武藤吐夢
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感想 家族解散まで千キロメートル 浅倉 秋成 仏像の盗難事件発生、神主が返したら罪に問わないと言っている。倉庫に仏像が・・・。父のせいに違いない。これは仏像を家族みんなで返しに行く物語です。家族とは何かを問う作品です。
引っ越しまで数日という日、倉庫から仏像が見つかる。 それは東北で盗難事件になり、今まさにニュースになっているそれだった。 神主は今日中に返還したら罪に問わないとテレビで主張している。 犯人は父に違いないと家族みんな思う。 というのも、この家の父はまともに働かない、ダメ人間な上、息子たちが子供の時に、近所のおもちゃ屋の女店主と、まさに仏像が見つかった倉庫で浮気をしているのを娘に目撃されているのだ。 さらに、父は、そのおもちゃ屋の名物人形の盗みまでしていた過去がある。 この物
感想 闇に願いを クリスティーナ・スーントーンヴァット〈闇に生まれた者は、かならず闇に帰る〉。罪人の子は罪人という世界で、刑務所で生まれた彼らはどう生きるのか?。
ニューベリー賞候補作となったファンタジー作品です。 「刑務所で生まれた」というだけで罪人にされてしまうポンたち。 彼は法律により、13歳になるその日まで、刑務所を出ることができません。 彼は何の罪をおかしたのでしょう? この国を統治する総督は言います。 〈闇に生まれた者は、かならず闇に帰る〉。 罪人の子は必ず悪いことをする。 この国では、この総督が光を与えてくれました。 それは魔法の光です。 それは水や空気のような必需品なのです。 ポンが刑務所を脱走してから物語
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感想 私たちの世代は 瀬尾まいこ コロナの時代に小学生だった二人の少女の物語と、二人の未来の物語。発想はいいが、社会問題をパッチワークみたいにつなぎ合わせただけで迫ってくるものがなかったように思う。
まるで血液型占いのように、世代によって、その性格を評されることがある。 昭和時代生まれは努力家で、欲望にも貪欲とか、平成生まれは、あきらめを悟っていて欲がないとか、Z世代は、コスパ重視で努力なんてするのはバカと考えているとか、そういう雛型を作って人を鋳型にはめ込もうとする傾向が僕は嫌いだ。 だが、今回のパンデミックは、もしかすると子供たちに深刻な傷を作ったのかもしれないと僕は感じています。 本書は、コロナの時代に小学生だった二人の少女の様子と、その子たちの未来について書いて
感想 あいにくあんたのためじゃない 柚木麻子 切り口が斬新、展開も読めない。めんや 評論家おことわりという短編が楽しかった。
独特の切り口の短編集。 もちろん、あたりとハズレがありました。 当たりがとんでもなく面白かった。 おすすめです。 パティオ8 という作品はコロナ禍の閉そく感が出てた。 みんなリモートワークしているので、子供が中庭で遊ぶとうるさいという人が出てくる。 昼に外国のクライアントと商談があるから静かにさせてということです。 それにむかついた主婦たちが、シスターフッド的に戦うという話し。 それにしても、男がむかつくという理由で別の商品を、そのクライアントに売るという発想が強烈でし
感想 人は見た目が9割 竹内 一郎 相手に自分の意思を伝達する手段として言葉が一番有効だと僕は考えていたが、本書を読み少し考え方が変化した。
本書は、数年前にベストセラーになった新書です。 タイトルを見ると、ルッキズムの話しかと思うのですが、そうではなかった。 人が誰かに自分の意思を伝達する場合、その手段として言語が一番有効だと僕のような言葉の力を知っている人間は思うのですが、本書ではそうではないということが示されています。 コルバート・アレービン博士の、ある実験結果を紹介しています。 人が他人から受け取る情報の割合についての実験です。 それによると、顔からが55%、声からが38%。 話す内容が7%。 つ
感想 ブラウン神父の童心 G.K.チェスタトン ミステリーの古典と言われている作品だが、さすがに古すぎる。見えない男という短編は良かった。
ミステリーの古典作品ということですが、さすがに古いし、謎解きというのか設定がちょっと無理がある作品もあります。 最初の作品である青い十字架はあほらしいが面白かった。 G・K・チェスタトン. ブラウン神父の童心 (創元推理文庫) (p.17) 塩と砂糖が入れ替わっていた。 神父二人の仕業らしい。 それを追いかけると、犯人とブラウン神父に出くわす その悪戯の意味が伏線回収されて・・・・という展開です。 たいした作品ではありません。 でも、発想は楽しい。 G・K・チェスタト
感想 幻夏 太田愛 子供の時に発生した少年の失踪と、今、目の前で起きている少女誘拐事件が繋がっている。冤罪がモチーフの骨太ミステリーです。
「自白強要による冤罪」がモチーフです。 昔はよくあったみたいですね。 著者の処女作犯罪者で活躍した、あの三人が、また、難事件に立ち向かいます。 あの二人が探偵事務所をしています。そこに、ある女性が息子の行方を捜してくれと依頼してくるのですが、その事件は23年も前に発生した少年の失踪事件だった。 その少年が、刑事のあの人の親友。 その事件が、今、まさに発生している少女誘拐事件とリンクしていて 過去の事件では、少年の失踪した日、刑務所から出ていた少年の父も死んでいた その父は
感想 犯罪者上下 太田 愛 無差別殺人事件の生き残りが、犯人は違う人じゃないのかという疑問を抱いたところから始まるところに本作の発想の新しさがある。
今までに読んだミステリーと少し違う何かが、この作品にはあると感じました。 作者は、劇団の脚本、テレビの脚本の出身者らしい。 ウキペディアによると、テレビドラマ『相棒』1997年に『ウルトラマンティガ』などの作品も書いているらしい。 本作は、少し通常のミステリー作家と比べると違う感じがした。 それは悪い意味ではなく新鮮という意味です。 無差別殺人事件が発生した。 犯人は薬中毒。すでに死んでいた。 しかし、一人生き残った青年は、ちよっとおかしいと刑事に話す 彼は誰かに生命を
感想 スイス時計の謎 有栖川 有栖 表題作のスイス時計の謎は、ミステリーファン必読の優れた本格ミステリーでした。時計一つでここまでやれるというのがすごい。
有栖川有栖さんの作品で火村が出てくる作品群はかなり面白い。 その頭脳のキレは、アガサクリスティーの生み出した天才ポアロに匹敵します。 悪魔的とも言える推理に驚くばかりでした。 あるYの悲劇は、クィーンのYの悲劇風でした。 ダイイングメッセージが鍵です。 次の女性彫刻家の首という作品は、何故に、犯人は被害者の生首を持ち帰ったのかという謎です。 最後まで読めば納得しますが、冷静に考えると変です。 シャイロックの密室という作品のシャイロックは、あのシェークスピアの名作と関係が