武藤吐夢
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感想 ヒポクラテスの憂鬱 中山七里 ヒポクラテスシリーズ第二弾。今回はコレクターという男の存在が重要になる。キャラ設定が面白い。今回は、死体の吊るしが気になった。いくら捜査のためとはいえ、そんなことをしていいのかと考えてしまう。
シリーズ第二弾。 あいかわらずキャラがいい。だからテンポが良くなり物語全体が面白くなる。 ちょっと個性が強すぎですよね。 今回は、コレクターの存在が大切になる。 コレクターは事件性がないと解剖されない案件に、何かあるとネット上で指摘する人物だ。 警察が動き、遺体は解剖される。そして、それが事件であったとわかるパターンが続く。 二巻目で、こういう変化球を投入することで、物語全体の面白みが増えた気がする。 それにしても、あの遺体を吊るした場面。 いくら捜査のためといっても
感想 ヒポクラテスの誓い 中山七里 舞台は法医学教室、死体の解剖という手段を使う謎解きは手垢がついているのだが、キャラが良くて引き込まれる。シリーズ第一作品。
舞台は法医学教室。 死体の解剖をして死因を特定する部署ですが、そこの教授、准教授、新人の三人のキャラが魅力的。特に、毒舌の教授の俺様キャラが作品をけん引します。 短編集なので一話完結。 しかし、最後にびっくりする展開が待ち受けています。 こういう癖のある王様キャラの教授ですから、何かと追い詰められます。 毎回、新人さんはやきもきさせられます。 そして、見事に教授の思うままの結果になるというパターンです。 どんな怪事件も教授は解決するのです。 教授は内科だった新人に辛辣
感想 CHANCEチャンス文庫版 犬飼ターボ 小説形式の自己啓発本です。具体的に事業を起こし成功するまでのことが書かれています。
小説形式の自己啓発本です。 こういう本では、夢をかなえるゾウシリーズが有名ですが、本書は具体的に事業を起こし成功するまでのことが書かれています。 内容はわかりやすく問題はないのですが、整体はいいのですが、サプリはどうかなと感じます。色んなことを考えました。ツッコミどころもあるにはあります。 ということで、主人公は整体の医院を開業します。三か月学校に通うだけで免許がとれるのも驚きましたが、何か胡散臭さも感じました。 さらに、赤字解消のため、痩せるという高額サプリの販売もしま
感想 プレゼントでできている 矢部 太郎プレゼントとして貰ったモノは、たしかに捨てられない。その人の気持ちを捨てるみたいだから・・・。
お笑い芸人である役者の矢部さんのコミックエッセイです。 漫画です。 一時間で読めます。 それにしては内容が濃くて、読後感は良い。 ただし絵はあまり上手くない。 独特の優しいタッチです。 プレゼントとして貰ったモノは、たしかに捨てられない。その人の気持ちを捨てるみたいだから・・・ って感覚は共感できます。 矢部さんの家にある絨毯の話しから、それをプレゼントしてくれた仕事で世話になったモンゴル人の家族の話しになるのですが、そのエピソードが楽しい。 そこには矢部さんの視線
感想 トータル・リコール (ディック短篇傑作選) フィリップ・K・ディック 古い作品なのにまったく光を失っていない一番星みたいなSF作品群。
友達に、ディックを読まないなら、今後一切、お前はSFを語るなと言われた。 で、彼のアドバイスにのっとり、読みやすいと言われた短編から入りました。 いやいや、とても面白かった。 びっくりしました。その発想力に。 半世紀も前に書かれた作品とは思えないほどワクワクしました。 映画化されている作品も多く、この短編集では、トータル・リコールとマイノリティ・リポートがあります。 トータル・リコールは、オチが秀逸です。 映画に比べると地味ですが、かなり楽しめる。 マイノリティ・リ
感想 メインテーマは殺人 アンソニー・ホロヴィッツ 老婦人は自分の葬儀を申し込んだその日、何者かに絞殺されてしまった。ラストで一気に伏線回収。
ミステリー小説の中には、意図的に印象操作をしてみたり、卑怯な手口で読者に判断材料を隠すケースが少なくない。 本書は、そういうことは一切なかった。 探偵はホーソーンという変人だ。元刑事で、今も警察のために働いている。 助手に任命されたのが、本書の作者であるホロヴィッツだ。 ホロヴィッツは、この事件の顛末を小説にして発表することになっている。 ホーソーンは、最初に言う。 できるだけ正直にすべてを記述してくれと。 つまり、騙しや印象操作を禁じたのだ。 この態度はとても読
感想 BIGTHINGSどデカイことを成し遂げたヤツらはなにをしたのか? V・フリウビヤ 大規模プロジェクトはどうして予算超過するのかの謎を解説したのが本書、事例が多く丁寧に書かれています。
大阪万博の追加費用が膨大で驚くばかりなのですが、世界のこういう大規模プロジェクトは、ほぼ、すべて、予算が膨張しているとのことです。その原因や構造を専門家が解説したのが本書です。事例が多くなかなか面白い内容になっていました。 最初に大切なこと、本書の言いたいことを書きます。 大阪万博のような大規模プロジェクトは期限があります。 だから、構想数十年というわけにはいかない。 十分に考えこまれる前に建設に入るという杜撰な計画が問題なのです。 たいていの大規模プロジェクトはそうな
感想 家族解散まで千キロメートル 浅倉 秋成 仏像の盗難事件発生、神主が返したら罪に問わないと言っている。倉庫に仏像が・・・。父のせいに違いない。これは仏像を家族みんなで返しに行く物語です。家族とは何かを問う作品です。
引っ越しまで数日という日、倉庫から仏像が見つかる。 それは東北で盗難事件になり、今まさにニュースになっているそれだった。 神主は今日中に返還したら罪に問わないとテレビで主張している。 犯人は父に違いないと家族みんな思う。 というのも、この家の父はまともに働かない、ダメ人間な上、息子たちが子供の時に、近所のおもちゃ屋の女店主と、まさに仏像が見つかった倉庫で浮気をしているのを娘に目撃されているのだ。 さらに、父は、そのおもちゃ屋の名物人形の盗みまでしていた過去がある。 この物
感想 闇に願いを クリスティーナ・スーントーンヴァット〈闇に生まれた者は、かならず闇に帰る〉。罪人の子は罪人という世界で、刑務所で生まれた彼らはどう生きるのか?。
ニューベリー賞候補作となったファンタジー作品です。 「刑務所で生まれた」というだけで罪人にされてしまうポンたち。 彼は法律により、13歳になるその日まで、刑務所を出ることができません。 彼は何の罪をおかしたのでしょう? この国を統治する総督は言います。 〈闇に生まれた者は、かならず闇に帰る〉。 罪人の子は必ず悪いことをする。 この国では、この総督が光を与えてくれました。 それは魔法の光です。 それは水や空気のような必需品なのです。 ポンが刑務所を脱走してから物語
感想 私たちの世代は 瀬尾まいこ コロナの時代に小学生だった二人の少女の物語と、二人の未来の物語。発想はいいが、社会問題をパッチワークみたいにつなぎ合わせただけで迫ってくるものがなかったように思う。
まるで血液型占いのように、世代によって、その性格を評されることがある。 昭和時代生まれは努力家で、欲望にも貪欲とか、平成生まれは、あきらめを悟っていて欲がないとか、Z世代は、コスパ重視で努力なんてするのはバカと考えているとか、そういう雛型を作って人を鋳型にはめ込もうとする傾向が僕は嫌いだ。 だが、今回のパンデミックは、もしかすると子供たちに深刻な傷を作ったのかもしれないと僕は感じています。 本書は、コロナの時代に小学生だった二人の少女の様子と、その子たちの未来について書いて