#エッセイ
心温まる韓国エッセイ『あなたを応援する誰か』
人はなぜ誰かが書いたエッセイを読んだり、絵を見たり、歌を聞いたり、詩を読んだりするのかと、時々考えることがあります。
人間が生命を維持していくために必要なものは、水と空気と衣食住。けれども、長い人生それだけでは心もとないもので、生き抜くための知恵や技術、助け合う仲間、娯楽なんかも必要になってきますよね。
なぜこの世に生まれ、いつまで生きられるのか?そんな答えの出ない問いを抱えながら何十年
韓国に住む日本のおばちゃんが読んでみた。 『台湾はおばちゃんで回ってる?!』
人が見知らぬ誰かに対して親近感を抱く瞬間って、相手が自分と似たような経験をしていたり、共通項や共感できることが多かったりした時じゃないかと思うんですが、みなさんはどうでしょうか? 例えば私の場合、ある女性のプロフィールにこんなキーワードが並んでいるのを見て、とても親しみを抱きました。
80年代前半生まれ、編集者、ライター、海外移住、離婚、再婚、国際結婚、ステップファミリー、男の子の母。ここま
一冊の書に歴史あり 『書籍修繕という仕事(어느 책 수선가의 기록)』
私は幼い頃から本が好きで、書店や図書館のように本がたくさんある場所も大好きです。これまでいろんな土地で暮らしてきましたが、どこに行っても私のそばにはいつも本がありました。
こう書くと、「文学少女」や「本の虫」といった印象をもたれるかもしれませんが、実際はちょっと違います。書棚に並んだ本の背表紙をただ眺めているだけの日もあるし、本を開いたとたんに眠ってしまう日も多いし、かばんの中に本を入れたま
「いいかげんなイタリア生活」と日韓のルッキズム
ルッキズムとは〝見た目の良し悪しで人の価値をはかること〟で、日本では外見至上主義と言われていますよね。
日本で暮らしていた時は「もうちょっと痩せたらいいのに」、「化粧ちゃんとしたら?」、「よく二の腕出せるね」などと身近な人に言われたり、人と会った時に頭の上から足の先まで舐めるようにチェックされることがよくありましたが、韓国でも身内から「太った?」とか「皮膚科行ったら?」と容姿について時々言及
のだめと、志のぶと、ダメママと。 《泣きたい夜は漫画を読もう》
生きていると誰にでも、大なり小なり大変なことや辛いことが起こるわけですが、それを笑いに変えてしまえる人って素敵だと思いませんか?クラシックをテーマにした音楽コメディ漫画『のだめカンタービレ』の作者、二ノ宮知子さんは、私の中でまさにそんな人。
二ノ宮さんの作品を知ったのは、札幌で暮らしていた大学時代、NHKで放送されたドラマ『農家のヨメになりたい』(深田恭子、中村俊介出演)を観たのがきっかけで
映画『アジアの天使』が導いてくれた出会い
札幌で過ごした学生時代から、韓国に移住するまでの十数年。私の趣味は「映画館で映画を観ること」だった。ところが、韓国で妊娠・出産・育児を経験してきたこの4年。映画館にはたった3回しか足を運ぶことができなかった。
最後に出かけたのは2年前だ。当時1歳になったばかりの息子を産後初めて夫に任せ、一人で韓国映画『82年生まれ、キム・ジヨン』を観に行った。
物語の中盤、私の目から涙がこぼれ落ちそうに
俵万智×辻仁成の短歌教室で学び、亡き佐々部清監督を思った日。
昨夜、歌人の俵万智さんと、作家の辻仁成さんによるオンライン講座「日々を丁寧に生きるための短歌教室」に参加した。3歳児の長引く風邪がどうやら私にもうつってしまい、アラフォーの身体は前日からフラフラ。なので、今回の参加は諦めかけていたのだけれど、昨年12月に開催された1回目がすごくおもしろかったのと、看病疲れの心に何か潤いが欲しく、開催当日の朝になって申し込んだのだった。
前回はこまめにメモを取
生活をおもしろがることについて考えてみた。〜星野源、樹木希林、辻仁成の言葉に触れて〜
20歳の頃、2年通った大学を辞め、北海道で数か月間住み込みのアルバイトをしていた時期があった。午前中の仕事が終わると、よく街の小さな図書館へ行き、作家名順に並ぶ書棚をあ〜わ行までくまなく眺め、気になった本を手当たり次第読んでいた。
読んだ本や観た映画の内容は、時間が経つとすぐ忘れてしまうたちなので、当時何を読み、どう感じたか?今はほとんど思い出せない。だけど、誰かがおすすめの本を紹介してくれ
書けない時にどう過ごすか
年が明けてから急に体調が悪くなり、この1か月半、だましだまし過ごしてきた。理由はよくわからない。最初は目が開けられなくなり、肩と背中が重くなり、物事に集中できなくなった。その上、2歳になる息子のイヤイヤ期が突然始まった。何でもかんでも「싫어싫어(イヤイヤ)」と首を振り、泣き叫び、つないだ手は振り払う。噂には聞いていたけれど、この自己主張はすさまじい…!
まだ「싫어싫어」と正確に発音できない息
カフェでまた、会いましょう。
昨日、ずっと会いたかった韓国人の友人と3か月ぶりに再会した。彼女は同じ年で子育ての真っ最中であり、パートナーが外国人(日本人)。しかも、学生時代に抱いていた夢や経験してきた職業も似通っているという、たくさんの共通点がある女性だ。
お互い在宅で仕事をしていたり、家事や育児で思うように時間がとれなかったりするものの、やっと先週、韓国・首都圏の「社会的距離の確保」が第1段階に引き下げられ、彼女の息
『82年生まれ、キム・ジヨン』を語る② 私と夫に生まれた変化
小説の絶望感を経て、映画で描いた希望 物語の中で、キム・ジヨンは子どもを保育園に預け、再就職を目指すものの、「他人の人格が憑依して思いを語りだす」という言動が増え始め、夫の勧めで精神科を訪れる。小説は男性精神科医のカウンセリングカルテを読むような形で、淡々と物語が進んでいき、丁寧な心理描写や感情的な表現というものがほぼない。
それはこの夏、4世代にわたる在日コリアン一家の人生を描いたミン・ジ
『82年生まれ、キム・ジヨン』を語る① 義母と私と母の物語
50年生まれの義母 数か月前、ソウルから車で2時間ほど離れた田舎町にある夫の実家を訪ねた時、義母がこんな話を始めたことがあった。その時私は台所に立ち、義母と一緒に昼食用のチャプチェ(韓国春雨と肉や野菜を甘辛く炒めたもの)を作っていた。
「結婚して国民学校(小学校)の教師を辞めた時、お父さんがソウルで会社に勤めていたんだけど、息子が生まれて1年経った頃、突然、実家に帰って酪農をしようと言いだして
『魔女の宅急便』のキキが双子の母になっていた
子育てをしていると、すっかり忘れていたはずの子どもの頃の気持ちが、ふと蘇ってくることがある。
例えば、木からポトンとドングリが落ちてきた時。そのドングリを1つずつ集めている時。落ちている枝を拾い、砂に絵を描く時。ナツメを収穫し、籠にポイっと放り投げる時。
そうやって夢中になっている息子の背中に、幼い頃の自分を重ねながら、一緒になってワクワクしていると、ハッとする瞬間があるのだ。私は今日ま