みよしのと弘川寺
ある日の吉野行
花の間にただようドローンも行きくれて
中千本。若いアベックが楽しげに手をつないで横切って行く。ほれぼれと木を見上げているひともいる。握り飯にかぶりつく少年もいる。
花と葉のあわいに老いたる二人連れ
外国人がふと犬を追いかけて横切っていった。
花はいま回帰のときに身を沈め
だれを呼ぶのか犬がひとこえ大きく吠える。
いとなみのまれなるものに花と月
*
弘川寺
足おとに夏のきざしの終焉地
余り花死におくれたる夕餉の香
吐く息とひかりにおよぐ青かえで
もみじの実ふたつ紅の葉目におよぐ
「西行墳。西行上人は晩年空寂座主の法徳を慕って登臨され、文治六年二月十六日七十三歳当寺において入寂されました」。
こんもりと円位(まるい)小山に青葉木菟