トガノイバラ#89 -4 悲哀の飛沫…30…

トガノイバラ#89 -4 悲哀の飛沫…30…

「あんたが御木崎卦伊さん、ですね」 「……なんだ、お前は」 「今回の作戦の陣頭指揮を執っとるモンです。御影、とだけ名乗っときます」 「貴様が……!」 「そんなことより卦伊さん」  怒りで顔をゆがめる卦伊などものともせずに、御影佑征は平然と続ける。 「Kratの諸君をいま中に入れるんは、悪手ですわ」 「悪手、だと?」 「まあなんも知らんのやから仕方ないと思いますけどね」  肩をすくめる。軽薄な態度と口調に、卦伊の表情はますます険しくなっていく。 「どういう意

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トガノイバラ#88 -4 悲哀の飛沫…29…

トガノイバラ#88 -4 悲哀の飛沫…29…

「来海、なにをしている来海! ……くっ。彼らを中に入れるな、絶対に入れるな!」  張間の裏切りにあい、頼みの来海も殴り倒され、卦伊はほとんど半狂乱になっていた。ようやくうめき声を上げはじめた来海を叩き起こそうとし、母屋を護る襷掛けの女性陣に声を荒げて命令する。  母屋まであと一歩というところで、伊明たちの行く手がふさがれた――といっても、六尺棒を構えた女性がたった二人。ほかの女性陣は、おそらく御影たちが侵入するときに倒してしまったのだろう。それを見ていたからか、二人の顔に

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トガノイバラ#87 -4 悲哀の飛沫…28

トガノイバラ#87 -4 悲哀の飛沫…28

◇  ◆  ◇  ◆  ――……ザザ……――……ザザザ……――  ――……ちら……、こ……かげ……、……がい……ます……――  ――……こちら……御影……です、……応答……い……ます――  ――……こちら御影征吾です、応答願います。聞こえましたら応答を―― 『よっしゃあ! ――俺や、佑征や。ようやった征吾、報告せえ』 『佑征さん。ジャミング装置の破壊は、あ、指揮とってるの俺やないですけど、このとおり成功したようです。僕らは佑征さんの指示どおり、おたから探しをしとるんです

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トガノイバラ#86 -4 悲哀の飛沫…27…

トガノイバラ#86 -4 悲哀の飛沫…27…

◇  ◆  ◇  ◆  一方、庭の中央あたりである。  地面に突っ伏していた遠野が、うめきながらのっそりと起きあがった。 「あんのクソガキ……」  ずいぶんと気軽に、人様の頭だの腹だのを棒切れでぶん殴り、蹴ッとばしてくれたものだ。人体には脳みそやら内臓やらがぎっしり詰まっていることを奴は理解っているのだろうか。壊れたテレビやなにかと勘違いしてないかとボヤきたくなるくらい、奴――クルミだかピスタチオだか知らないが、一撃一打に容赦がなかった。  伊明を琉里のもとへやった

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トガノイバラ#85 -4 悲哀の飛沫…26…

トガノイバラ#85 -4 悲哀の飛沫…26…

 来海は血の付着した角材で肩をとんとん叩きながら、張間の後ろに隠れている由芽伊を見、伊明を見る。その顔には迷いもなければ躊躇もない。品定めをする。獲物を選ぶ。――ただそれだけ。 「どっちが先がいいですかね」 「任せるよ」  来海にとっては卦伊の命令こそ絶対で、相手が誰かなんてまったく関係ないらしい。たとえ宗家の人間だろうが、女だろうが、子供だろうが――和佐や柳瀬にしたのと同じことを、きっと、平然とやってのけるのだ。  虚無になりかけた伊明の感情が、  まもののような来

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トガノイバラ#84 -4 悲哀の飛沫…25…

トガノイバラ#84 -4 悲哀の飛沫…25…

「構わないよ、張間」  外廊下から庭に降り、二、三歩進んだところで足を止め、おもむろに卦伊が言った。場違いなほど涼しい顔をして、庭をぐるりと見まわしながら。 「は、構わない、とは……?」  真意が掴めず、張間が訊き返す。  腰にくっついていた由芽伊は、卦伊を――父親を見るなり逃げるように張間の影に隠れてしまった。顔半分をのぞかせて、卦伊の顔色を窺っている。 「構わないとは、構わなくていいということだよ。由芽伊が邪魔なら、由芽伊ごと片付けてしまっていい」 「……は?」

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トガノイバラ#83 -4 悲哀の飛沫…24…

トガノイバラ#83 -4 悲哀の飛沫…24…

 限界だった。琉里は張間に向かって駆けだした。  黙って見ているなんて、どうしてもできなかった。  それは――それだけは、琉里のなかのなにかが許さなかった。  地面を蹴り、跳躍する。  すばしっこさとこのバネこそが「たいしたものだ」と父を言わしめ、伊明に舌を巻かせることのできる、女性であり小柄な彼女の体術における長所だった。  張間の肩を横から蹴りこむつもりだった。が、予期していたかのように太い腕で防御され、そのままぐいと押し返される。  ――逆らうな。利用しろ。

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悪女に憧れる(笑)
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悪女に憧れる(笑)

こんにちわ!ひとみです。 今回もよろしくお願いいたします(*^-^*) わたし、 かなりえぐい小説とか 好きなんですね。 …いきなりですね(>_<) 「羊たちの沈黙」 シリーズは 全部持っていますし、 ジェフリー・ディーヴァ―の シリーズも すべて持っています。 横溝正史も すべて持っています(笑) だいぶヤバいですね(笑) 「自由の定義」でも 書きましたが、 バンパイアのことも かなり好きで、 B級映画でも しっかり観てしまいます。 子どものころに 憧

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トガノイバラ#82 -4 悲哀の飛沫…23…

トガノイバラ#82 -4 悲哀の飛沫…23…

◇  ◆  ◇  ◆  ただ突っ立っていることしかできないのが、琉里には悔しい。  伊明の血の匂いに、また意識が持っていかれそうになる。せめて視界に入れないようにするしか、琉里にはできない。  彼の――張間の強さは診療所で痛感している。自分では歯が立たないだろうこともわかっている。遠野でも、父ですら、勝利が見えないと思うほどの相手だった。  技術的なものもある。実戦の慣れ方も違う。  でもそれ以上に、己のもつギルワーへの憎悪と、御木崎家というシンルーの一族に対して、忠

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トガノイバラ#81 -4 悲哀の飛沫…22…

トガノイバラ#81 -4 悲哀の飛沫…22…

 伊生はとっさに後退った。しかし実那伊の腕はほどけず、縺れるように畳の上にしりもちをついてしまった。開いた膝のあいだには彼女がやはり離れずに収まっている。 「伊生さんのそんな顔、初めて見たわ」  くすりと笑う。  なんという狂気的な微笑みか。 「……なにを考えてる、実那伊」 「言ったでしょう。全部捨てて、白紙に戻してやり直すの」  おそろしく無邪気な声で実那伊はいう。 「伊明には死んでもらう。識伊にも由芽伊にも死んでもらう。――私の血を、返してもらうの」  伊生

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