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書くこと生きること

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記事一覧

書くことと、話を聞くこと。両方やらないと、体調がわるくなる

書くことと、話を聞くこと。両方やらないと、体調がわるくなる

ふだん、誰かの話を聞いて、記事を書く仕事をしています。

文章を書くことはもともと好きだったのですが、誰かの話を聞くこともすごく好きだと、この仕事を始めてから気づきました。

ずっと机に向かって書くだけだと、内側にこもりすぎて煮詰まってくるし、話を聞き続けるだけでは、糸の切れた凧みたいに浮き足だって、どこかへ飛んでいってしまいそうになる。

だから、話を聞いて、書く。という両方が暮らしの中にあるこ

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インタビューライターのジレンマ〜解釈と創作の間〜【佐藤友美「書く仕事がしたい」を読んで】

インタビューライターのジレンマ〜解釈と創作の間〜【佐藤友美「書く仕事がしたい」を読んで】

『書く仕事がしたい』(佐藤友美、CCCメディアハウス)読む。

学ぶことがたくさんあったのだけど、中でもインタビューライターが必ず立ち止まる「どこまで相手の言葉を解釈(意訳)していいのだろう」問題の考察が刺さりました。

取材相手の言葉をそのまま並べるだけでは、AI文字起こしと同じ。
かと言って、憶測で独りよがりに言葉を選ぶと、ライターの「創作」になってしまう。

原稿を読んだ取材相手が「よくぞ私

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【執筆協力】『QuizKnockの課外授業シリーズ03 君らしく働くミライへ』

【執筆協力】『QuizKnockの課外授業シリーズ03 君らしく働くミライへ』

執筆協力した本が出版されました。

楽しいクイズで子どもたちに大人気のQuizKnock(クイズノック)さん。

子どもたちが未来を考えるための「働き方」の本を出版されるということで、執筆協力をさせていただきました。

マンガとテキストを織り交ぜて、小学生から楽しく読める素敵な1冊に仕上がっています。

4章では、ヒカキンさんや朝井リョウさんなど、今をときめくかっこいい先輩たちへのインタビューも!

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どうか無事に帰ってきて…!命がけの単身赴任に向かう防人たちの愛と別れ

どうか無事に帰ってきて…!命がけの単身赴任に向かう防人たちの愛と別れ

家族が離れて暮らす単身赴任。

仕事のためにやむを得ないとはいえ、大切な人に会えない時間は切ないものです。

1300年前にも、命がけの単身赴任をしていた男たちがいました。

飛鳥〜奈良時代、東国(東海、信濃、関東地方)から北九州へ、国を守るために派遣された兵士「防人(さきもり)」です。兵士といっても、彼らの多くは農民。防人に選ばれるとふるさとに家族を残し、3年間の任務につかなければなりませんでし

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24歳で早世した作家・樋口一葉、生涯ただ一度の恋

24歳で早世した作家・樋口一葉、生涯ただ一度の恋

旧暦の3月25日は、作家・樋口一葉の誕生日。

5千円札に描かれた肖像で見覚えがある方も多いと思いますが、一葉自身の後半生は、決して金銭的に豊かな暮らしではありませんでした。

生活苦の末、24歳の若さで病死した一葉は、亡くなる直前、「奇跡の14ヶ月」と呼ばれる短い間に、『たけくらべ』『にごりえ』など数々の名作を世に送り出します。

地味で引っ込み思案だった文学少女の一葉を、押しも押されもせぬ一流

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亡くなる日を歌で予言した!平安のベストセラー歌人、西行のドラマティックな生涯

亡くなる日を歌で予言した!平安のベストセラー歌人、西行のドラマティックな生涯

春分の日。各地で 桜も咲きはじめました。

「願はくは花のしたにて春死なむ(春、満開の桜の下で死にたいなあ)」と歌うほど桜を愛した歌人、西行の作品と生涯を紹介する記事を、和樂webで書いています。

https://intojapanwaraku.com/culture/187788/



「花の衾(ふすま)を着する春風(春風が花びらの布団をかけてくれる)」なんてロマンチックな歌もご紹介して

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蝶みたいに自由に、好きな場所ではたらく

蝶みたいに自由に、好きな場所ではたらく

あたたかな光にさそわれて、上着を脱ぎたくなるのは人間も、虫たちも同じ。

3月15日〜20日頃は、七十二候の「菜虫化蝶(なむしちょうとなる)」

菜の花にとまる青虫たちも、もぞもぞと皮を脱いで、色とりどりの蝶へと華麗な変身を遂げます。

今日は次男のお別れ遠足。雨が上がってよかった。今ごろ、花咲く公園で友達とおにぎり食べてるかなあ。

蝶で思い出すのは、中国の思想書『荘子』に登場する有名なエピソー

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心も、体もあたたかい。「気持ちよさ」を追求したくなる家

心も、体もあたたかい。「気持ちよさ」を追求したくなる家

とても素敵なご家族を取材させていただきました。

心と体が「感じる」ことを大切に暮らす人たちを、日本全国に訪ねる旅。

今回お話をうかがったのは、福井県鯖江市の山本祐輔(ゆうすけ)さん、かおりさんご夫婦です。

BESSの家に住んでいる方々、愛がいっぱいのご家族ばかりで、取材の帰りみちは毎回「あ〜帰りたくないよ〜」と子どもみたいに薪ストーブの前で転がりまわってだだをこねたくなります。

毎回、目に

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いつもと違う場所、違う時間の流れの中で気づくこと

いつもと違う場所、違う時間の流れの中で気づくこと

先日、鎌倉へ行ってきました。

むかし何度か訪ねたことがあるのですが、ゆっくり滞在するのは、おそらく20年ぶりくらいだったと思います。

江ノ電に乗って、てくてく歩いてわかったのですが、鎌倉という街は、海と山がとても近いんですね。

海ではサーフィンやヨットを楽しむ人が、山のほうでは犬を連れた地元の人がのんびり時間を過ごしていて、いいところだなあと思いました。

あてもなく歩きながら、無意識に「5

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やがて、大きな森になる。本当の自分に還る家

やがて、大きな森になる。本当の自分に還る家

自然の中で、暮らしたい。
いつからか、そう思うようになった。
都会のマンションは、便利で機能的。でも、ときどき窓を開け放って、思いきり深呼吸したくなる。この小さい窓のむこうに見えるのが、隣の建物ではなくて緑の山だったら、どんなに気持ちがいいだろう。森の中の一軒家で、「静かにしなさい!」と子どもたちをしかる必要もなく、おおらかに見守ることができたなら。
もしかすると、私たちの毎日は、ぜんぜん違うもの

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「あとがき」を書かせていただきました〜中井智彦さん演じる詩人・中原中也の世界

「あとがき」を書かせていただきました〜中井智彦さん演じる詩人・中原中也の世界

ミュージカル俳優、中井智彦さんの舞台「詩人・中原中也の世界~在りし日の歌~」のLIVE DVD&BOOKが、10月22日、中也84回目の命日に発売されます。

noteに舞台の感想を書かせてもらったことがご縁につながり、そのDVDブックの「あとがき(解説)」を担当させていただきました。

劇団四季で『美女と野獣』の野獣役、そして『オペラ座の怪人』のラウル役を演じた中井さんが、新たなライフワークとし

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インタビュー取材の鍵

インタビュー取材の鍵

何百回取材を経験しても、インタビューの前にはやっぱり緊張します。

でも、緊張は良いサイン。
お話を聞かせてもらう相手について、事前によく調べるエネルギーになるから。

著書があれば読み、HPやSNSがあればすみずみまで目を通す。
その上で、実際にお話を聞くときには、いったん全部忘れてまっさらにする。
かっこいい質問をしたいとか、嫌われたくないという自我をできるだけ消すために、事前の準備をするのか

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「空気」をおそれて会社をやめた私がみつけた、心にしたがう働きかた

「空気」をおそれて会社をやめた私がみつけた、心にしたがう働きかた

携帯電話をお風呂の天井からぶら下げて、シャワーを浴びていた。

18年前、まだスマホが存在しなかった「ガラケー」の時代の話だ。

夜景のきれいな港町で、私は駆け出しの新聞記者として働いていた。

今の若い記者のひとが、どんなふうに働いているかはわからない。私が新人だったころ、私が働いていた場所では、深夜でも休日でも、電話がかかってきたら15分以内に身支度をして、事件や事故が起こった場所に向けて出発

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明日なんて来なければいいと思っているあなたへ

明日なんて来なければいいと思っているあなたへ

10歳くらいまで、声を出して話すことが苦手だった。

頭の中には、伝えたいことがたくさん渦を巻いている。

でも、それらの「こと」を「音」に変換する術がわからない。

緊張した状態で無理に言葉を絞り出そうとすると、喉がぎゅっと締まって、息ができなくなる。

顔を真っ赤にして魚みたいに口をぱくぱくさせる私を、先生は困った顔で見守り、クラスの子どもたちはくすくす笑った。

朝の健康観察で返事をするのも

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