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【奈良旅3日目④】山の辺の道、檜原神社

長岳寺を出てしばらく歩くと、でーんと巨大な森が見えてきた。周囲は茶色い水を貯めた広いお掘りで囲まれている。崇神(すじん)天皇陵だ。

崇神天皇陵(2024.4/12)

多少遠回りになっても古墳のまわりを歩いてみた。広い、大きい。上空から形を見ることができないのは残念だが、古墳作りが大規模なプロジェクトであったことが肌でわかる。

続けて景行天皇陵を横目に進みながら、大和三山が見渡せるというビューポイントに立ち寄った。大和三山とは香久山(かぐやま)、畝傍山(うねびやま)、耳成山(みみなしやま)を指す。美しい畝傍山を巡って、香久山と耳成山が喧嘩をしたという歌が有名だ。

大和三山ビューポイント(2024.4/12 )

その後も田畑と奈良の町を見ながらの道が続く。激しいアップダウンはないが、とにかく暑い。この日は風もなかったため、夏のような暑さに汗が止まらなかった。

少し広い道路を横切り軽く坂を登ると檜原(ひばら)神社に到着した。檜原神社は大神神社の摂社で、祭神は天照大神(あまてらすおおかみ)。崇神天皇の時代に宮中を離れて最初に天照大神を祀った場所なので、「元伊勢」と呼ばれ親しまれている。

時刻は15時半。気だるい西日がじっとりと、かつ柔らかく、空気をセピア色に染める時間だ。檜原神社の入口には木の柱にしめ縄が張られており、大神神社の拝殿前と同じ形態をしている。

参拝客は少なくなかったが境内は静かな雰囲気に満ちており、正面の柵向こうに見える三ツ鳥居が独特な存在感を放っていた。神社の鳥居にはいくつか種類があるが、三つの鳥居を横一列に重ねた様式は非常に珍しい。拝殿も本殿もなく、樹林の前に三ツ鳥居のみ。大神神社と類似点が多く、不思議な印象の神社だった。

檜原神社、三ツ鳥居(2024.4/12)

檜原神社を過ぎれば大神神社まではもうすぐだ。木々に囲まれた狭い道を進んでいくと、狭井(さい)神社の前に出た。そのまま大神神社を通り三輪駅まで歩く。

天理駅行きの電車の待ち時間は30分以上。駅前にはそれを見越したかのようにテラス席を備えた喫茶店兼お土産屋さんがこちらを誘っていた。アイスコーヒーを注文して椅子に腰掛ける。今回の旅の写真を見ようと思ったが、スマホのバッテリーは切れる寸前。コーヒーを流し込みながら、ぼーっと周辺の景色を眺めた。

奈良駅から長いアーケード街を抜けて、石上神宮に戻ってきた。時間は17時過ぎ。本当はこれから春日大社に向かう予定だったが、参拝時間は17時頃まで。残念だが今回は縁がなかったと思うことにした。

帰りの車の中で、今回の旅で生まれた新たな疑問や好奇心が頭を巡る。もうすでに「また奈良に行きたい」と思っている自分がいた。旅に下調べが必要かは各々の価値観によるだろう。ただ奈良に関していえば、知識は感性を邪魔しない。むしろ学べば学ぶほど楽しくなり、長い歴史の影を色濃く残す奈良の奥深さに魅了される。これは間違いないことだと思う。

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