き留めます。

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    掌編小説、詩、エッセイなど

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    小説や映画の整理メモや感想、自分なりの考察など

最近の記事

メッセージ性とエンタメ性は車の両輪

「まず一番に書きたいことや伝えたいこと、言いたいことがあって、それを表現するためにどんな筋書きでどんな登場人物が必要か考えていく」 と今日友達に話したら友達も私もそうだと言っていて、この前話した編集者もそういう話の作り方だとキャラクターを持て余すことがないのでいい、と言っていたよと教えてくれた。 それから帰ってふと思った、自分の言いたいこと、所謂メッセージ性のためだけに作られた作品なんか誰にも読んでもらえないよなと。 どんな高尚なメッセージや意義ある主張だったとしても読者に

    • 春、春、春! 2023/3/12 Sunday

      ここ最近突然気温が上がった。晴れの日は家の中よりも外の方が暖かいくらいだ。信州にもようやく春が来た。 今日は晴れていたから散歩に出かけた。 紫外線は白内障の原因になり目に良くないが、太陽光に含まれるヴァイオレットライトという光線は近視を抑制する遺伝子に刺激を与えるため目に良いのだとか。だから1日2時間ほど屋外で運動することを眼科医が本で勧めていた。私はもう少しで強度近視になってしまうほど近視が進んでおり、成長期を終えてからも悪化していた。その上飛蚊症も目立つようになり、昨年眼

      • 治ると信じているけど治らなくても絶望しない

         左耳の聴力が著しく落ちた。  特に低音が聞こえない。テレビで「上田と女が吠える夜」を観ていても女性ゲスト達の声は聞き取れるが司会の上田の発言が判然としない。両耳を塞ぎ右耳だけ離してみる。音が聞こえる。左耳で同じことをしてみる。手は離しているのに聞こえは手で塞いでいる時と変わらない。仕方なくテレビのボリュームを上げた。低音が聞こえてない左耳だけで聞くバラエティ番組は電波が悪いラジオ放送のようで、「大東亜戦争終結ノ詔書」の玉音放送を彷彿とさせた。  寝たら治るかなと期待していた

        • 2月22日 歯科医院にて

           いつもメインテナンスしてくれている若い歯科衛生士さん、歯と歯茎の状態や前回相談したことなどよく覚えていてくれてクリーニングにとりかかる前に「今回は生理前に腫れましたか?」とか「その後知覚過敏はどうですか?」とか気にしてくれて、さらにクリーニングの最中も「次前歯お水当てていきますね」とか「左下奥から磨いていきますね」とかどこにどんな作業をするのか事前に教えてくれるし、気をつけてほしいところをこちらが申し出る前に「ここ気をつけてフロスしていきますね」と事前に声かけしてくれるし「

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        記事

          まなざしを贈る

           絵を描くにはどうしたらいいか聞くと美術教師はそれではまず描きたいものを見つけるところから始めましょうと言った。それが私の問いその一。私は何を描きたいのだろう。そして問いその二が立ち上がる。私は何を見て生きているのだろう。私は改めて絵を描くぞという気持ちで周囲を見渡してみる。可愛らしい女の子、遠くの山、室内プール、ゲレンデと化したグラウンド、寒々しい廊下、書類とパソコンと労働者が押し込められた窮屈な事務所、人の良いおじさん、太った青年、加湿器、路面凍結した中庭、滑る子供達、一

          まなざしを贈る

          きぼうの光

           今日の午後5時55分、南西の空にきぼうの光が見えると理科の先生が言うのでそれを見るためだけに部活に行った。特別何がなくとも部活中はもっぱら空を見上げているから、グラウンドにいればきっときぼうを見逃さない。 顧問は驚いた顔でわたしを見た。けれど見ただけで、声をかけたり気にかけたりはしなかった。いつも通りグラウンドを2周してから輪になって準備体操をする。部長の掛け声とみんなの雑談が寒空の下に広がる。足はどう、と隣の同期がささやくように聞いた。悪くない、とわたしは答える。 「よか

          きぼうの光

          診断メーカーで出た探偵と助手でストーリーを作る

          診断メーカー(https://shindanmaker.com/863134)で出た架空の探偵と架空の助手で一つお話を作るという遊びを仲間内でした時の作品です。 タイトル:歪 診断結果:事件に遭遇し過ぎて様子がおかしくなった殺意に満ちた探偵と過去に虐待されていたことがある指名手配されている助手  しかしよ、金田一一や毛利小五郎はよくもまぁ行く先々で殺人事件に遭遇して正気を保っていられるもんだな。あれだけどこかに出掛ける度に殺人事件に遭遇してたんじゃ呪われていると思ってど

          診断メーカーで出た探偵と助手でストーリーを作る

          寒中

           夜が長い。夜明けは遠く、誰も私を追いかけて来ない。じっとしていると体温がどんどん奪われていく。足の指先は感覚を失い、凍った靴の中で縮こまっている。手先は可哀想ほど赤くなり腫れている。既に自分の指とは思えない。とてつもなく眠くて、指一本動かせなかった。身体が重い。このまま眠って二度と目覚めなければいいのに。  なんて簡単なんだ。初めて冬を好きだと思った。ただ眠りにつくだけで良かったんだ。真下に横たわる自分の身体が小さくなっていく。浮遊する自分に実感も湧かないうちに風船以上の

          藍晶(らんしょう)#自己紹介

          初めまして。藍晶と申します。 今さらですが自己紹介をさせていただきます。 プロフィールペンネーム 藍晶 彼方(らんしょう かなた) 経歴 地方国公立大学文学部卒。日本文学専攻。公務員、民間、どっちも経験済。転職3回。大学時代から小説を書き続けているが未だ自費出版の域を出ないアマチュア。色々経験して分かったけど労働向いてない。 主な活動 小説の公募メイン。時々二次創作も。 小説はエブリスタ(https://estar.jp/users/102961333) 掌編小説はno

          藍晶(らんしょう)#自己紹介

          好意を持てない相手とは付き合わない方がいい。他者は鏡だ。好意には好意が、悪意には悪意が返ってくる。

          好意を持てない相手とは付き合わない方がいい。他者は鏡だ。好意には好意が、悪意には悪意が返ってくる。

          2022年10月3日 月曜日

           家から車で10分ほどの距離に山と田園が見晴らせるカウンターに座り心地の良いソファが並ぶ落ち着いた雰囲気のカフェがある。平日なら空いているだろうと思いブレイク・スナイダーの『SAVE THE CATの法則』とノートと万年筆を持って日暮れに出掛けた。店に入るとカウンター席の奥に若い男女が並んで座っている。一緒に来ているのに二人して黙って自分のスマホを眺めている。電車で隣り合う他人のようだなと思いつつ私は入り口近くの一番手前の席に座りメニューを眺めた。声の小さい気弱そうな店主がオ

          2022年10月3日 月曜日

           別れを告げたとき彼の影を盗んだ。  彼の影と生活するうちに私が欲しかったのは彼自身ではなく彼の影だったのではないかと思えてきた。影は声を出さない。静かに私のそばにいる。私を傷つけることもなく私が誰を傷つけることもない。平和な日々。影は私に何も望まず、私も影に出来ることを心得ているから不可能なことは始めから望まなかった。時には影の存在を忘れ、時には影と一緒に眠った。影を彼から引き離すことに成功した瞬間から私はとても楽になり、同時にさみしくなった。今では、自分は影を大切にするこ

          モノローグ

           取り出す、使う、しまう。散らかす、片付ける。汚す、落とす。買う、作る、洗う、食べる、片付ける。取り出す、着る、脱ぐ、洗う、干す、畳む、しまう。溜める、浸かる、洗う。寝る、起きる、仕事、家事、寝る、起きる、仕事、家事、寝る・・・・・・。  毎日毎日よくやる。やっては消えやっては戻しの繰り返し。まるで賽の河原の石積みじゃないか。この繰り返しの中に目指すべき場所へ到達するために積み重なり前進していることが果たして一つでもあるだろうか。全ては現状維持のための儀式に終始しているように

          モノローグ

          落葉

           ひどい有様だな。  頭上で革靴が言った。もう頭を持ち上げて顔を確認する力も無い。誰か知りたいとも思わなかった。右下腹部の激痛で何も考えられない。子どもの頃は死ぬときに感じる痛みはどんなだろうと想像しては戦慄していた。死への恐怖はそのまま痛みへの恐怖だった。確かに叫ぶことも息を吸い込むことも出来ないほどの苦しみだ。鋭利な刺激に意識が朦朧としてくる。身体が重く、冷えていく。命が失われつつある。もう助からないだろう。絶望はなかった。ただこの耐えがたい痛みにもまもなく終わりが訪れる

          Summer

           夏至の暁、遮光カーテンの縁が発光して徐々に部屋の輪郭を浮かび上がらせていくのを感じていた。羽毛布団を顎の下まできっちりと引き寄せて全身で柔らかさと暖かさと絹の心地いい肌触りを堪能していたけれど、眠りにつくことは出来なかった。白んでいく寝室の壁と天井、後光さすカーテン。光がだんだんと強くなる。  昨日のことを思い出していた。 「右の卵巣に癌があります。かなり大きくて、すぐにでも手術をしないといけません。それに加えて、この大きさだと転移している可能性もあるので全身の検査が必要で

          センチメンタルブルー

           起きると窓辺の桔梗が新しい花をつけていた。紙風船のような蕾が星型の綺麗な花弁に変わっている。かたや萎れてしまっている花もある。昨夜まで瑞々しい紫色をして先までぴんと張っていた花びらが、今朝には黄土色に丸まっている。蕾がはじけ、萎れるまでのサイクルは想像していたよりもずっと短く、一つの花が枯れる時一つの花が咲いている。夏の終わりまでこれが続くらしい。  【キキョウ キキョウ科/原産地:日本 一代の交配種。青紫色の大輪です。矮性種で耐寒性に優れています。多年草で花壇に適していま

          センチメンタルブルー