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<絵本ストーリー>カンフーマスター

<はじめに>
 先日、文芸社の絵本大賞のストーリー部門に応募していたら、落選ですという通知をもらいました。生活費の足しになると思って応募したのですが、世の中そんなに甘くなかったのでした。それでも、せっかく書いた作品なので、このまま埋もれさせるのは嫌だと思い、ここで発表させてもらうことにしました。

 幼稚園児を想定した絵本なので、ひらがなとかたかなで書いてあり、ちょっと読み辛いですが、「絵のない絵本」のように読んでもらえれば、ありがたいです。なお、もし絵をつけるとすれば、故長新太氏に描いてもらいたかったなあ。(あと、蛇足ながら、標題画像は私が約40年前に描いたヨーダです。)

「カンフーマスター」

 ぼくはぼーとしていた。このぼーとしているのは、とてもすきなんだ。

 おかあさんがつくってくれたホットケーキを、おとうさんといっしょにたべた。そのあとおとうさんは、てれびでえいがをみていた。

 ぼくは、なにをみているの、ってきいた。
 そうしたら、カンフーマスターっておしえてくれた。
 カンフーマスターってなんだろう?とおもって、ぼくもてれびをみた。

 あとかたづけをしているおかあさんが、てれびをみているぼくたちをみながら、
 むかし、まえのかれしとみにいったなあ、といった。
 まえのかれしって、どういうひとのこと?とぼくはおもった。でも、それはひみつなのだと、ぼくはしっているんだ。

 えいがのなかで、がいこくのこどもが、ながくしろいひげのおじいさんに、カンフーをおしえてもらっていた。とてもかっこよかった。

 ぼくは、おとうさんに、ぼくもカンフーをやりたいっていったら、おとうさんは、そうか、やりなさいっていってくれた。
 おかあさんは、どうせすぐにあきちゃうし、あぶないからやめたほうがよくない?っていったけど、ぼくは、だいじょうぶっていったよ。

 そしたら、おとうさんが、わらいながら、それじゃ、こうえんにいってながいひげのおじいさんをさがしたらいいよ、とおしえてくれた。

 ぼくは、すぐにこうえんにいってみた。でも、ながいひげのおじいさんは、どこにもいなかった。
 つぎのひもいってみたけど、やっぱりいなかった。ぼくは、まいにち、ようちえんからかえって、こうえんにいったけど、ながいひげのおじいさんはいなかったよ。

 ぼくはかなしくなって、おうちにむかっていたら、あかしんごうをまっているおじいさんがいた。そのおいじいさんは、ながいひげだったので、ぼくは、カンフーマスターですかって、きいてみた。
 おじいさんは、わらいながら、ぼうや、なんでそんなことをしっているの?ってぼくにいうから、ぼくは、だってえいがにでていたよっておしえてあげた。

 おじいさんは、そうか、じゃあ、こうえんにいこうというから、ぼくもこうえんにいった。

 おじいさんは、えいがのようにカンフーをおしてくれた。やっぱり、このひとがカンフーマスターなんだって、おうちにかえってから、おとうさんとおかあさんにはなしたら、きゅうにこわいかおになって、あしたからこうえんにいってはだめです、っていわれた。

 ぼくはとてもかなしくなって、ベランダからそとをぼーとみていた。とおくをみると、こうえんもみえた。そして、こうえんにはさっきのおじいさんがいた。

 おじいさんも、ぼくのことがみえたみたいで、おおきくてをふっていた。ぼくもうれしくなって、てをふった。なんかいもなんかいもふっているうちに、からだがかるくなって、いつのまにか、そらにうかんでいたよ。

 ぼくは、とてもたのしくなって、おじいさんのほうへむかった。
おじいさんは、よくきたね、でも、ここまででやめておこうね、といってきえちゃった。

 ぼくが、べらんだからいえのなかにはいったら、おかあさんがでんわをしていた。

 ぼくのほうをみたおかあさんが、ぼくに、ゆうくん、あしたから、からてくらぶへいけることになったよ、よかったねといった。

 ぼくは、からてくらぶってなに?っておかあさんにきいたら、からてくらぶは、カンフーマスターがいるところよって、おしえてくれた。
そうか、カンフーマスターのおうちは、からてくらぶなんだってぼくはおもった。

 つぎのひ、ぼくはおかあさんと、からてくらぶにいった。
 おおきなところで、おにいさんやおねえさんがれんしゅうしていた。そして、そこのいちばんおくにかざってあるしゃしんのひとが、ぼくはきになったので、おかさんにきいてみた。
 おかあさんは、むかし、このからてくらぶをつくったけど、もうしんじゃった、えらいひとのしゃしんよ、とおしえてくれた。

 ぼくは、ちかづいて、そのしゃしんをみてみたら、あのあかしんごうであった、おじいさんだってことがすぐにわかった。

 でも、ぼくは、このことは、おかあさんにも、おとうさんにも、ひみつにしてるんだ。だって、こうえんで、おじいさんとやくそくしたから。ぼくも、おかあさんみたいに、ひみつがあるのさ。


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