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インタビューライターのジレンマ〜解釈と創作の間〜【佐藤友美「書く仕事がしたい」を読んで】

『書く仕事がしたい』(佐藤友美、CCCメディアハウス)読む。

学ぶことがたくさんあったのだけど、中でもインタビューライターが必ず立ち止まる「どこまで相手の言葉を解釈(意訳)していいのだろう」問題の考察が刺さりました。

取材相手の言葉をそのまま並べるだけでは、AI文字起こしと同じ。
かと言って、憶測で独りよがりに言葉を選ぶと、ライターの「創作」になってしまう。

原稿を読んだ取材相手が「よくぞ私の考えを言語化してくれた」と感じるか、「その言葉は私のものではない」と違和感を覚えるかの違いは紙一重。
唯一の正解はなくて、毎回言葉の海に飛び込み探し続けるしかない。

「ライターの創作になるかどうかは、ライターがどれだけ取材相手の思考をトレースできるかにかかっている」という著者の言葉に膝を打ちました。

だから、取材中に相手の言葉を繰り返したり、あえて別の言葉で言い換えたりして、「今、私はあなたの思考に近づけていますか?」と確認することが大切だと思うのです。

細かい事実関係は後からでも調整できるけど、視点を近づける作業はできれば取材中に済ませておくほうが、記事の精度が上がります。

毎回一発勝負、聞き手としての器をためされるので緊張するけれど、インタビューイーと一緒に、「これまで意識していなかったぴったりの言葉」を探し当てることができた瞬間は最高にうれしいです。

そして「解釈と創作」の境界線を探すという作業は、AIがまだたどり着けていない領域なんじゃないかな、という気がします。

無数にある言葉の中から選ぶべき「たったひとつ」がその都度変わるので、最大公約数では計算しきれない。

人と人との会話は本当に奥が深く、興味が尽きないです。

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