記事一覧
<書評>『歴史の意味』
『歴史の意味―人間運命の哲学の試み― Der Sinn Der Geschichte, Versuch einer Philosophie des Menschengeschickes』ニコライ・アレクサンドロヴィッチ・ベルジャーエフ Nicolai Alexandrowitsch Berdjajew著 氷上英廣訳 白水社 1960年 『ベルジャーエフ著作集』の第一巻として発行された。原著は19
もっとみる<ラグビー>2024年シーズン(6月第四週)
(どうでもよい「話の枕」です。関心ない方は飛ばしてお読みください。)
〇 1980年代に日本の美術評論家の一人が、雑誌「現代思想」の特集で「マルセル・デュシャンは、油彩が下手だったのでオブジェに走った」と評していたが、デュシャンの「チェスをする人々」は、同時代のキュービズム作品と比べて優ることはあっても劣ることはない。また、「階段を降りる裸体」シリーズへの評価は非常に高かったが、デュシャンはそれ
<閑話休題>コーヒーのCMとフェリーニ
2024年6月頃、某メーカーの「ボス」というコーヒー飲料(カフェラテ)のペットボトルに入ったものの一つを「イタリアン」と称する、アニメーションのCMが流れていた。そのアニメは、いかにもイタリア風の長閑な雰囲気を出しているのだが、そこに流れるいかにもイタリアの空気を感じさせるのんびりした音楽は、ニーノ・ロータが名匠フェデリコ・フェリーニの傑作『アマルコルド』のために作ったテーマ曲だ。
この19
<書評>『眼と精神』
『眼と精神 Eloge de la Philosophe L’oeil et l’esprit (原題を忠実に訳せば、「哲学をたたえて、眼と精神」)』 モーリス・メルロポンティ著 Maurice Merleau-Ponty 滝浦静雄・木田元訳 みすず書房 1966年発行 原書は、Editions Gallimard, Paris, 1953 et 1964 パリのガリマール書店が1953年及び1
もっとみる<書評>『バレエ 形式と象徴』
『バレエ 形式と象徴(原題の直訳は「バレエ 形式と本質 現代ヨーロッパのダンスにおける象徴的な言語」) Ballett—Gestalt und Wesen Die Symbolsprache im europaeischen Schautanz der Neuzeit.』 ゲルハルト・ツァハリアス Gerhard Zachaias著 渡辺鴻訳 美術出版社1965年 原著は1962年 Koln(ケ
もっとみる<閑話休題>ホームズとポワロの生きた時代
シャーロック・ホームズは、この名前自体が既に固有名詞化しているくらいに、世界中に膾炙した私立探偵の活躍を描く短編小説の主人公だが、彼の活躍した19世紀末ロンドンという、虚栄と繁栄が過度に達した世界を舞台にしているところに一番の醍醐味がある。
また、アガサ・クリスティーが新たに創造した私立探偵エルキュール・ポワロは、ホームズに匹敵する探偵小説の主人公として、その名を世界中に知られている。ポワロ
<閑話休題>映画『大脱走』の細かい話
先日、スカパーで映画『大脱走』を久しぶりに観た。最初に観たのは小学生の頃のTV放映で、その後劇場で観ることは無く(そもそも劇場上映がなかった)、TVの再放送やDVDなどで数回観たと思う。そのため、『大脱走』については全て知っているつもりだったが、改めて観ると、知らないことや気づいたことが多かった。
オールスターキャストの『大脱走』だが、その派手なアクションシーンや秀逸なキャラクター設定
<書評>『ラスコーの壁画』
『ラスコーの壁画 La Peinture Prehistorique Lascaux ou La Naissance de L’Art』 ジョルジュ・バタイユ Georges Bataille 出口裕弘訳 二見書房 1975年 原書はGeneve, Suisse 1955年
原題を直訳すれば「芸術の誕生であるラスコーの原始絵画」。20世紀のフランスの哲学者であるジョルジュ・バタイユの名著の一つ
<書評>『The Long Good-Bye 長いお別れ』
『The Long Good-Bye 長いお別れ』 Raimond Chandler レイモンド・チャンドラー Penguin Books 1959 ペンギンブックス1959年版を Reissued in this edition 2010 2010年に再版
1888年にアメリカのシカゴで生まれたチャンドラーは、幼少時英国に移住したが、その後またアメリカに戻った。彼は20世紀の優れた散文の書
<書評>『悲劇の死』
『悲劇の死 The Death of Tragedy』ジョージ・スタイナー George Steiner 喜志哲雄 蜂谷昭雄訳 筑摩書房 1979年 原書は1961年
本書の内容は、もちろん本文が中心なのだが、スタイナーによる最後の解説的な第10章とそれを補足する訳者の解説は、最初に読むべきだと思った。最初に読んでいれば、本文の感じ方がかなり異なった気がする。
アメリカ人ジョージ・スタイナ
<ラグビー及びエッセイ>『スワーブをきりながら(私とラグビーとの長い旅)』
2024年4月4日、『スワーブをきりながら(私とラグビーとの長い旅)』というエッセイを、Amazonの電子書籍及びペーパーバックで出版しました。
これは、私が大学時代にラグビーに出会ってから、その後社会人(国家公務員)となり、いろいろな海外で勤務をしながら、現地でラグビー、タッチフットなどをしてきたこと、そして息子の(全国大会出場経験のある)高校ラグビーの父兄としての経験など、40年にわたる
<書評・芸術一般>『デュシャンの世界』芸術とは生きること
『デュシャンの世界 Entretiens avec Marcel Duchamp(フランス語原題を直訳すれば、「デュシャンとの談話」)』Marcel Duchamp マルセル・デュシャン、 Pierre Cabanne ピエール・カバンヌ、Pierre Belfond ピエール・ベルフォン 1967年 Paris パリ。日本語版は、岩佐鉄男及び小林康夫訳 朝日出版社1978年。
20世紀最高