『詩』まだ何も知らなかったあの頃
まだ何も知らなかったあの頃
古い三八銃を杖代わりに
酒と 饐えた汚物の臭いが充満する暗い裏通りを
僕はひとりで歩いていた
まだ起きていないことは
まだ起きていないことで
もちろん誰にも知る術がなかった
終わりかけた
誰かの鼓動を数えているかのように
赤く 酒場のネオンが点滅している
路地を抜けて向こうに出られれば
真っ黒な タールのような海が
身悶えする怪しい生き物のようにうねっていて
その代わり
辿り着ければ希望があるとおもったけれど
ネオンの下に置かれた塵ばけつの
僅か