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#読書感想文

本を読んで感じた気持ちや考えたことを、言葉にしてnoteに残してみませんか?おもしろかった本の感想や学びを「#読書感想文」で教えてください!

急上昇の記事一覧

『旅のラゴス』人の還る場所。|読書感想文

私たちが「還る」場所とは、どこなのだろうか。 「帰れる」場所はあれども「還る」場所は決まっていない。 旅に出るというのは、そんな「還る」場所を求めて、流浪の日々を過ごすことなのかもしれない。 1️⃣誰かの記憶に残り続けるラゴス本作の主人公ラゴスは、旅に取り憑かれている。 若い頃から各地を転々とし、著者・筒井康隆のあふれんばかりの想像力で描かれた架空の街並みや人々の生活を目の当たりにし、時にその文化に馴染み、そうして必ず次の旅への決意をたぎらせるような生粋の旅人だ。 ラゴス

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歳時記を旅する49〔麗か〕後*うららかやことりと離す吹き硝子 

磯村 光生 (平成九年作、『花扇』)  硝子吹きの仕事は江戸時代、宝永年間(1704~)には始まっていたと言われ、硝子師と呼ばれた。 文化年間の清閑主人『鴨村瑣記抄』には、「江戸にて硝子を吹き始めたるは、長島屋源之丞といへる者、初めて江戸に至り、吹出したる由、其子孫今に浅草に住して、長島屋半兵衛といふ由。…」と記されている。  硝子吹きで難しいのは、硝子の種を窯から管につけて出す、玉とりといわれるところだそうで、昔から玉取り三年、素地(形づくり)八年と言われているそうだ。  

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「手のひらの音符」藤岡陽子さん(読書感想文)(*ネタばれ注意)

いい話だった。 特殊なことはないのに 心に響いた。 金継ぎ素材倒れみたいな、 あるいはバトンのドラマ狙い のような設定はなし。(失敬!w) でも、人物が描き込まれている。 主人公、水樹(45才・独身・ デザイナー)の家族や、 その近所の人たちの話。 同じアパートに住む三兄弟 長男・正浩(優秀なしっかり者。 小6で、事故死)や、 次男・信也(水樹と同級生。45才 競輪選手になる。父親が競輪選手だった) や、三男・悠人(発達障害、実は天才) たち。 と、水樹の兄の徹たちと

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読書感想文『装幀のなかの絵』

アートディレクターという仕事を知ったのは、昔むかし働いていた店(日本の古布とアンティーク着物店)が本を出した時だった。 20年以上も前のこと。 この時一回だけの経験であり(私が関わったのはこの時のみ。店は以降も着物本を出している)現在とは違うだろう。 出版社の編集者、フリーのライター、カメラマン、そしてアートディレクターというメンバーが、本づくりのメンバーだった。 編集者は全体の構成を考え、スケジュールを組んだ。校正者や印刷所とのやりとり。 カメラマンは、スタジオで、

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ご恵贈いただいたご本&最近の読書

 日本はゴールデンウィークですね。忙しい4月でそれどころじゃない!(わかる〜わかりますとも〜)という方も多いことと思いますが、ほっとできる時間が取れますように。  最近仕事が大詰めにてヨロヨロしていましたが、その間にご恵贈いただいた本や注文した本が到着し(まだ色々来る♪)、やっと時間ができたのでぼちぼち読み始めたところ。  noteにて交流させていただいている夢酔藤山先生より、ご高著のご恵贈をいただきました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます!  『聖女の道標』(西多

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「ここには何もない」という「しるし」

space・空間・空白、sense・方向・意味、order・順序・序列 *「空白・区切り・余白」の捏造  蓮實重彥『フーコー・ドゥルーズ・デリダ』所収の「Ⅰ肖像画家の黒い欲望――ミシェル・フーコー『言葉と物』を読む」を読んでいて頭に浮ぶのは、英語の「space」と、その語義である「空間」と「空白」です。  簡単に言うと、 ・「空間」とは現実の立体に「ある」もの、または「感じられる」もの で、 ・「空白」とは平面上(たとえば紙面上や液晶の画面上)に「ある」と人が決めたもの

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永遠の今~「シッダールタ」ヘルマン・ヘッセ(改訂)

ヘッセは、詩と小説によって知られる20世紀前半のドイツ文学を代表する作家です。 「シッダールタ」(1922)は、あるインドの求道者が悟りの境地に達するまでの体験を描いた作品です。 ヘルマン・ヘッセ(1877- 1962 ドイツ・小説家、詩人) 様々な職に就きながら著述活動を行い、穏やかな人間の生き方を描いた作品を数多く残した。代表作は他に「車輪の下」(1906)「デミアン」(1919) 「シッダールタ」(1922)「荒野のおおかみ」(1927)など。1946年にノーベル

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【本の紹介】往復書簡『限界から始まる』(上野千鶴子・ 鈴木涼美 )

昨夜『金スマ』を見てしまいました。 「今は昭和か?」とタイムスリップするような内容でした。 しかし、これが令和の現実なのかも? 「令和の最強ママたれ大集結!ママのお悩み一刀両断SP」と銘打って放送されていたのですが、「ママのお悩み」のひとつにこんなのがありました。 夫に家事を手伝ってもらうにはどうすればよいでしょうか? もしかすると出演者に「手伝う、というのがそもそもアカンでしょ!」と言わせるために、番組の作成者が意図的に設定したものだったのかもしれません。 けれども、

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Osamu Dazai「HUMAN LOST」

別に漢字をローマ字で書いていることに特段の意味はないのだが、ちょっとカッコよかろうと思ってやってみた、恥ずかしければやめる。 会社に『二十世紀旗手』を持っていって、持って帰るのを忘れた。だからKindle Unlimitedで「HUMAN LOST」をダウンロードして読んだ。なんで忘れたのかといえば、防災訓練のドサクサで、机の中に置いてきた。 作品なのかアフォリズムなのか、もうわからない。パピナール中毒で入院している状況を映し出そうとしている風にも見える作品だが、まあ、と

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小説精読 少年の日の思い出5

ぼくがコムラサキを見せると、エーミールは20ペニヒの値打ちがあると言う。エーミールは、自分の価値観を持っていない。金の価値とは社会的な価値だ。自分以外の、その他大勢の欲望の価値だ。誰も道端の石ころに価値を求めない。このコムラサキは20ペニヒ出しても欲しいという人間が社会にいるということをエーミールは言っている。同時に、コムラサキを20ペニヒ以上出して欲しい人間は、いないとエーミールは言っている。20ペニヒ以上だすのなら、その欲望は他に行くと言っているのだ。 果たして、そうか

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デレラの読書録:雨宮昭一『占領と改革』(シリーズ日本近現代史第七巻)

敗戦後の連合国による占領と改革。 戦中と戦後の切断線を丁寧に読み解く本書。 戦前・戦中の日本は全くダメで、GHQの占領と改革で日本は良くなった、という素朴で単純なイメージを解体する。 あの頃、何が起きていたのか。 戦後改革について考える時に見過ごしがちな問いに著者は注意を促す。 その問いとは、GHQがいなくても進んだ改革があるのではないか、それは当然元々あった利害関係や集団が進めるはずだ、という問いである。 日本に元々あった四つの政治潮流の衝突、GHQと世界の情勢

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【気ままな読書日記】Audible 生きるための法医学 私へ届いた死者からの聲

怖い・怖い・怖い、の3K。 それでもきっと、誰かがやらねばならないお仕事。心からの敬意を。 101/200

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最近出会った素敵な本12選

最近(といっても、ここ半年ほどで)出会った本の中から、特に印象的だったものをレビュー形式で思い出しながらフワッと紹介します。 やはりエッセイが多めですが、詩集や短歌などの他ジャンルにも手を伸ばして色々読んでみました。 計12冊あるので、1冊/月ペースで丸1年間かけて読んでみるのもよいかも?? ✳︎ ✳︎ ●民藝雑論 民藝店『やわい屋』店主、朝倉圭一さんの思考や感情を通して、民藝と日常との接続点について理解が深まる。イベント会場でご本人は「大したことないZINEです

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スティーヴン・キング『書くことについて』が学びに満ちていたので全力で推したい。

初めて読んだのは、2020年の7月。 当時も当時なりに、実り多い読書ではありました。 しかし、noteの毎日更新を筆頭に、文書でのアウトプット量が格段に増えている今のほうが、読んでいて楽しかった。 再読の醍醐味とも言える、出会いなおすような喜びをもらえました。 (ちなみに再読のきっかけは、推しの「スティーヴン・キング好き!」の一言。2020年当時はこんな理由で再読するとは想像もしてなかったよ) 本書は、大まかに分けて 1.幼少期から現在までを語るエッセイ 2.書くことに

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存在しない小説の読書感想文:創作

『アンダースローガールとパンナコッタの決意』(鶏冠とんび) ※本記事はネタバレを含みます。  高校2年の夏に『ペンネの島とミトコン・ドリア味の嘘』を読んで以来の鶏冠体験でした。  本書『アンダースロー』は、『ペンネ』よりも読みやすかったと思うのですが、それは私の成長なのか、本作が単に平易なだけなのかは分かりません。  完全に文系人間の私。数学的な用語を出されると迷路にはまってしまいます。ところが不思議なことに鶏冠の作品内では数学の話が、大変カラフルに見えます。  高校の数

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なんで成瀬をうらやましく思うのか

本屋大賞「成瀬は天下を取りにいく」 数あるノミネート作品の中で唯一読んでいたのがこれでした。続編も買ってた。 ずっと前から近所の小さな本屋がこの本を推していて、手書きポップに惹かれて買った。何が書いてあったか忘れたけど、絶対成瀬の魅力が書いてあったんだと思う。 もはや有名だけども、この本の主人公の成瀬あかりちゃん(呼び捨てはアレかなと思ったけどなんて付けたらいいかわからない)が強烈なキャラクターなんですよね。 この表紙に描かれてるイラストが目力の強い美少女だから自然とこ

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シン・Apple製品超活用術2024 〜Apple教に布教せよ〜 【読書感想文】 信者の試練を乗り越えて

*ITについては毎週土曜日更新予定ですが、今週は1日早めに更新させていただきます。申し訳ありません。 ★★★★★ Amazonでレビューしたものです。 1.続編ですよ前回レビューしまいた、同じ筆者の Apple製品超活用術 2022秋ver〜アップル信者を成仏せよ〜 Apple信者による非常に論理的でない信仰の本でした。 その後、この短時間の間にApple製品の周囲の環境が変わったそうで、早くも続編が発行されました。 さて、続編の内容はいかがでしょうか? 2.目

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【読書記録】成瀬は天下を取りにいく

おすすめ度 ★★☆☆☆ 本屋大賞をとった話題作をたまたま借りられたので読んでみた。 可愛い表紙と「最高の主人公!」という帯に期待したのだけど、私にはイマイチ魅力がわからなかった。 本屋大賞受賞作様に真っ向から文句をつける勇気もない。でも何がいいのかよくわからない。わからない時は人に聞く。ということで、他の人の書評を読んでみることにした。 他の人の書評で書評を書くってどうなんだと自分でも思うけど、お許しいただきたい。 * まず、この小説の魅力は「軽さ」と「明るさ」にある

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【アイデアのつくり方】アイデアは天才の特権ではない

オススメ度(最大☆5つ) ☆☆☆☆ 〜アイデアは天才だけのものではない〜本当に30〜60分あれば読めてしまう薄くて短い本なのだが、「アイデアはどのように生まれるのか?」という疑問に対して、無駄なく簡潔に書かれている。 著者は名の知れた広告マンであり、主に広告のアイデアを生み出すためのプロセスとして書かれているのだが、その方法論はどんな分野にも当てはまるだろう。 まずそもそも「アイデア」とは何か。 まず、本書ではアイデアを「もともとあるもの同士を組み合わせたもの」と定義

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又吉直樹「火花」読書感想文

読んでみると、おもしろいの一言しか感想が浮かばない。 それでは読書感想文にならないので、もっと考えてみた。 まずは文章のテンポがいい。 セリフがアクセントになっていて、読んでいて気持ちがいい。 話すことを仕事としている人の成せる技なのか。 148ページという短い物語の中に、20歳から32歳までの12年間の場面が、流れるよう書かれて収まっている。 あとはなんだろう。 以外なおもしろさ、というのはある。 ギャップというか、落差というか。 話題づくりの、陳腐なタレント本かと

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