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東京近辺の喫茶店

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北村早樹子のたのしい喫茶店 第27回「東京駅 アロマ珈琲八重洲店」

北村早樹子のたのしい喫茶店 第27回「東京駅 アロマ珈琲八重洲店」

 文・写真◎北村早樹子

 小柄で華奢で、とても端正な顔立ちで、ジャニーズにいてもおかしくないくらいかっこいい容姿のその男性は、自分のことをドラキュラの末裔だと名乗ってきた。彼は雑誌の『BURST』を地で行く感じの方で、全身タトゥーだらけで、ドラキュラらしくなれるよう、歯を改造して不自然に尖った八重歯を作っていた。
 どういった経緯で出会ったのだったか。確かわたしはまだ大阪に住んでいて、セカンドア

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北村早樹子のたのしい喫茶店 第26回「コーヒーハウスぽえむ 幡ヶ谷店」

北村早樹子のたのしい喫茶店 第26回「コーヒーハウスぽえむ 幡ヶ谷店」

 長谷川さんというその人に出会ったのは、今から12年くらい前で、当時わたしはいちばん人生がめちゃくちゃで、まあ詳細は書かないが、ちょっとオイタをしていた。人間、誰しも一度くらいはそういう時期があるものだろう。本名は名乗らず、素性も明かさず、仮名を通していて、長谷川さんはわたしのことをH子ちゃんと呼んでいた。長谷川さんも本当に長谷川さんなのかどうかはわからない。でも別にそんなことは問題じゃない。
 

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北村早樹子のたのしい喫茶店 第24回「小岩 木の実」

北村早樹子のたのしい喫茶店 第24回「小岩 木の実」

文◎北村早樹子

 おかげさまでこの連載をしていることもあり、日々たくさんの素敵な喫茶店を訪れることが出来て、わたしの喫茶店ライフはたいへん充実しているのだけれど、貪欲なわたしはまだまだわたしの知らない素晴らしい喫茶店があるんではないかと、日夜、文明の利器(アイホン)を用いて検索している。ぼんやり食べログを見ていると、「木の実」という名前の喫茶店があることを知った。しかも写真を見るに、店内とても可

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北村早樹子のたのしい喫茶店 第25回「町屋 コーヒーハウスはまゆう」

北村早樹子のたのしい喫茶店 第25回「町屋 コーヒーハウスはまゆう」

文◎北村早樹子

 もう20年近く嗅いでいないのに、今も脳裏にこびりついて離れないにおいがある。
 みなさんは「西成おろし」という言葉をご存知だろうか。ご存知の方は殆どいないだろう。おそらくネットで検索しても出てこない。しかし、ある時期まで、あの区域で過ごしていた方なら、ピンと来るはずの、強烈なにおい。それが「西成おろし」である。
 あれはわたしがまだ大阪で高校生になったばかりの頃のはなし。毎日、

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北村早樹子のたのしい喫茶店 第15回「南千住 coffeeオンリー」

北村早樹子のたのしい喫茶店 第15回「南千住 coffeeオンリー」

文◎北村早樹子

 わたしは大阪のことは嫌いだが、西成のことだけは愛している。西成? となる方もいらっしゃるかもしれないので簡単に説明すると、西成とは大阪にある日雇い労働者の街で、ドヤと呼ばれる簡易宿泊施設が立ち並んでいる、ちょっと特殊な街だ。だいたい一泊500円~2000円くらい。ホテルとうたってはいるが、殆どは日雇い労働者や生活保護のじいさんが住居として使っている。ひと部屋だいたい三畳一間(狭

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北村早樹子のたのしい喫茶店 第17回「本所吾妻橋 珈琲専門店デルコッファー」

北村早樹子のたのしい喫茶店 第17回「本所吾妻橋 珈琲専門店デルコッファー」

文◎北村早樹子

 2週続いて個人的な色恋沙汰を綴ってしまうことを、まずはお許しいただきたい。
 少し前まで、わたしは浅草在住の60代の小説家とお付き合いしていた。いえ、在住というと少し語弊があるかもしれない。なぜなら彼は家ではなく、浅草の雷門のすぐ向かいにある自遊空間、要するにネットカフェで暮らしていたからだ。自分は小説を書くだけだから、家はいらない、パソコンと椅子があれば事足りる、というたいへ

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北村早樹子のたのしい喫茶店 第18回「御徒町 純喫茶丘」

北村早樹子のたのしい喫茶店 第18回「御徒町 純喫茶丘」

文◎北村早樹子

 はじめて煙草を吸ったのは、17歳のときだった。当時大阪の高校生だったわたしは、柄にもなく大阪のひっかけ橋という橋の上で弾き語りをしていて、そこで仲良くなったえっちゃんという絵描きの女の子に憧れていた。えっちゃんはとてもおしゃれで、ピアスがたくさんあいていて、美人で、音楽や漫画に詳しくて、全然違う高校だったのだけど、仲良くなったわたしはよくえっちゃんの家に遊びに行っていた。
 

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北村早樹子のたのしい喫茶店 第21回「有楽町 はまの屋パーラー」

北村早樹子のたのしい喫茶店 第21回「有楽町 はまの屋パーラー」

文◎北村早樹子

 わたしは一応、歌をうたったりする活動をしているのだが、1年に1回くらい、ひどい風邪を引き、おっさんのようなガスガスの声しか出なくなってしまうことがある。近所の内科や、耳鼻咽喉科で出されるお薬を飲んでも全然駄目。そんじょそこらの抗生剤ぐらいでは治らない。もうどうしょうもない。しかし、3日後にはライブがある。さて、どうする?! 絶対絶命のピンチ。そういうときに行く、駆け込み寺的な病

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北村早樹子のたのしい喫茶店 第22回「渋谷 人間関係 cafe de copain」

北村早樹子のたのしい喫茶店 第22回「渋谷 人間関係 cafe de copain」

文◎北村早樹子

 渋谷には、ちょうどいい喫茶店があまりない。昔は色々あったけれど、近年潰れてしまったりで、渋谷と言って思いつく喫茶店は、名曲喫茶ライオンくらい。しかしライオンは厳かすぎて間違ってもパソコンなんか開けない。なので今回限り、喫茶店ではなくカフェを紹介することをどうかお許しください。
 スペイン坂の中腹にある、人間関係 カフェ・ド・コパン。ここは夕方まではカフェ、夜はバーになるキャッシ

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北村早樹子のたのしい喫茶店 第4回「虎ノ門 喫茶フーガ」

北村早樹子のたのしい喫茶店 第4回「虎ノ門 喫茶フーガ」

文◎北村早樹子

 わたしは27歳から、所謂難病の類の病気を患っている。
 最初は膝が痛くなり、次に脚、肩、首、顎、腕、最終的には朝、顔を洗おうとして水を両手で掬おうとしたら水圧で手指に激痛が走り、もう駄目かと思った。
 わたしはピアノを弾いて歌をうたう活動をしているのだが、とてもじゃないけどピアノなんか弾けない。鉛筆を持つのもたいへん、おはしを使うのがつらいので一時期なんでもスプーンで食べていた

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北村早樹子のたのしい喫茶店 第10回「シルビア 綾瀬店」

北村早樹子のたのしい喫茶店 第10回「シルビア 綾瀬店」

文◎北村早樹子

 東京に出て来てもう13年が経つ。引っ越しが特別好きというわけではないが、一度家に飽きるともうすべてが嫌になるので、これまでに6回引っ越ししている。その中でいちばん長く住んだのが、足立区綾瀬だ。アパートを2回更新して、結局5年半ほど住んだ。
 なんで綾瀬か。綾瀬に引っ越した当初は友人知人に驚かれた。文化的な匂いが全然しない街だというのは知っていた。駅前には大衆酒場とパチンコ屋しか

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北村早樹子のたのしい喫茶店 第12回「下北沢 cafe ZAC(ザック)」

北村早樹子のたのしい喫茶店 第12回「下北沢 cafe ZAC(ザック)」

文◎北村早樹子

 数年前、わたしは千木良悠子さん主宰のSWANNYという劇団で、『女中たち』というお芝居に取り組んでいた。

 ジャン・ジュネ原作のこのお芝居は、ソランジュとクレールという身寄りのない姉妹の話で、わたしはこの妹、クレール役だった。登場人物は、姉妹ふたりと、姉妹が女中として仕えている奥様の3人だけ。しかも奥様は最後の4場にしか出てこないので、劇中、殆どは姉妹の怒涛の長ゼリフ合戦によ

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北村早樹子のたのしい喫茶店 第13回「千駄ヶ谷 カフェ泥人形」

北村早樹子のたのしい喫茶店 第13回「千駄ヶ谷 カフェ泥人形」

文◎北村早樹子

 28歳くらいから生理がこなくなり、最初は楽チンでいいやと思っていたのだが、1年経つとさすがに不安になって、近所の産婦人科に行った。当然妊娠はしておらず。あらゆる漢方薬を出されたが、一向に生理はやってこない。万策尽きたと医者に告げられて、大学病院を紹介された。
 そんなわけで、わたしは信濃町にある慶應義塾大学病院に通うことになった。慶應大学病院の産婦人科。噂には聞いていたが、大

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北村早樹子のたのしい喫茶店 第14回「目白 珈琲伴茶夢」

北村早樹子のたのしい喫茶店 第14回「目白 珈琲伴茶夢」

文◎北村早樹子

 上京してきて、はじめて住んだ街は目白だった。実際には、住所的には西池袋なのだが、池袋のがやがやは苦手なので、目白駅を使っていた。何故、目白になったかというと、当時東京に住んでいる唯一の友人が目白に住んでいたからだ。彼女は後に魔女になる、るみたんで、当時は彫り師の旦那さんと目白駅前の高級マンションに住んでいた。

 わたしはその頃、大阪に住んでいたが、2か月に一回ぐらい東京にライ

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