武藤吐夢
最近の記事
- 固定された記事
感想 西巷説百物語 京極 夏彦 靄船の林蔵がメインの短編集。関西の怪異にからめた短編ミステリー小説。完成度がこのシリーズは高く、今回はとくに鍛冶が嬶の話しが秀逸だった。
舞台が関西になり、言葉も上方の言葉なので、いつもとは少し雰囲気が違う。 怪異にからめた短編ミステリー。 靄船の林蔵をメインにしたスピンオフ。 今回はとくに鍛冶が嬶の話しが秀逸だった。 本人には罪悪感がないというのが怖い。 やっていることはかなり残虐。 鍛冶屋が依頼人。 かなりの名人であるようだ。 女房が笑わなくなった。 怪異に取りつかれていると悩んでいる。 この男は常に女房のことを考えている。彼女の幸せだけを考えている。 だから、女房に害をなす乞食や親戚、友達などを排
感想 日本怪異幽霊事典 朝里樹 これすごい。書かれている事例がすごく多いのだがわかりやすく、これ一冊で古代、中世、近世、近代、現在の怪異の変遷がわかる形になっている。面白かったのは読んでいて、幽霊という見方が昔と今では変化している点だった。
本書は辞典の形をとっていて、さらに古代、中世、近世、近代、現代に分類されています。 その意図は、たぶん、時代による日本人の怪異についてのとらえ方の変化を身をもって読者に体験させようとしていたのではないかと思われます。 幽霊という言葉のとらえ方ですが、古代の平安時代の怨霊は、だいたい偉い人たちでした。 崇徳上皇や菅原道真などの高級官僚が不遇を怒り怨霊となったのです。 疫病をまき散らすなどの脅威でした。 そのため国家事業として祀ったのです。 中世の鎌倉などの武家社会になると
- 固定された記事
マガジン
記事
感想 シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱 高殿 円 『シャーロック・ホームズ』シリーズをリスペクトした作品、キャラはいいし面白いがミステリーとしては微妙です。
ホームズをリスペクトしているのはわかる。 現在に時代を移し、設定を女にしたのも面白いが、少しふざけすぎているし、ミステリーとしての質が軽視されているのも問題に感じた。 楽しいのは楽しい。だから、悪くはないが、殺人事件のトリックがあほすぎる。 タイトルは、緋色の憂鬱 だが、血色の毒入りタンポン事件でいいように感じる。 本書には、そのほうがお似合いです。 シャーリーホームズは心臓病で最先端の技術で生かされている。 そこにモリアーティー教授が関与しているのが面白い。モリアーテ
感想 となりのナースエイド 知念 実希人面白かったのだが、なんかバタバタしすぎていて、最後の宗教の奴らとのカーチェイスはアクション映画だつた。
色んな意味で詰め込み過ぎ、アクションあり、ミステリーあり、医療アリ。 よくわからないが、面白かったのだからいいのか。 最近の知念さんは少し迷走しているような気がします。 本作はテレビドラマ化もされたようですが、極めてエンタメ要素が強い作品。 ナースエイドという看護補助の女性が主人公。 わけありの元外科医です。 彼女のマンションの隣りに住む外科医竜崎は王様キャラ。この二人の漫才のような掛け合いが楽しい。 一番の盛り上がりは竜崎の知り合いの少女の患者が手術しないと死ぬとい
感想 呪詛を受信しました 上田 春雨 死んだ人から呪詛のメッセージが届く。すると、その人も死ぬ。主人公が腹黒。まったく共感できないのに、ストーリーは魅力的。
こんなダークな探偵は見たことがない。 援助交際をしている家庭に難ありの人間不信の少女。ボイスレコーダーを常に持ち歩き証拠をおさえることで自己防衛をしている。 自分の利益しか考えず、人との関係は打算的でドライ。そのくせ寂しがり屋。 犯人はすぐにわかります。 その人しかいません。 問題はそれが罪に問われるかどうかでした。 死者から届く 死ね という呪詛の二文字。 受け取った人は動揺します。 そして、不審死をします。 その死んだ子が、次の人に呪詛のメッセージを。 そして、次も
感想 夢を売る男 百田 尚樹 自費出版ビジネスの是非について問うた話し、それは悪徳な金儲けなのか、それとも夢を叶えるための仕事なのか?。
本が売れない、書店が潰れているという話しを、東日本の震災あたりからよく聞くようになった。 よく通っていた地元書店も閉店した。電車の中で本を読んでいる人をほとんど見かけなくなった。 本離れはかなり深刻です。 本書は、そんな時代に産まれた新ビジネス。 自費出版の裏側に肉薄した物語だ。 主人公は、丸栄社の敏腕編集者牛河原という中年男だ。 最初、僕はこいつは詐欺師だと思った。 しかし、最後まで読むとそうではない。 タイトルの夢を売る男。そういう人なのだと感じた。 彼はこういう
感想 稲盛和夫明日からすぐ役立つ15の言葉 大田 嘉仁 伝説の経営者稲森和夫氏の残した言葉を元部下が思い入れたっぷりに解説した本です。
少し感覚が古くないかと感じた。 稲盛さんはすごい人だ、しかしリスペクト過剰で自分の意見をそれに重ね合わせた本書は本当に稲盛さんの生の思想なのかと疑いたくもなる。 例えば、最初の七味の瓶の話し、突然稲盛さんから「なぜ、おれに七味唐辛子を渡さないんだ!」と怒鳴られた話しです。 それを著者は、自分が悪い。稲盛さんの気持ちを汲むべきだったみたいに話しを展開している。 自分の中に謙虚さが足りないとか、他人を思いやる気持ちが欠如していたとか、そういう感情が大切だつたとか話しを美化してい
感想 新章神様のカルテ 夏川 草介 舞台が大学病院に移ります。個性的なパン屋というあだ名の准教授のキャラが際立っていました。
新章、舞台が大学病院に移ります。 だから新しい章なのです。 当然、今までとは立場が違う。組織が大きいぶん、それだけ思うようにはなりません。 組織の歯車、中間管理職になるのです。 パン屋というあだ名の准教授のキャラが秀逸でした。 彼は大学の人的物的な資源をパンにたとえて、その配分が大切というのです。 ある患者を助けるため、ある患者は見捨てるという考え方ですね。 当然、一止はそんなへんてこな理屈を受け入れられない。彼の部下たちも反発します。 一止たちは、目の前の患者に全力投
感想 アフターダーク 村上 春樹 まるでフランス映画を見ているみたいでした。会話だけで、そこにいない姉の輪郭を描き出す手法は、かなり実験的。回想シーンばかりの映画みたい。
本書の特徴は二つある。 時間軸が限定されている点と、会話が多いことです。 午後11時56から朝の7時くらいまでを描いた物語です。 マリとエリという姉妹がいます。 エリは家で寝ています。それをカメラで盗撮し、それを実況中継しているような不思議な視線と 深夜、町を彷徨い歩く妹のマイの視線が同時進行します。 深夜営業のファミリーレストランでマリは時間を潰していた。 たぶん終電を逃したのだと思う。 そこに姉の知り合いらしい。昔、一度だけ姉とその恋人と彼とマイの四人でプールに行