「地獄絵を見て」という連作がある。 見るも憂しいかにかすべき我心かかる報いの罪やありける こういう歌の力を、僕らは直に感ずる事は難しいのであるが、地獄絵の前に佇み身動きも出来なくなった西行の心の苦痛を、努めて想像してみるのはよい事だ。 *無常という事(西行)/小林秀雄
「西行 歌と旅と人生」(寺澤行忠著、新潮選書)。孤独と自然と旅を愛し、草庵に質素に暮らし、自己と対峙しながら精神の自由を求めた西行の歌と人生をわかりやすく解説。思いやりと人懐こさにあふれた素顔も伝わる。「願わくは花の下にて春死なむ」に象徴される死生観についても理解を深められる。