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バーテンダー社会学

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夜の飲食で働く人々の生態系と日常の社会生活のギャップを考察。そこから見えてくる様々な問題を考える。
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#小説

「バーテンダー褒め学」実践編

「バーテンダー褒め学」実践編

褒めるべき優れた人が、その褒められるべきポイントには誰一人気がつかず、私だけが見抜いていたら嬉しいだろう。つまり誰にでも褒めるべきところがあると思えば、それを探しだそうとする好奇心が湧き上がるというものだ。
反対に探しても捜しても一向に褒めポイントが見つからない迷宮のラビリンスのような人がいる。これは相当に厄介だが、ただ単に私自身がその人の「良さ」を見抜けない未熟者の可能性も否めない。
褒めるべき

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「一見さんの6つのルール」

「一見さんの6つのルール」

繁盛している飲食店には、必ず店を愛してくれている常連さんが存在する。
店を愛し、スタッフとも気心が知れて、家族ぐるみの仲、なんて関係もあるだろう。
店が満席になると進んで席を空けてくれるようなスタッフ的な気配りができる、そんな縁の下の力持ち的存在、それが常連さんだ。
だが、どんなに家族のような親しい常連さんも、初めはみんな「一見さん」なのである。

私の店にも常連さんは存在している。
20年以上も

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モテ学4「笑顔の秘密」

モテ学4「笑顔の秘密」

素敵な笑顔の男がいた。
彼の笑顔は周囲を明るくした。
彼が微笑むと皆がつられて笑顔になった。
それがモテるポジティブな笑顔である。
モテる男の笑顔には、そういう意味がある。

どういうことか?

例えば……。
男が笑顔で笑っている。
彼の笑顔にも素敵な魅力があった。
彼は何を見て笑っているのだろう?
彼の目線を辿っていくと、横転した車の側で泣き叫んでいる人々の光景があった。
それを見た私は彼に恐怖

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「死についての授業」は、なぜないのか?

「死についての授業」は、なぜないのか?

結論から書かせてもらうと、12歳から15歳の思春期に、学校で「死についての授業」を実施すべきだ。
少し前のアンケート記事だが、死んだらどうなる?という問いに対し、生き返ると回答した小学生が30%に達し、中学生も20%はいるという調べが出ていた。
これには、ゲームが大きく影響している。

イェール大学の「死についての授業」は、著書も出ているくらいだから、知らない人も少なくないと思う。
だが、大学で学

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(3)バーテンダーは3つの空気を自在に操る。空気を壊す編

(3)バーテンダーは3つの空気を自在に操る。空気を壊す編

これまで、1.空気を読む、2.空気を作るについて書いてきました。
そして今回は最終章、「空気を壊す」について書いていこうと思います。
まずは、なぜ空気を壊すスキルを覚えなければならないのかについて書いていきます。

コミニケーションの中には、気の合った仲間や同年代の友達ばかりではありません。
むしろ、そうでない場合のシチュエーションが多数存在します。

想像してみてください。
例えば、初対面の複数

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「問題が生じた時、誰かに相談できるか否か?それが人生の別れ道」

「問題が生じた時、誰かに相談できるか否か?それが人生の別れ道」

24歳のシングルマザーが8日もの間、女児を自宅部屋に置き去りにして遠距離恋愛中?の彼に会いに出かけている間に、娘が餓死したという事件があった。

人は、自分の経験した失敗からしか学べないことが少なくない。私もその内のひとりであるが、私にはズルイというか、業務上の少し役得なところがある。
それは、お客が仕事や恋愛などの問題に直面してしまった時、頻繁に相談をしてくれるかだ。私はその相談に対し、できるだ

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(2)バーテンダーは3つの空気を自在に操る。空気を作る編

(2)バーテンダーは3つの空気を自在に操る。空気を作る編

さて、空気を読む編では、空気を読むとはどういうことで、なぜ、空気を読まなければならないのかについて書いてきました。
今回は「作る」について書いていきます。

空気を作るには、2つの意味があります。
1.今ある空気をより良くする
2.悪い空気を良くしていく(難易度高い)

空気を読めるようになって、相手の望みを理解したとしても、それだけでは十分ではありません。次は、相手と2人で共同作業をしなくてはな

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(1)バーテンダーは3つの空気を自在に操る。空気を読む編

(1)バーテンダーは3つの空気を自在に操る。空気を読む編

誤解を恐れずに言うなら、最近、おもしろい人がめっきり減ってしまった。
理由はいくつか思い当たるが、一つに「人としてバランスの悪い人、人間味のある人」が少なくなってしまったことだ。逆に言うなら、バランスの良い優等生タイプが多く、話していても味気がしない。
薄味の精進料理を食べているようで、それが20代の若者から感じた時には残念で屁も出ない。
時代が変われど、人はそう簡単には変わらないと、高をくくって

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「バーテンダーは、ねずみ男である」

「バーテンダーは、ねずみ男である」

「早く人間になりたい」というセリフがあった。妖怪人間ベムだったか。
ある科学者が人造人間の研究に失敗した時、壺の中で奇跡的に産まれた生物とあった。
彼らは人間の心で産まれたが、その姿は妖怪だった。ムゴイ設定だ。だが、気持ちはわかる。僕も人間に憧れている一人だからだ。
この妖怪人間ベムを、マイルドにしたのがねずみ男ではないだろうか。
ゲゲゲの鬼太郎に登場する半妖怪だ。
姑息でお調子モンの上にお金が大

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「日本のバーテンダーはニューヨークを生きている」

「日本のバーテンダーはニューヨークを生きている」

僕はニューヨークに行ったことがない。

だが、日本に居住しながらおよそ27年あまり、ニューヨーク時間を過ごしているのである。
断っておきたいが、これはドヤ自慢が言いたいわけではない。むしろその逆さまで、愚痴や泣き言に限りなく近い話である。

まず、僕のタイムスケジュールを聞いていただきたい。僕の仕事の就業時間は20:00〜05:00である。店の買い物や準備などを考慮すると、動き出すのは18時ごろ。

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「飲み仲間、知っておくべき暗黙の十字架」

「飲み仲間、知っておくべき暗黙の十字架」

当たり前だが、酒は気のおけない仲間と屈託なく飲むのが一番楽しい。
「飲み仲間」という造語はいつ誕生したのかはわからないが、この関係の繋がりはまさに「飲む」に限定されているようだ。相手の仕事や立場も一切関係ないし、年齢も関係ない。大切なのは三つ。時間感覚、金銭感覚、ノリである。
この三種の感覚が飲み仲間の絶対条件であると常々僕は考えている。
時間感覚は、飲食における満足時間と言い換えてもいい。朝の早

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