若林明良

わかばやしあきら と読みます。

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  • NHK俳句・短歌・文芸選評、💢没った💢エッセイ

    NHK俳句・短歌・文芸選評投稿作や、没になった300字のエッセイです。 自分の記事の中ではそこそこ人気です。

  • 創作短編・短歌・俳句・川柳・詩

    恋愛あり、ナンヤコレ?っていうのもあり。短めです。

  • エッセイの数々

    日々思うことのつれづれ。短歌・俳句もたまに入ってます。

  • 140字小説

    140字の小説を3編づつ掲載しています。

  • 音楽に寄せる愛シリーズ

    音楽に寄せる愛を、短歌・俳句・エッセイなどで綴りました。

最近の記事

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余白の神様 #短編小説

 夏。僕は「豚の警察」という本をお母さんに買ってもらった。読んでいて、僕はだんだん腹が立ってきた。話のすじ自体は面白いのだが、余白があまりにも多すぎるのだ。上下、左右、そして段落の間の余白が。 「なんだよ、これ。1760円もするけど、ぼったくりじゃん。余白をぎゅっと縮めたら、半分になるよ。そしたら880円で買えるのに」  僕は本の最後に印刷されている出版社の電話番号に電話した。 「はい、夏耳社でございます」 「こんにちは。中学一年の近藤貴志といいます。あの。『豚の警察

    • NHK短歌への投稿作・10月号

      選者:川野里子先生 題詠「氷」 甘づらの氷を食ひし少納言金属椀の冷えを伝へ来 吝嗇にあらずもったいないおばけの君は氷なくなるまで席立たず 蝉氷といふおもしろき言葉あり羽化途上の蝉青白く 母を追い出し父を追い出し四方より壁迫りくるごときこの部屋 奈良県 大津穂波さん(山崎聡子選) 助けの手を振り払い、部屋にこもっている。両親は自分に一番近い存在だけど、一番近いからこそ伸ばされた手を疎ましく感じることがある。四方の壁が迫ってきてぺちゃんこになってしまう感覚。どうしたらいいかわ

      • 木暮陶句郎 個展

        行ってきました。あべのハルカス近鉄本店の木暮陶句郎 個展。タワー館11階〈アートギャラリー〉です。会場の壁に木暮さんの句の色紙、短冊、陶板がぐるっと飾れていました。その下の台には茶碗、皿、器、句集、色紙と短冊があり、奥の台にNHK俳句の収録で使用した大きな皿がテキストと共に配置されていました。 木暮さんはお客さんの皆と話されていて年配のご婦人の「NHK俳句で採っていただいて~」という声も聞こえました。私もお声がけいただきました。木暮さん白パンツのおしゃれなお姿です。 「今

        • NHK俳句への投稿作・10月号

          選者:堀田季何先生 兼題「プール」 四分の三は自由時間プール 喧騒へわざわざ蝶の来るプール プールサイド灼かれつづける見学児 選者:西山睦先生 兼題「天の川」 偽地球と地球対峙す天の川 星屑のむしろ汚れて天の川 天の川うちのひとつの魚である 選者:木暮陶句郎先生 兼題「西瓜」 ぜっったいに西瓜は黄色農家の子 サイコロになんで西瓜を切るかのう 仏壇の西瓜叩かれやすきかな 選者:高野ムツオ先生 兼題「秋風」 梨園をトラック発ちぬ秋の風 秋風や遠のけば近づく囃子 秋の風小暗き

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        記事

          ニャンタダ #童話

           けんたは庭におりました。庭の松の木にハトが巣を作っているのです。けんたは、ハトの卵が見たくて仕方がありません。ずかんで調べると、ハトの卵はうずらの卵より少し大きくて、殻はニワトリの卵と同じ白色です。  本当にそうなのか、たしかめたい。それに、毎日食べるニワトリの卵とちがって、ヒナがちゃんと産まれる卵というものを、実際にこの目で見てみたい。けんたは納屋からはしごを持ってきて、松の木にかけました。そうして、そろそろとはしごをのぼりました。  はしごのてっぺんまで来ました。松

          ニャンタダ #童話

          NHK俳句への投稿作・6月号

          選者:堀田季何先生 兼題「石鹸玉」 しゃぼん玉大人をさぼりたい時間 まろびあふ蝶を掠めてしゃぼん玉 しゃぼん玉年表所々に余白あり 一句目は佳作に採っていただきました。ありがとうございます! 夏蝶の一翅破れてより美し 堀田季何 完璧な状態って美しいことは美しいけれど、人工的過ぎて何か物足りない。だからほくろを付けたり片方の眉を少し上げて描いたりしたりしてわざと崩したと、昔の女優さんの話を読んだことがあります。または美しいけれど性格の悪さゆえにさらに美しく見える妙な感覚とか

          NHK俳句への投稿作・6月号

          公募ガイド「小説でもどうぞ」感想②

          佳作「時を止める方法」ともみさん 主人公は夏休みの最終日にクラスの女の子から今日をできるだけ長くする方法が知りたいと話を持ち掛けられます。その後色々あって、ラストにその子が自分を友達と言ってくれた。主人公には友達がいなくて、だから、衝撃を受けるんですね。「何度か口の中でくり返すと、セミが自分の体の内側で鳴いているのかと思うくらい、こころがざわめいて、落ち着かなくなりました。」描写がめちゃ巧い。わかる、わかるよーってなりました。私も友達少なかったから笑。この方の文体はなんでこ

          公募ガイド「小説でもどうぞ」感想②

          所感

          議会解散→選挙で税金16億使うくらいならあと10か月の任期全うしてもらい退職金2千万払うほうがいい。という兵庫県民(民間人)の意見を目にし、この合理的な考えナイスと思った。斉藤知事の行った仕事の主な内容として県立大の授業料無償化、私立高校無償化、知事報酬カット、天下り団体の改革、など。全部すごいやん。例えば「4割出勤」これで新庁舎建設費用が浮いた。4割出勤とは簡単にいえばテレワーク推進なんだけど、私の経験からいうと旨味90%しかない。最初はちょっと面倒だしこんなんで細かい仕事

          ジワる言葉①

          ジワる言葉、モニョる言葉を挙げていきます。 スーパーカップ 「スーパーカップ買ってきて」と言われてもアイスなのかラーメンなのかわかりません。実際間違えて買ったことあります。 テベリ 姉は小学校高学年までテレビを「テベリ」と呼んでいました。頭ではちゃんとテレビとわかっているのに、どうしても「テベリ」と発声してしまうのだそうです。当時から読書家で語彙力もあった姉ですがテレビだけはなぜかテベリ。成長につれ自然になおりました。 タッチを歌っているのは妹、死んだのは弟という覚

          ジワる言葉①

          恋の俳句

          ほぼ毎日使っているきごさい歳時記の恋の俳句大賞。 まさか採られてると思わず入選してたことに今日気づきました🤣 趙先生ありがとうございます! 趙栄順 選 曼殊沙華悪い男と判りつつ ※他の投句 一度だけ名前呼ばれたレモン水 半袖はダサくないってかき氷 この指に秋あかね来る初逢瀬 霜焼の耳にくちびる熱きかな 受賞句から好きな句をいくつか。 日焼けした腕と寝癖とあと全部  げばげば ふたりはすでに寝癖を確認できる関係なんですね。あと全部って……全部、なんですよ。全部を知っち

          【追悼】セルジオ・メンデス

          御冥福をお祈りいたします。 作った人間の名前はおろか国籍も、人種も、性別も、年齢も、バックグラウンドの何もかもがわからない状態でそれだけを浴びてドッカーンと全身を打たれたようになった音楽、絵画、詩、俳句や小説が、きっと皆さんにもたくさんおありと思います。むしろそっちの方が多いかもしれませんね。私の場合、そのひとつがこちら、マシュ・ケ・ナダでした。20世紀から21世紀に変わる頃、テレビか街中のBGMで耳にしたと記憶します。な、何やこれ! めっちゃカッコいい! と衝撃を受けたも

          【追悼】セルジオ・メンデス

          田中先生のこと①

          田中先生は中学の三年間お世話になった塾の先生でした。当時で六十半ばの男性で、若い頃から塾の先生だったのか、定年退職後に塾を始められたのかは不明です。そこは馬淵教室みたいな大手ではなく田舎にたくさんあった寺小屋みたいな個人塾でした。塾の名前は田中塾といいました。本当の名前は田中とは違うのですがいちおう仮名にしておきます。 田中先生は京大の文学部を出ていたので、本当かどうか確かめようがありませんが「わが町最高の頭脳」と町民に呼ばれていました。だから子供をこの塾に通わせようとする

          田中先生のこと①

          公募ガイド「小説でもどうぞ」感想①

          先月以前の掲載作品も含め書かせていただきました。また後日に書き足したいと思います。 佳作「レントゲン名人」桜坂あきらさん 今月掲載です。文章自体もですけど構成が巧みです。だらだら書かずに出だしの一文だけでどんな物語世界かを説明していてサッと引き込まれます。これはサンドウィッチマンの漫才に似ていて、よくある「おれ、先生。お前、生徒な」「うん、わかった」のくだりがなくてパン!って手を叩くといきなり劇に入る、あの手法を思い出しました。漫才のあの手の説明ってただでさえ時間短いのに

          公募ガイド「小説でもどうぞ」感想①

          宮本輝 #エッセイ

           知人が宮本輝「蛍川」を基に短歌の連作を詠んだ。宮本輝が好きだと言った。それで興味を持ち自分も読みはじめ、はまった。蛍川から始まり川三部作はもちろん、流転の海シリーズまでほとんど読んだ。  一番好きなのは「春の夢」。人生どん底だった時、宮本氏の分身である主人公、井領哲之のド根性にどれほど救われたかしれない。  好きが高じて氏の母校・追手門学院大学で行われた講演会にも行った。話ぶりから想像通りのユーモアある温かいお人柄を感じた。  氏の仰る「簡単な言葉で深いことを書く」「いかに

          宮本輝 #エッセイ

          NHK文芸選評への投稿作・8月

          8/3 短歌 選者:佐佐木頼綱先生 兼題:Tシャツ Tシャツの襟のくたくた気にしない人と思えば素うどんうまし 模擬店という名の青春おそろいのTシャツなんか作ったりして 「きょう白Tだからカレーは私ちょっと」よかろうカレー色にしてやる お揃いのクラスTシャツ作っても文化祭の無い秋だった 岐阜県 ひよこ豆さん 文化祭でおそろいのTシャツを作った歌はたぶん死ぬほど届いたと思われます。私もその一人。この歌がたくさんの文化祭Tシャツ歌と一線画しているのは作ったけど着る出番がなくな

          NHK文芸選評への投稿作・8月

          渡辺橋のヨシさん #SS #公募ガイド選外佳作

          本日発表の「小説でもどうぞ」にて、選外佳作いただきました。 公募ガイド様、スタッフ様ありがとうございます!😄 選外佳作でも佳作でも何でも、全文載せていただけるのすごく嬉しいです! 記事の一番下に公募ガイドさんから転記させていただきました。 今回、一番好きなのはこちらの作品です。 最優秀賞「人生の名人」有原野分さん この作品はちょっと変わっていて、いいものを書いてやろうといった気負いがぜんぜんみえない。心の底から、魂の底から、本音をつづっているだけのようにみえる。山奥の清

          渡辺橋のヨシさん #SS #公募ガイド選外佳作