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6月の読書日記 おすすめ本をpickup

読んだ本の数:24
読んだページ数:8854

今月もいい本が読めました。
その中からいつものように五冊pickupし紹介したいと思います。

ヨルガオ殺人事件 上 〈カササギ殺人事件〉シリーズ (創元推理文庫)

ヨルガオ殺人事件 下 〈カササギ殺人事件〉シリーズ (創元推理文庫)


・・・・本格的な二重構造のミステリー作品。


恋歌 (講談社文庫)

・・・樋口一葉の師匠である歌人中島歌子の半生を描いた傑作。

成瀬は天下を取りにいく 「成瀬」シリーズ

・・・とくかく面白かった。成瀬シリーズ第二弾。

星落ちて、なお (文春文庫)

・・・絵に一生をささげた女性の物語。

われら闇より天を見る


・・・胸を引き裂かれるような読後感が残る。間違いなく名作です。





以下、読んだ本の簡単な感想

われら闇より天を見る感想
「人は終わりからまた始める」というセリフが何度も出てくる。その終わりとは、ヴィンセントがスターの妹をはねて殺した、あの時であり、ダッチェスが母であるスターを失った時のような気がする。それにしても悲惨だ。ボタンの掛け違いみたいな運命。本作は、ミステリーとしても面白い。しかし、これは恋愛物語だ。ヴィンセントとスターの、その子供たちの物語。胸を引き裂かれるような読後感が残る。間違いなく名作です。
読了日:06月01日 著者:クリス ウィタカー

鳥と港感想
好きなことを仕事にできたら幸せだと思う。ちょっと感覚が昭和な職場で不適合を起こした高学歴のこじらせ女子と父が有名作家の男子高校生が鳥と港という名の文通の会社を設立し、色んな葛藤の末に成長していく物語。読んでてイライラする部分もあった。それはたぶん、この人の考え方が常に自分自分だからだと思う。そういう人の内面を見せられてもイライラするだけだが、正直な心の反応は他者には何か気持ち悪いのです。でも、最終的には綺麗に着地でき良かったという感じです。
読了日:06月02日 著者:佐原 ひかり

殺しへのライン (創元推理文庫 Mホ 15-7)感想
本を販売する企画でたくさんの作家が島に集まった。そこで金持ちの男が殺された。癖のある人々、複雑な人間関係、最後まで真犯人はわからなかった。ベジタリアンが・・・なるほど。そうだったのか。探偵とその活躍本を書く作家のコンビという、この作者オリジナルのパターンがすごく興味深い。関係者が多く最初はかなり戸惑うのですが、慣れてくると海外ミステリーの純粋な面白さが見えてくる。なかなか良い作品でした。
読了日:06月03日 著者:アンソニー・ホロヴィッツ,山田 蘭

星落ちて、なお (文春文庫 さ 70-3)感想
その身体に血ではなく墨が流れている家族、画鬼の家の話し。父が日本画の有名な絵師であり、兄と自分 妹 は絵師としてしこまれた。しかし、明治の世になり過去のものとなった日本画の世界は影が差し、彼女も兄も評価されない。そんな彼女の半生を描いた濃厚な物語。かなり骨太であり面白かった。サイドストーリーであるポン太と旦那の話しや、弟弟子の息子を弟子にする話しなと゛魅力的な話しが多かった。
読了日:06月05日 著者:澤田 瞳子

火定(かじょう) (PHP文芸文庫)感想
パワフルな筆致で描かれたのは、あの平成のパンデミックを想起される奈良時代の天然痘パンデミック。施療院という国家の医療施設の医師や助手たちの奮闘が熱い。感染した子供たちを倉に閉じ込めて殺すしかなかったエピソードや、冤罪で御典医を失脚された男が国家や民を恨み、民間信仰で民を騙し護符を売ったり騒動を先導したりとパンデミックの恐慌を煽る展開は熱い。医師とは何かという問いが、この物語には込められていて、この施設の長のカッコよさは、山本周五郎の赤ひげに出てくる新出去定のようでありました。おすすめの歴史小説です。
読了日:06月07日 著者:澤田 瞳子

近畿地方のある場所について感想
めっちゃごちゃごちゃしてて、最後にあの柿やるから山に来いみたいな話しと、この話しの元々のルーツの祟り神というのか、今で言うところの童貞婚活失敗男が罪を着せられて殺害され祟るみたいな話しが繋がり一安心。まさか、柿と婚姻が関係していたとは思いもしなかった。話しは都市伝説のパッチワークみたいで、不幸の連鎖というのか、感覚としてはリンク゛のあの貞子のビデオのダビングとかチェーンメールのような感覚です。こういう形の複雑だが不気味系のホラーはなかなかいい。
読了日:06月08日 著者:背筋

ナイフをひねれば (創元推理文庫)感想
ホロヴィッツが容疑者に。逮捕までリミットは少し・・・。頼れるのは探偵で相棒のホーソンだけ。誰が彼に罪をなすりつけたのか。凶器は今回の劇の関係者だけが所有。このオチは驚きだった。まったく、この人が犯人だとは思わなかった。構成の上手さが目立つ。ホーソーンのキャラの深み出てきました。過去がほんの少し明かされたのも面白い。今回も上出来でした。
読了日:06月09日 著者:アンソニー・ホロヴィッツ

ヨルガオ殺人事件 上 (創元推理文庫)感想
感想は下巻に
読了日:06月10日 著者:アンソニー・ホロヴィッツ

ヨルガオ殺人事件 下 (創元推理文庫)感想
前作のカササギと同様、作中にアランの小説「愚者の代償」というのが出てきて、それが現在の殺人事件のヒントになっているという二重底構成が魅力的でした。前半はかなり読みにくく困惑しましたが、作中小説が登場してからは無我夢中となのました。かなり面白い。その小説世界が、現実の今の事件のヒントになるということで、また、面白さは加わりました。面白かったです。
読了日:06月10日 著者:アンソニー・ホロヴィッツ

成瀬は信じた道をいく感想
成瀬は天下を取りにいくの続編。面白い。三巻も出して欲しい。この破天荒な行動が楽しすぎた。成瀬の物語であり成瀬の物語ではない。そこが良いのかも、成瀬と出会うことでなんか人生が変わるその瞬間が楽しい。好みはクレーマーの女性との関係とか、小学生のファンの少女との繋がり、観光大使の話しも面白かった。インパクトがあったのは京大受験の物語。
読了日:06月12日 著者:宮島 未奈

命売ります (ちくま文庫)感想
今の時代にはあわない展開もあるがエンタメとしてかなり楽しい小説だった。自殺に失敗し生命を売ることに決めた青年だが、なかなか死ねない。死にたくないと決めたところあたりから人の本質が見え隠れする。この生命とは三島に取って本が売れるためにする妥協のことだと推測する。でも、ある時、それは空しいと感じ生きたいと願うが、そうすると死のほうが彼を追い詰めてくるみたいな印象を感じた。エンタメと読むと。これを深読みするかで本書の価値は変わってるように感じた。
読了日:06月14日 著者:三島 由紀夫

コンビニ・ララバイ (集英社文庫)感想
コンビニを舞台にした物語。短編形式で主人公は毎回違う。店主の優しい人柄が沁みてくる。ヤクザと店員の治子さんの恋が切なかった。そこにホームレスの爺さんと焼きそば好きの犬のエピソードが入ってきて、すごいいい味が出ていた。あわせ鏡という短編も良くて、バカな男と同棲しているダメな水商売の女の人の話しなんだけど、最後のあの場面はすごく良かった。大人の物語という印象がある。なかなか読み応えのある作品群でした。
読了日:06月15日 著者:池永 陽

いちまい酒場 (講談社文庫 い 109-7)感想
深夜食堂とかぶる。元ボクサーの店主。かなりアクティブ。深夜食堂のおっさんと比べると若いというのもあるのかもしれない。ラストはヤクザと殴り合い。本書の主役は店主ではなく、そこに通う人たちの人情物語だ。なかなか骨太で読ませる。気になるのは、やたら昭和の男とか昭和の女という言葉が出てくること。それが著者の理想なのだと思う。ここに描かれる昭和の世代の人たちは、みんな湿度がある。他人の喜びを我が喜びにし、他人の悲しみを我が悲しみとできる人たちなのだ。だから人情が成り立つ。故に昭和なのか。こういう短編集は好みだ。
読了日:06月16日 著者:池永 陽

伝説のエンドーくん感想
市立緑山中学には、語り継がれる伝説の人エンドーくんという人がいた。校内には、彼についての落書きが多々書かれている。遠藤君はXXだ・・・という感じだ。何人かの教師が、この落書きに触れて生き方を変化させていく熱い物語。ポジティブなのがいい。
読了日:06月17日 著者:まはら 三桃

水車小屋のネネ感想
水車でひくそば粉で作る蕎麦。その蕎麦屋に名物のオウムがいた。姉妹がそこにやってくる。蕎麦屋で働き、オウムの世話をする。そのオウムと関わる姉妹や、その夫になる人、関わってくる少年たちの物語。最初はかなり展開が大きく楽しかったが、後半はただ、たんたんと時間が過ぎているだけ、それはそれでいいのだが、善人ばかりの優しい物語で、ここから学べるのは善意がこの世界を良くするという考えでした。
読了日:06月19日 著者:津村 記久子

恋歌 (講談社文庫)感想
樋口一葉の師匠である歌人中島歌子の半生。夫は、水戸天狗党の乱で死んだ。その夫に対して書いた歌が素晴らしい。君にこそ恋しきふしは習ひつれ さらば忘るることもをしへよ。 恋を教えてくれたあたな、ならば、あなたを忘れる術も教えてくださいという意味なのですが、この愛情の深さが、この歌人のすべてのような気がしないではない。いい作品でした。
読了日:06月20日 著者:朝井 まかて

カーテン(クリスティー文庫) (ハヤカワ文庫 クリスティー文庫 33)感想
ポアロ最後の事件、犯人は・・・。びっくりした。最後の後記がすごい展開。スタイルズ荘に連続殺人鬼Xがいる。ポアロは寝たきりで年を取っていた。助手役のヘイスティングズが見て聞いてきたことをポアロに話し推理をするという形です。ヘイスティングズの娘が出て、彼を悩ませるシーンがたくさん出てきますが、この揺さぶりがなかなか興味深い。
読了日:06月22日 著者:アガサ・クリスティー

朽ちないサクラ (徳間文庫)感想
映画化というので原作を読むことにしました。警察職員の泉の親友の記者が殺害された。彼女に警察のちょっとした秘密を泉は漏らしてしまい記事になった。でも、彼女は私じゃないと・・・、その直後に殺害されたというミステリー。彼女は誰に殺害されたのか、理由は何なのか。 日本でサクラとは公安警察のことです。人命より国家を優先する組織というのに驚く。
読了日:06月23日 著者:柚月裕子

スピノザの診察室感想
『神様のカルテ』も良かったが、本書も魅力十分だった。夏川さんの本は医療ものが多い。今回は内視鏡の凄腕の医師ということだつた。終末医療にも積極的で何人かの看取りもしていた。新人の医師を受け入れていて、その医師とのやり取りも新鮮だ。スピノザの思想が医師としての根底にあるということなのだが、僕はスピノザって言われてもわかんないのでピンとこない。
読了日:06月24日 著者:夏川 草介

古本食堂 新装開店感想
前作は新鮮でこの企画設定にどっぷりはまったが、古本のほうは・・・ちょっと弱いような。弁当の写真の話しは好きだった。古書をモチーフにした作品は素晴らしい作品があるので、どうしても比較してしまう。どちらかというと、食べ物屋の描写のほうが読んでいて楽しかった。本書のモチーフは新しい人生の分岐点だと思う。珊瑚さんの恋、故郷への想いは古本屋を営むことよりも楽しいのだと思う。それは必然の運命なのかもしれないと感じました。
読了日:06月26日 著者:原田 ひ香

勇気論感想
めちゃぐちゃ面白かった。勇気、正直、親切というワードで書簡形式で内田先生が編集者と対話、講義に僕には思えたが、これが楽しい。脈絡のない話しで飛び飛びでわかりにくいが、色んな話しが出てきて楽しい。勇気と孤高が繋がるというのも新鮮な意見だった。どうしても日本人は他人の顔色を窺うところがあるから、護送集団に乗っているみたいな戦前みたいな空気になる。一方的な流れの時、自分だけ違う意見を言うのは勇気がいるのですね。みながイエスマンだと国や世界が変な方向に行くかもしれない。勇気の大切さを痛感しました。
読了日:06月27日 著者:内田樹

最後の甲賀忍者感想
時は幕末、甲賀忍者の末裔たちは武士への復帰を目指し、いざ関ケ原ならぬ戊辰戦争に朝廷側として参戦し忍術を使い傍若無人というのか独立独歩というのか魅力的な戦いをするという劇画みたいな展開の時代小説。リアリティと虚構が混在し、というか嘘臭さが多いが・・・楽しいエンタメ小説でした。主人公のキャラ、忍者の虚構をはぎ取るようなリアル。そこが楽しい。
読了日:06月28日 著者:土橋 章宏

かなたのif (フレーベル館 文学の森)感想
最初、孤独な少女の繋がり、友情を描いた物語かと思った。少し退屈かなダメかなと思いかけた時、彼女が死んでいるとわかった。彼女は幽霊なのか・・・。すると、彼女の世界では、香奈多が山で死んでいた。二人とも死んでいるの。生きるじゃん。どういうこと。つまりパラレルワールド。別世界の人間がひかれあって出会っていた、それは特別な金曜日だったのだ。ここからがぜん楽しくなってきた。双方の想いが溢れてきた。もしもの世界。それが成立した裏にある感情。それがわかった瞬間、この物語は光り輝く。
読了日:06月29日 著者:村上雅郁

三河雑兵心得 【十三】-奥州仁義 (双葉文庫 い 56-14)感想
三河から関東への国替え引っ越しの時期が描かれていて、少しエピソードとしてはゆるい。後半は奥州征伐に参加する。総大将の豊臣秀次の無能ぶりが半端ないが、蒲生氏郷との友情は心地よかった。騙された謀反人九戸政実の護送の任務につく、九戸には彼の言い分を聞くという約束をしていたのに秀次の命令で途中で殺害。切腹は許さずとのこと。最後のエピソードが良い。九戸政実の首を取り替えてるのだ。いい話しでした。
読了日:06月30日 著者:井原 忠政

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