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みよしのと弘川寺

ある日の吉野行

花の間にただようドローンも行きくれて

中千本。若いアベックが楽しげに手をつないで横切って行く。ほれぼれと木を見上げているひともいる。握り飯にかぶりつく少年もいる。

花と葉のあわいに老いたる二人連れ

外国人がふと犬を追いかけて横切っていった。

花はいま回帰のときに身を沈め

だれを呼ぶのか犬がひとこえ大きく吠える。

いとなみのまれなるものに花と月

弘川寺

足おとに夏のきざしの終焉地
余り花死におくれたる夕餉の香
吐く息とひかりにおよぐ青かえで
もみじの実ふたつ紅の葉目におよぐ

須磨明石窓より見えて住む庵のうしろにつづく葛城の峰

似雲

「西行墳。西行上人は晩年空寂座主の法徳を慕って登臨され、文治六年二月十六日七十三歳当寺において入寂されました」。

こんもりと円位(まるい)小山に青葉木菟

いくたびの春の思出西行忌

阿波野青畝(平成二年五月十三日句碑建立とのこと)

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