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2024年9月の読書日記 

読んだ本の数:25
読んだページ数:11113

9月は連休もあり、たくさん読めた。
御子柴弁護士シリーズは収穫だった。おすすめです。

贖罪の奏鳴曲 御子柴礼司 (講談社文庫)


ワシントン・ポーのシリーズもミステリーとしては、かなり骨太でレベルが高かった。
こちらもおすすめです。

平野さんの 決壊(上下)合本版(新潮文庫) は秀逸だった。
これもおすすめです。

時代ものでは、鎌倉時代を描いた 新装版 炎環 (文春文庫) (文春文庫 な 2-50) がすばらしい。

新刊では、明治時代の法廷の雰囲気が出ている 明治殺人法廷 をおすすめしたい。


以下。読んだ本の感想。



贖罪の奏鳴曲 (講談社文庫 な 91-1)感想
中山さんの作品で今まで読んだ中で一番面白かった。主人公の御子柴弁護士がてっきり極悪と思っていたら、事件が進行するにつれて、その真の姿が見えてくるのが面白かった。とくに、法廷でのやり取りはかな面白かった。ミステリーとしても、かなり上出来た゛ったのではと思います。
読了日:09月01日 著者:中山 七里

追憶の夜想曲 (講談社文庫 な 91-2)感想
最後の結末に鳥肌がたった。悪人にしか思えなかった弁護士の真意は凄まじい正義、償い。どんな人間も反省しそこから出直せるという考えは共感できる。それにしても、これはよく出来ているミステリー作品だった。これで、この弁護士は終わりなのだと思うが、続編があるということは続くのか。死体配達人という凶悪犯罪に身を染めた彼の正義や反省が心地よい。
読了日:09月02日 著者:中山 七里

恩讐の鎮魂曲 (講談社文庫 な 91-3)感想
シリーズ3作目。施設での介護士殺害事件。犯人は入所者の年寄り。容疑者は御子柴弁護士が入所していた少年院の教官。このスリリングな展開は最高級のエンタメでした。容疑者が最大の弁護士の敵というのがイライラさせられる。非協力的な依頼人には、彼なりのポリシーがある。罪をおかしたのだから、その罪はきちんと償わないといけない。だから、弁護士のやることなすこと邪魔をしてくる。こういう依頼人だと裁判も難しい。そこが本書の魅力だと思う。
読了日:09月03日 著者:中山 七里

悪徳の輪舞曲 (講談社文庫 な 91-4)感想
シリーズ第4弾。今回の被告人は実母。加害者家族として差別と偏見の中で生きていた。金持ちと再婚したのだが、その人が死んだ。自殺か遺産を貰える実母が殺害したのか。それを問う裁判の弁護人になる。今回はさほど複雑でもなく、犯罪者の親族の生きづらさを描いたものだった。それにしても、この真相はきついな。
読了日:09月04日 著者:中山 七里

復讐の協奏曲 (講談社文庫 な 91-5)感想
御子柴シリーズ5作目。今回は秘書が容疑者。この女性が実は御子柴が死体配達人と言われていた時代におこした犯罪の被害者女児の親友だったというのが肝。そこに御子柴の解任要求が大量に送り付けられるじけんが絡む。今回も定期の面白さ。法廷闘争がいい。
読了日:09月05日 著者:中山 七里

殺戮の狂詩曲感想
御子柴シリーズ6作目。介護施設に勤務しながら9人もの入所者を包丁で刺し殺した「バケモノ」を「死体配達人」が弁護する。みんなに反対される。勝手も世間的に悪者にされるし、負けると最悪。どっちにしろ良くない結果しかない。反省の気持ちが一ミリもない依頼人。ラストにすごいオチがあるが基本は大人しい感じだった。
読了日:09月06日 著者:中山 七里

レゾンデートル (実業之日本社文庫)感想
最近の知念さんの作品と比べるとエンタメの色彩が強く、ミステリー度合いが弱い。でも、面白かった。切り裂きジャックのような連続殺人鬼の話し。末期がんになった元医師の岬は、悪い奴を懲らしめることに決めて、悪人を殺した。そのやり口がジャックに似ていて、ジャックの犯行にされる。それでジャックに身元を知られて仲間に引き込まれる。別の話しとして、親友を殺された少女がいて、彼女はある証拠を持っていて怖い奴らから追われている。彼と彼女が合流したあたりから話しは加速度的に面白くて、とてもスリリングなラストへと繋がっていく。
読了日:09月07日 著者:知念 実希人

新装版 炎環 (文春文庫) (文春文庫 な 2-50)感想
鎌倉幕府成立の前から、承久の乱までの間の歴史的な史実を北条家の人たち、もしくは、その関係者の目線で描いた短編集。二年ほど前に、NHKの大河ドラマでやっていた内容とほぼ同じだった。いもうと という短編がいい。北条政子の妹を描いたもので、その数奇な運命と野心は歴史好きには興味深い内容になっている。最後の覇樹という作品も興味深い。北条家が源氏に取って代わる時代が見事に描かれていて、そこには北条義時の劇的な変化があったのがわかる。
読了日:09月08日 著者:永井 路子

タイタンの妖女 (ハヤカワ文庫 SF ウ 4-22)感想
もし、人々の行動が何ものかの意思の結果だとしたら自由意志は存在するのだろうか。火星と地球の戦争、彼らがタイタンに追放された理由。何かすべてが、この見えない何か、この場合は異星人たちの命令にあるのだけれども。そういう人生はどうなのか。生きていると言えるのか。色んなことを考えた。場面展開が早く、ぶっ飛んでいて、それに古い感じもあり、これが名作であり、すごく評判の良い作品だとは、僕は感じなかった。ただ、主人公のあの孤独な死にざまや何かの支配を受け続けた人生を悲しく感じるだけだった。
読了日:09月10日 著者:カート・ヴォネガット・ジュニア

ストーンサークルの殺人 (ハヤカワ・ミステリ文庫)感想
ストーンサークルに焼死体、連続殺人事件。被害者の共通点から、過去の事件が浮かび上がる。展開が面白い。推理はかなり単純だった印象。ワシントン・ポー刑事と相棒の関係性もいい。そして、親友の存在。上司は元部下。それにしてもポー刑事の過去が壮絶すぎる。ワシントンってそういう意味なのか。英国推理作家協会賞最優秀長篇賞ゴールドダガー受賞作。
読了日:09月12日 著者:M W クレイヴン

ブラックサマーの殺人 (ハヤカワ・ミステリ文庫)感想
ワシントン・ポー刑事シリーズ第二作目。このシリーズは、二人の女性の仲間の存在が鍵になり、魅力の大半はそこにあると思う。今回は前作に比べると少し劣るように思う。過去に、娘を殺害したとして料理人を逮捕した。その娘が出てきた。DNAが一致しているという、その娘はすぐに消えた。ポーは絶体絶命。消えた娘を殺害したという容疑まで押し付けられる。一つ気にいらない謎があるが、あれを納得させるには、きちんと科学的な説明が必要に思える。
読了日:09月13日 著者:M W クレイヴン

キュレーターの殺人 (ハヤカワ・ミステリ文庫)感想
このシリーズは面白い。ワシントン・ポーという刑事のキャラが魅力の過半を占めていると思う。今回は、最後のあの島でのbattleが楽しかった。まさかの人物が犯人だったというのも驚いた。そして、キュレーターに殺人を依頼した真犯人があの人だったなんて想像もしてなかった。相変わらずわかりやすく、それでいてミステリーとしても完成している。ビットコインの使い方も面白い。
読了日:09月14日 著者:M W クレイヴン

グレイラットの殺人 (ハヤカワ・ミステリ文庫 HMク 23-4)感想
ワシントン・ポー刑事 シリーズ四作目。 ちょっとトーンダウンなのかな。 パターンも見えてきた。今起こっている首脳会議直前の事件 そして、過去のアフガン戦争の時の事件 最後のほうはかなり盛り上がったが、このシリーズのファンの僕としては不満足。
読了日:09月15日 著者:M・W・クレイヴン

決壊(上) (新潮文庫)感想
下巻に感想
読了日:09月16日 著者:平野 啓一郎

決壊(下) (新潮文庫)感想
読後感最悪だった。救いがない。吐きそうだ。人間の悪意が凝縮されているような作品だった。弟がバラバラ殺人で殺害される。エリートの兄が犯人と決めつけられて、仕事、名誉、信用、父、母の正気。それこそありとあらゆるものを奪われて、真犯人がわかった後でも、その現状は回復せずに絶望の中に精神を疲弊させていくという話し。明らかに著者の分人という思想が背景にあり、民衆に対しての絶望を感じることができる。この気持ち悪さは、もしかすると著者の見えている世界観なのかと疑問を抱いてしまうほど澱んでいた。それにしてもすごい作品だ。
読了日:09月16日 著者:平野 啓一郎

777 トリプルセブン感想
殺し屋シリーズは、これで四作目でしょうか。舞台はあるホテル。そこに仕事でやってきた天道虫が、事件に巻き込 まれていく。何でも記憶できる紙野という女性を拉致しに6人組の殺し屋が・・・、彼女を守る用心棒もいて、その一人に天道虫が助けてくれと依頼され巻き込まれる。元議員という胡散臭い人たちも、いつものバタバタ。だんだんと話しが集約されていきまとまってくる。初期の作品に比べるとエンタメとしては良いが謎度は弱いかも。
読了日:09月18日 著者:伊坂 幸太郎

透明カメレオン (角川文庫)感想
そのバーの名前はIF。最後に、何となく、その意図がわかった。もしも・・・の世界、それをもしかすると彼らは望んで待っていたのやもしれぬ。そこに不可解な女が現れ、そこの客たちはケイというその女に巻き込まれた。ラジオのMCをしている常連の男がメインだが、その少し犯罪めいた展開とキャラの面白さは道尾さんらしいものがあり満足できる。しかし、何となく過去作品とたぶり、それも劣化版。ちよっと・・・・という印象なのでした。
読了日:09月20日 著者:道尾 秀介

異次元緩和の罪と罰 (講談社現代新書)感想
当初二年という公約の異次元緩和が11年も続いた。その功罪を本書は明確にしている。というか罪の部分である。確かに経済はリーマンショックや東日本大震災から復活しパンデミックも乗り越えた。しかし、その間に作ってしまった借金の額は膨大で、これは次世代の人たちに受け継がれる負の遺産である。ちょっと正常化を匂わせただけで20円も動く為替、大暴落する株価。新総裁の心痛を考えると・・・。
読了日:09月21日 著者:山本謙三

明治殺人法廷感想
密室殺人事件を、今で言う弁護士と新聞記者がタッグを組み解決する話し、法廷闘争が面白かった。時代は明治、まともな司法制度もない暗黒の時代。その雰囲気がディテールの細かな描写により見事に再現されていたことが本書の魅力であり、また、登場人物の楽しいキャラもなかなかに魅力的でした。少し読みにくいところはありましたが、期待していた以上だつたと思います。
読了日:09月22日 著者:芦辺 拓

シャドウ (創元推理文庫) (創元推理文庫 M み 5-1)感想
最後のどんでん返しはさすが。それにしても、こんな鬼畜な人物がいるのか。たぶん、よほどの変質者だし、バレないと本気で思っていたのか。胸糞悪い話しだし、精神の病というのはイライラするのだけど、伏線を見事に一気に回収するところがとても楽しい。安易に自殺しようとした彼女の母親のあの感覚がまったく理解できない。ここに出てくる大人はみんな何か変だ。子供二人がまともというのが本書の楽しみどころ。
読了日:09月23日 著者:道尾 秀介

N (集英社文庫)感想
読む順番で印象が変わるという設定の短編集。たしかに、ところどころで繋がっていたのだが、これ必要なのというレベル。短編もミステリー形式だが、道尾作品にしては凡庸で特別に面白かったという印象はなかった。落ちない魔球と鳥という短編は面白かった。
読了日:09月24日 著者:道尾 秀介

変な家2 〜11の間取り図〜感想
変な家の2。間取りが変な11の家の謎が繋がる推理場面が楽しい。これちょっと複雑すぎる。一番面白いと感じた謎解きは糸電話の話し。隣の家の家族の焼死の謎が良かった。全部が最終的には繋がるのだが、だからどうしたのという印象しかなく、明らかに前作と比較するとトーンダウンしている。
読了日:09月27日 著者:雨穴

暗殺感想
元首相暗殺事件を別の可能性をということで描いた作品。ゴルゴ13のようなスナイパーが存在しており、体内で消える弾丸を使用したという陰謀説を小説にしたものだが、現実的ではないのでリアリティに欠けている。描写としてはオズワルドのような犯人にされた男の銃を自分で作りそれを試すシーンや、元総理が殺害されるシーンは上手く描写されていたと思う。
読了日:09月28日 著者:柴田 哲孝

琥珀の夏 (文春文庫 つ 18-7)感想
宗教二世が昨年話題になっていましたが、本書の舞台は〈ミライの学校〉という林間学校。その学校は宗教の学校だった。その跡地から白骨遺体が見つかった。弁護士の主人公は、この林間学校に夏になると通っていた。そこで美夏という少女と出会う。それにしても著者は子供の世界、彼女たちの葛藤や苦悩を描くのが上手だ。気がつくとその世界に引き込まれていた。裁判を引き受けないでと頼む過去の友人の気持ちもわかる。そこに関わっていたという黒歴史を蒸し返したくないのだ。これは現実と理想の物語であり、宗教二世の苦悩の物語ののように思えた。
読了日:09月29日 著者:辻村 深月

銀座「四宝堂」文房具店 (小学館文庫 う 15-2)感想
創業は天保五年、地下には古い活版印刷機まであるという知る人ぞ知る名店銀座四宝堂。その文具店に来る客の物語。短編集。たんたんと進行していく物語が中途を超えるとだんだん魅力を加算していく。人の優しさがそこには描かれていた。最初の万年筆の祖母の愛情とか、転職する女性を描いた話しや、女子高生の恋愛。心に染み入るような物語たち。
読了日:09月30日 著者:上田 健次

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