武藤吐夢
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感想 二木先生 夏木 志朋 ペドフィリア(小児性愛)の先生と他人とは何か違う変わり者の生徒の濃密な関係性がとても好感が持てます。
子供の時に変態に悪戯されトラウマになり大人になってから事件を起こすという話しはよくありますが、こういうペドフィリア(小児性愛)の先生が生徒との間に生じた友情を描く物語は斬新です。 広一は高校生。みんなとは何かが違う。変な奴と思われている。 そんな彼が、たまたま二木先生が漫画家を兼業していることに気づく。 小児性愛を描いた変態のような漫画だ。 当然、そんなものは書店で高校生は買えない。だから万引きしそれがバレ先生が呼ばれる。 そこから、俺は先生の秘密を知っている・・・とい
感想 銀座四宝堂文房具店 上田 健次 創業は天保五年、地下には古い活版印刷機まであるという知る人ぞ知る名店銀座四宝堂。その文具店に来る客の物語。短編集。
号泣もの・・・という噂さだつたが、これでは泣けない。 本書は短編集だ。 本書を一言で表現するなら優しいということになるでしょう。 心の芯の辺りからポカポカ温かくなる作品です。号泣とか感動ではなく、僕は癒し系だと感じました。 創業は天保五年、地下には古い活版印刷機まであるという知る人ぞ知る名店銀座四宝堂。 その文具店に来る客の物語です。 たんたんと進行していく物語が中途を超えるとだんだん魅力を加算していく。人の優しさがそこには描かれていた。 最初の万年筆の祖母の愛情の話し
感想 琥珀の夏 辻村 深月 著者は、子供の葛藤や苦悩を描くのが上手だなと感じた。宗教二世という悲劇は見過ごせないことである。
主人公の法子は弁護士だ。 昔、夏になると林間学校に通っていた。そこは後に、宗教が経営母体だったとわかる。 その施設跡で白骨死体が見つかった。 法子は、昔の知り合いである宗教二世の親友の弁護をすることになる。 私が殺しました。 昔の親友はそう言っているというのだ。 辻村さんは子供の世界の葛藤や苦悩を描くのが上手い。 だから惹きつけられる。 法子が夏の合宿で体験する子供の時の経験が本書の核となるが、その記述が生き生きしている。 美夏という宗教二世の少女との交流が実に爽やかに
感想 暗殺 柴田 哲孝 元総理暗殺という実際の事件を陰謀説にもとずき再構築したフィクション。リアリティに欠ける内容でゴルゴ13のようなスナイパーが体内で溶ける弾丸で殺害したというエンタメ。
実話をべースにした物語だが、陰謀論を採用しているのでリアリティに欠ける内容。 犯人にされた男が自作の銃を作成し試しうちをする描写や、ゴルゴ13みたいな謎のスナイパーが体内で消える弾丸を使って選挙の応援に来ていた元総理を暗殺するシーンの描写はなかなか良かった。 だが、背後にいる元総理と対立する派閥の代議士やら、警察、自衛隊がタッグを組み、真相を闇に葬るというのは、いくら何でも不可能だと思う。 それに、この韓国系の宗教団体と元総理がどうのこうのという話しと、それに対立する派閥
感想 変な家2〜11の間取り図〜 雨穴 前作に比べると明らかに弱い。11の変な間取りの家が紹介される。時代もまちまちなのだが、これが推理の場面ですべて繋がるのが本書の魅力です。
11の間取りの変な家が紹介される。 時代もまちまちなのだが、それが推理へんで繋がるというのが面白かった。 しかし、複雑なので物語のラインがごちゃごちゃするし、最後はきれいに着地していいのだが、結局、何かのパズルを完成させたくらいの達成感というのか満足感しか得られない。 好きな謎解きは糸電話の話しだ。 どこから父はそれをしていたのか。 隣の家の火事との関係は?。 この謎はなかなか興味深かった。 ミツコちゃんの悲しすぎる事実も興味深い。 てっきりトイレの扉が関係していると思っ
感想 N 道尾秀介 読む順番で印象が変わるという設定の短編集。たしかに、ところどころで繋がっていたのだが、これ必要なのというレベル。短編もミステリー形式だが、道尾作品にしては凡庸で特別に面白かったという印象はなかった。
順番通りに読んでみた。 読む順番によって印象が変わるという設定らしい。 短編集。 それほど楽しいとは感じなかった。こういう設定だし評判も良かったので期待値が高かったというのもあるががっかりした。 確かに繋がっている。しかし、それがどうだというのだ。 そのレベルの設定でした。 別の順番で読むと多少は違うのかもしれないが、僕の読んだ順番ではダメだった。 僕はリズムで読むタイプで読むのが早いので大切なことに気づかないまま読了してしまつたのかもしれない。 落ちない魔球と鳥とい
感想 シャドウ 道尾 秀介 まさかのどんでん返し、ラストで一気に伏線回収。しかし、大人の登場人物の大半が精神に病気があるという設定はどうなんだ。
読んでてイライラした。 すごく胸糞悪い作品だった。 だが、ラストでどんでん返しがあり、伏線も見事に一気に回収されるという爽快さは気持ち良い。 胸糞悪さの原因は、メインの登場人物の大半が何らかの精神的な病にかかっているからだった。 こんなことってあるのか。 主人公の少年の父は精神の病にかかっていた。 母は病気で死亡。 少女の父も精神の病にかかっていた。少年の父とは親友。 彼女の母は自殺。これも精神に何か・・・。 それから犯人。 すべての元凶の人、これは精神異常者だとし
感想 透明カメレオン 道尾 秀介 雰囲気がカラスの親指に似ていたので嫌いじゃないが、どうしても比較してしまい、劣化版だなと感じてしまった。
この作品について僕が低評価なのは理由があります。 本書の雰囲気が、道尾作品の中でもとくにすぐれているカラスの親指とその続編に類似していたからです。 あの傑作と比較すると、どうしてもがっかりする。 何だこりゃ、劣化版かよという思いがよぎる。 バーIFには、訳アリの年齢も性別も違う常連さんたちがいる。 その中に有名なラジオのMCもいた。 彼らは、店にたまたま現れた不思議な若い女に犯罪とおぼしきものに巻き込まれるという話しだ。 墓地での寸劇は、いかにも道尾さんらしいし、最後のバ
感想 777トリプルセブン 伊坂 幸太郎 殺し屋シリーズ最新作。前作は傑作で新幹線でしたが、今回はホテルが舞台。個性的な殺し屋が集結し殺しあいになる話し。
超高級ホテルの一室にプレゼントを届けるという「簡単かつ安全な仕事」のはずだったのに・・・。 殺し屋シリーズ最新作。 殺し屋天道虫は、また、やっかいごとに巻き込まれます。 似顔絵を届けたのですが、その人は絵と別人、さらに、彼に襲い掛かってくる。 で、無意識に殺してしまいます。 その男は殺し屋でした。 それも良い方の陣営。 記憶力抜群の紙野という女性が拉致されようとしています。 吹き矢を扱う美男美女の6人がやってくる。 そんな紙野を助ける年寄りの殺し屋の女性、彼女の手助けを
感想 決壊上下 平野 啓一郎 この世界に対する悪意のような感情が、塊となり無理やり喉に押し込んできたみたいな気味の悪さを感じた。
著者は、この作品を描いた時、本当にまともな精神状態だったのだろうかと疑いたくなるような、それほどに世界を嫌悪している。人に絶望しているような作品に感じた。 平野さんには、分人という考えがあります。 それが、この作品にも見てとれた。 対人関係ごとに見せる複数の顔が、すべて「本当の自分」「ありのままの自分」である。 と平野さんは言っています。 それは身体を考えるとわかりやすく、人の細胞は常に新陳代謝を繰り返し数年もすると元の細胞はどこにも残っていなかったりする 精神も同じで
感想 キュレーターの殺人 M W クレイヴン 物語が進行していくにつれて、作品の全体像が変化していった。三作中一番の出来。
このシリーズは間違いなく面白い 海外ミステリーは登場人物が多く複雑で筋を追うのがやっとになることが多いのですが このシリーズは、わかりやすく、それでいてミステリーとしても魅力があるので好きです その魅力の核は、ワシントン・ポー刑事のキャラの濃厚さだと思われる 人間の切断された指が街のあちこちで発見される という事件が発生する クリスマスのプレゼントとして用意されたマグカップの中に入れているとか、かなり悪趣味でインパクトもある。 現場には#BSC6という謎めいた文字列が残さ
感想 ブラックサマーの殺人 M W クレイヴン ワシントン・ポーシリーズ第二弾。前作と比較すると少し落ちるが面白いミステリーです。
ワシントン・ポーシリーズの第二作 このシリーズは、彼と仲間の二人の女性の絡みが魅力的 ポーが昔、逮捕した娘を殺した料理人の男が無実かもしれないとわかった 死んだはずの娘が現れた 容姿は変化していたが、DNAが一致しているという その娘が消えた すると、地元警察はポーを疑いだす 今回は、現在の時間軸と、過去の時間軸の二つの事件が交わってきます すべては、過去のある事件が発端となり・・・ ミステリーなので詳しくは説明できませんが、かなり面白いです しかし、DNA一致のトリ