渡辺(読書/散歩)

静岡県在住。読み書き歩きます。 散歩のこと、散歩中に考えたことなど500〜1000字く…

渡辺(読書/散歩)

静岡県在住。読み書き歩きます。 散歩のこと、散歩中に考えたことなど500〜1000字くらいで。 読んだ方が楽しくなるような、散歩したくなるような記事を目指して書きます。 ブログでは読んだ本を紹介してるので、そちらもどうぞ。 https://book-attic.com/

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  • 【奈良旅】吉野山の桜を求めて

    奈良県にある吉野山の桜、古刹、神社の有名どころを巡りました。 吉野山→万葉文化館→長谷寺→瀧蔵神社→大神神社→石上神宮→山の辺の道→檜原神社

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【奈良旅3日目④】山の辺の道、檜原神社

長岳寺を出てしばらく歩くと、でーんと巨大な森が見えてきた。周囲は茶色い水を貯めた広いお掘りで囲まれている。崇神(すじん)天皇陵だ。 多少遠回りになっても古墳のまわりを歩いてみた。広い、大きい。上空から形を見ることができないのは残念だが、古墳作りが大規模なプロジェクトであったことが肌でわかる。 続けて景行天皇陵を横目に進みながら、大和三山が見渡せるというビューポイントに立ち寄った。大和三山とは香久山(かぐやま)、畝傍山(うねびやま)、耳成山(みみなしやま)を指す。美しい畝傍

    • 【奈良旅3日目③】山の辺の道、長岳寺

      「山の辺の道」は日本に現存する最古の道。天理市から桜井市あたりまでの山裾を南北に走っており、田畑や古墳、古跡、大和三山まで見渡せる景観良好なハイキングコースとして現在も親しまれている。 自分が歩くのは石上神宮から大神神社までのおよそ15キロの道のり。道中にはこまめに道標が立っているので、迷うことはないはずだ。 池があり、林があり、寺社があり、田畑の間をひたすら歩く。景色は地元の田舎道に似ていないでもないが、いたるところに万葉の歌碑や古墳があるところに、歴史の重みを感じる。

      • 【奈良旅3日目②】石上神宮、山の辺の道

        大神(おおみわ)神社への参拝を済ませてから、北上して石上(いそのかみ)神宮へと向かった。 石上神宮の祭神は布都御魂大神(ふつのみたまのおおかみ)。日本神話でも屈指の武闘派として知られる、建御雷神(たけみかづちのかみ)が持っている剣に宿る神様だ。スピンオフ過ぎると言いたいところだが、剣を御神体としていたり、剣に宿る神様を祀っている神社は他にもある。 木漏れ日がさす参道を進んでいくと、けたたましく鳴くニワトリたちが境内を闊歩している。石上神宮ではニワトリは神使として大切にされ

        • 【奈良旅3日目①】大神神社、三輪山への登拝

          4月12日は快晴。すき家で朝食をとってから大神(おおみわ)神社へと向かった。 大神神社は、大国主命(おおくにぬしのみこと)と共に国造りをしていた少名毘古那神(すくなびこなのかみ)が去ってしまった際、自分を祀ることを条件に国造りを手伝った大物主神(おおものぬしのかみ)を祭神とする、日本最古の神社の一つ。御神体は大物主神が宿る三輪山そのもので、原始的な信仰形態を残す神社だ。 大物主神に関して、神話の時代を経てからもこんな話が残っている。 時は崇神(すじん)天皇の時代(弥生〜

        【奈良旅3日目④】山の辺の道、檜原神社

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        • 【奈良旅】吉野山の桜を求めて
          9本

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          【奈良旅2日目④】長谷寺、瀧蔵神社

          長谷寺の創建ははっきりしていないが、7世紀後半に道明(どうみょう)という僧が作ったといわれている。『源氏物語』『枕草子』『更級日記』にも名前が見られ、霊験あらたかな噂は唐にまで届いていたという。古くより絶大な信仰を集めていたお寺だ。 長谷寺に到着したのは15時30分。コインパーキングの従業員に招かれるままに駐車して、流れるように参道へと向かった。遅めの時間でも大勢の人で賑わっているのはさすがの古刹。399段ある登廊(のぼりろう)は、緩やかな作りになっていたので段数ほどの苦労

          【奈良旅2日目④】長谷寺、瀧蔵神社

          【奈良旅2日目③】日本人の心の故郷、明日香村と万葉文化館

          コインパーキングで少し仮眠を取ってから、明日香村へと向かった。明日香村は6世紀半ばから7世紀終わり頃に栄えていた地域。その後は藤原京(694年〜710年)、平城京(710年〜784年)、長岡京(784年〜794年)と北上しながら目まぐるしく変わっていったが、一時は実質の日本の首都だった場所だ。そのため明日香村は「日本人の心の故郷」と呼ばれており、数少ない古都保存法対象地域にもなっている。 ここまでとってつけたようなハリボテの調べを披露したのは、実際に明日香村の中を走っていて

          【奈良旅2日目③】日本人の心の故郷、明日香村と万葉文化館

          【奈良旅2日目②】吉野山の千本桜

          脳天大神龍王院の階段を登り、金峯山寺(きんぷせんじ)に戻ってきた。奥千本行きの竹林院前バス停には大勢の人が並んでおり、二台目のマイクロバスに乗り込むことができた。 吉野山の桜は標高に合わせて下千本、中千本、上千本、奥千本と呼ばれ、それぞれ開花の時期が微妙にずれている。今回の旅の救いは、奥千本が満開だったということ。バス停前で交通整備をしているおじさんは、「上千本、中千本の散った花びらが下から吹き上がってくる様子も美しいので、帰りはぜひ歩いて下山してみて下さい」と教えてくれた

          【奈良旅2日目②】吉野山の千本桜

          【奈良旅2日目①】脳天大神龍王院

          初の車中泊に不安はあったが、なかなか寝付けなかったこと、何度か覚醒したこと、深夜帯が寒かったこと以外は概ね快適であった(それを快適と呼んでよいのか…)。今度は毛布、アイマスク、耳栓があれば、環境はなおよくなると思う。4月11日の吉野は快晴。6時頃は霧がかっていたが、7時にはすっかり晴れていた。 吉野駅は人が少なかった。出店の屋台が準備を始めているものの、くすんだ紅茶色になった葉桜を見に来る人は少ないのかもしれない。奥千本に向かうバスの始発は8時30分。時間に余裕があったので

          【奈良旅2日目①】脳天大神龍王院

          【奈良旅1日目】吉野山の桜を求めて/七曲りの夜桜

          奈良の吉野山に行こうと思い立った。思い立ったという言い方には語弊がある。いつか必ず行くと決めていた場所の一つが吉野山だった。 その動機は吉野山が、詩人・西行が愛した古くからの桜の名所であったことが挙げられる。 別冊太陽の西行特集号に吉野山の写真が多く載せられていた。一目千本満開の桜と、静けさを漂わせる神さびた雰囲気、そして西行の詩。いつかはと思う間に数年が過ぎて、これは「まとまった時間が取れたら…」などと待ち続けてはいけないと思い、旅の時間を捻出したわけだ。 出発前に吉野

          【奈良旅1日目】吉野山の桜を求めて/七曲りの夜桜

          桜あれこれ(牛代の水目桜/蓮華寺池公園/金毘羅山緑地)

          待ちわびた桜がほころびはじめた。平年より開花が遅れたのは、暖冬の影響があるらしい。桜の開花には暖かさが必要だが、振れ幅となる寒さも大切なのだ。とにもかくにも、浮かれ出るように花見へと繰り出した。 河原や公園だけでなく、街中のあらゆる場所に桜が植えられていることに気づく。山野の緑に溶けた桜もいいが、コンクリートのねずみ色に添えられた桜もこちらの目を引く。 サムネ画像にもなっているのは牛代の水目桜。平日だが道路脇にはたくさんの車が止まっており、西は熊本、東は横浜まで県外ナンバ

          桜あれこれ(牛代の水目桜/蓮華寺池公園/金毘羅山緑地)

          西行法師と桜のこと、アスリートとゾーンの話

          いつ頃からか、桜の開花を心待ちにするようになった。毎年、気象庁が大真面目に桜の開花時期を予想するのは、なんて雅な仕事だろうと思う。さて、桜の歌人といえば真っ先に西行法師が挙げられる。全国を歩きながら、桜をテーマにした歌だけで230首以上も詠んだというから驚きだ。 「花に染む 心のいかで 残りけん 捨て果ててきと 思ふ我が身に」(西行)。花の色に心が染まっている。すべての執着を捨ててきたつもりなのに、どうして花に執着する心が残ってしまったのか。和歌に出てくる花は一般的に桜を意

          西行法師と桜のこと、アスリートとゾーンの話

          粟ヶ岳にて「山笑う」

          雨が続いたかと思えば晴れ渡り、汗ばむ陽気の翌日は寒気に震え、吹いては止む暴風に振り回されている3月の静岡である。3月18日、よく晴れたので掛川市にある粟ヶ岳に行った。 「故郷やどちらを見ても山笑ふ」(正岡子規)。遠くから眺めた時に枯れ葉色のすすきと常緑の杉しか見えなくても、実際に歩くことで春への変化を感じることができる。姿の見えないうぐいすの鳴き声が響き、木の芽は緑っぽいような、赤っぽいような膨らみを見せ、離れて見ると木全体がぼんやり色づいている。春山は笑い、夏山は滴り、秋

          粟ヶ岳にて「山笑う」

          神事ってよくわからんよねって話(藤守の田遊び)

          3月17日。焼津市藤守にある大井八幡宮の「田遊び」を見にいった。田遊びは稲作の工程を模した神事で、豊作を願って毎年初春に行われる、らしい。ひょんなことで存在を知り、事前の調べもしないままに急ぎ車を走らせたわけだ。 神社の鳥居をくぐると焼きそば、じゃがバターのいい匂いがする。境内はそれほど広くはないが、お祭りらしく多くの人で賑わっていた。拝殿前には即席の舞台が作られ、舞台前には賽銭と書かれた大ぶりな木桶がでーんと置かれているのが印象的だった。 田遊びが初めて奉納されたのは平

          神事ってよくわからんよねって話(藤守の田遊び)

          絶景とハクモクレンのこと(岡部町、朝比奈川)

          早春の光に包まれた巨石の森公園(藤枝市岡部町)を歩いた。朝比奈川の流れは穏やかだが、ねずみ色に濁っている。川沿いを進み岡部若宮八幡宮を越えて左に曲がっていくと、ハイキングコースの看板が見えてきた。 有名な観光地でなくとも、絶景はある。階段を登り終えると同時に夕方のチャイムが鳴り響いた。山の日没は早く、17時を過ぎれば帰りの道が真っ暗になってしまうこともあるが、三月に入ってからは日一日と、日が長くなっていることを実感する。空気は冷たいが、やわらかな西日が早春の山肌を暖めていた

          絶景とハクモクレンのこと(岡部町、朝比奈川)

          農道とぼんやり礼賛

          田舎を歩けば見られる名もなき(ように思われる)山には、必ずといっていいほど「謎の獣道」がある。子どもの頃からこういった道に入るのが好きだった。道はほとんどの場合、畑に繋がっている。山の中にある畑といっても、たいていは車で登れる道が整備されているので、徒歩専用の農道はなかば放棄された状態だ。しかしその閉ざされた感じが、自分には好ましく思えた。 今でも折に触れては農道に入り、ぽっかり開けた畑をぼんやり眺める。何をするでもなく景色を見て、帰りの道が真っ暗になってしまうことも多々だ

          農道とぼんやり礼賛

          朝日山城址と朝日稲荷神社(散歩)

          久々の晴れ間をぬって、藤枝市仮宿にある朝日山城址の河津桜を見に行った。桜のある展望台へ行くまえに、朝日稲荷神社を参拝。木々に囲まれた真っ赤な鳥居と奥に続く薄暗い参道階段が、見事に外界との境界線を演出している。 つづら階段をしばらく上ると再び鳥居が見えてくる。鳥居と同じく拝殿も真っ赤だ。駐車場は小さく道中も決して楽ではない神社だが、建物が立派で手入れが行き届いていることに驚かされる。地元の人たちに大切にされているのだろう。 朝日稲荷神社の主祭神は倉稲魂命(うかのみたまのみこ

          朝日山城址と朝日稲荷神社(散歩)