第五十六番歌
「あらざらむこの世のほかの思ひ出にいまひとたびの逢ふこともがな」
和泉式部
もうじき私はこの世から去りますが、あの世への思い出に、もう一度あの人に会いたいのです。
As I will soon be gone,
let me take one last memory
of this world with me―
May I see you once more,
may I see you now?
『後拾遺集』(763)にこの歌が掲載されて
百人一首についての思い その57
第五十六番歌
「あらざらむこの世のほかの思ひ出にいまひとたびの逢ふこともがな」
和泉式部
もうじき私はこの世から去りますが、あの世への思い出に、もう一度あの人に会いたいのです。
As I will soon be gone,
let me take one last memory
of this world with me―
May I see you once more,
may I see you now?
『後拾遺集』(763)にこの歌が掲載
百人一首についての思い その56
第五十五番歌
「滝の音は絶えて久しくなりぬれど名こそ流れてなほ聞こえけれ」
大納言公任(きんとう)
今はもう枯れてしまった滝だけれど、滝の音色の素晴らしさは、今も世間に流れて聞こえています。
The waterfall
dried up
in the distant past
and makes
not a sound,
but its fame
flows on
and on―
and echoes
still
today.
まず、英訳を
百人一首についての思い その55
第五十四番歌
「忘れじのゆく末まではかたければ今日を限りの命ともがな」
儀同三司母(ぎどうさんしのはは)
「おまえのことをずっと忘れないよ」とおっしゃってくださいますが、先のことまでは分かりません。そうであるならば、いっそのこと幸せな今日を限りの命であって欲しい。
You promise you’ll never forget,
but to the end of time
is too long to ask,
So let me die today―
s
第五十三番歌
「嘆きつつひとり寝る夜の明くる間はいかにひさしきものとかは知る」
右大将道綱の母
嘆きながら一人で寝る夜の明けるまでが、どれだけ長く感じるものか、ご存じでしょうか。ご存じないですよね。
Someone like you
may never know
how long a night can be,
spent pining for a loved one
till it breaks at dawn.
日本三大美人とは、衣通姫、小野小町、
第五十二番歌
「明けぬれば暮るるものとは知りながらなほ恨めしき朝ぼらけかな」
藤原道信朝臣
夜が明けてもやがて日は暮れます。そうすれば、またあなた逢えると分かってはいても、夜明けが恨めしく思えるのです。
Though the sun has risen,
I know I can see you again
when it sets at dusk.
Yet even so, how I hate
this cold light of dawn.
好き
第五十一番歌
「かくとだにえやはいぶきのさしも草さしも知らじな燃ゆる思ひを」
藤原実方(さねかた)朝臣
これほどあなたのことを思っているのに、気持ちを伝えることができません。まるで伊吹山のもぐさみたいに燃え上がる私の思いを、あなたはご存じないのでしょうね。
Because my feelings
are too great to put into words,
my heart blazes like the moxa
of Mount Ibuki,
wi
第五十番歌
「君がため惜しからざりし命さへ長くもがなと思ひけるかな」 藤原義隆
君のためなら命さえ惜しくないと思いましたが、今は君のためにこそ、長生きしたいと思っています。
I thought I would give up my life
to hold you in my arms.
but after a night together,
I find myself wishing
that I could live forever.
『後拾遺集』(69
第四十九番歌
「御垣守衛士(えじ)のたく火の夜は燃え昼は消えつつものをこそ思へ」
大中臣能宣(よしのぶ)朝臣
皇居の諸門を警護する衛士たちの焚くかがり火が一晩中燃え、日中は消えることを繰り返しています。そのことを深く思っています。
This troubled heart of mine
is like the watch fire of the guards
of the palace gate―
It fades to embers by day,
but
第四十八番歌
「風をいたみ岩打つ波のおのれのみくだけてものを思ふころかな」
源重之(しげゆき)
強い風で岩に打ち寄せて砕け散る波のように、私だけが身も心も砕けるように思い悩むこの頃です。
Blown by the fierce winds
I am the waves that crash
upon your impervious rock.
Though my hearts shatters,
my love rages yet.
源重之は清和天皇の
第四十七番歌
「八重むぐら茂れる宿の寂しきに人こそ見えね秋は来にけり」
恵慶(えぎょう)法師
幾重にも蔓草が生い茂る、この荒廃した寂しい宿に、人はもう訪れないけれど、秋はやってくるのだなあ。
How lonely this villa
has become, overgrown
with goose grass weeds,
No one visits me –
only autumn comes.
『拾遺集』にこの歌が載っているが、詞書きには「河原院に
第四六番歌
「由良の門(と)を渡る舟人かぢを絶えゆくへもしらぬ恋の道かな」
曾禰好忠(そねのよしただ)
まるで由良川の河口で櫓をなくした小舟みたいな物で、どこへ行くかも分からない恋の道なのです。
Crossing the Straits of Yura
the boatman loses the rudder.
The boat is adrift,
not knowing where it goes.
Is the course of love lik
第四十五番歌
「あはれともいふべき人は思ほえで身のいたづらになりぬべきかな」
謙徳公
お気の毒と言うべき人は思い浮かびません。むなしく死んでいくだけです。
“I feel so sorry for you.”
No one comes to mind
who would say that to me,
so I will surely die alone
of a broken heart.
この人の名前は藤原伊尹(これまさ)であるが、死後正一位と
第四十四番歌
「逢ふことの絶えてしなくはなかなかに人をも身をも恨みざらまし」
中納言朝忠(あさただ)
男女の関係など世の中からなくなってしまえば、相手のことも自分のことも恨まずに済むのに。
If we had never met
I would not so much resent
your being cold to me
or the way
I love you so.
男女関係などなければ相手のことや自分のことを恨まずに済むのに、というほど
第四十三番歌
「逢ひ見てののちの心にくらぶれば昔はものを思はざりけり」
権中納言敦忠(あつただ)
あなたと深い仲になってからの熱い思いに比べれば、以前の恋心など、何も思っていないのとおなじだったなあ。
When I compare my heart
from before we met
to after we made love,
I know I had not yet grasped
the pain of loving you.
第三十八番歌
第四十二番歌
「契きなかたみに袖をしぼりつつ末の松山波越さじとは」
清原元輔(もとすけ)
末の松山は絶対に波が越えることはないと言われているように、二人は絶対に心変わりしないと、袖をぬらしながら固く誓い合ったよね。
Wringing tears from our sleeves,
did we not pledge never to part,
not even if the waves engulfed
the Mount of Forever―Gree