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本や映画のおはなし

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大好きな本や映画、作品にまつわる「人」のお話。
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記事一覧

祝!本屋大賞を受賞した韓国小説と作家たち

祝!本屋大賞を受賞した韓国小説と作家たち

 ポッドキャスト第41回、配信しました。

 今回は先日発表された「本屋大賞」の翻訳小説部門で、韓国の小説が1位と3位に選ばれたというニュースを受けて、私が最近読んだ小説『不便なコンビニ』や『アーモンド』にまつわるお話をしています。今回大賞を受賞された『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』については、過去の配信やnoteの記事をご参照ください。

 作家さんたちがどういう場所や環境で作品を生み出しているの

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この春読みたい!韓国&日本のおすすめ絵本

この春読みたい!韓国&日本のおすすめ絵本

ポッドキャスト第40回、配信しました。今回は韓国と日本の絵本にまつわるお話です。

韓国で子育てしていると韓国の絵本に詳しくなりそうなものですが、わが家では5歳児に日本語を継承したいという思いから、平日は私が日本語の読み聞かせを担当。週末に夫が韓国語で読み聞かせているので、私はこれまで韓国の絵本をじっくり読むことがあまりありませんでした。

時々5歳児にせがまれて、韓国の絵本を韓国語で読むこともあ

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辻仁成とコン•ジヨン。日韓作家のコラボ小説が生まれるまで

辻仁成とコン•ジヨン。日韓作家のコラボ小説が生まれるまで

ポッドキャスト第32話を配信しました。今回は以前noteに書いたお話のつづき、日韓の作家が共同執筆した小説『愛のあとにくるもの』がなぜ誕生したのか?その裏側がよくわかる辻仁成さんのエッセイや、関連映画•本をご紹介するとともに、韓国の女性作家、コン•ジヨンさんとはどんな方なのか?などについてお話ししてみました。

2月6日付けの辻仁成さんの滞仏日記によると、ついにソウルでドラマの撮影が始まったようで

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韓国小説 『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』に救われた年末年始

韓国小説 『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』に救われた年末年始

流行りに乗り遅れるタイプの私は、ここ数年話題になった韓国のドラマや映画、小説、エッセイなどをたぶん、ほとんど観たり読んだりしていない。流行れば流行るほど関心が失せていくというか、「こんなに注目されてるんだから今はいっか」という気持ちになってしまうのだ。何十万部売れた、芸能人の誰々が紹介していた、というお決まりのフレーズにも残念ながらあまり心ひかれない。

それよりも、書店や図書館に出向いて、宝探し

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ついにドラマ化確定。辻仁成、コン・ジヨン著『愛のあとにくるもの』

ついにドラマ化確定。辻仁成、コン・ジヨン著『愛のあとにくるもの』

 実は昔から定期的に読み返したくなる本や、見返したくなるドラマや映画があるんですが、その中の1つが1999年に初版が発行された辻仁成・江國香織共著の小説『冷静と情熱のあいだ』です。断捨離ブームに乗っかって一度手放したこともありましたが、やっぱりまた読みたくなり、数年前の一時帰国中に買い求めました。

 今から5年前、まだ息子が生まれて2か月の頃も、映画『冷静と情熱のあいだ』を見返したくなったことが

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心温まる韓国エッセイ『あなたを応援する誰か』

心温まる韓国エッセイ『あなたを応援する誰か』

 人はなぜ誰かが書いたエッセイを読んだり、絵を見たり、歌を聞いたり、詩を読んだりするのかと、時々考えることがあります。

 人間が生命を維持していくために必要なものは、水と空気と衣食住。けれども、長い人生それだけでは心もとないもので、生き抜くための知恵や技術、助け合う仲間、娯楽なんかも必要になってきますよね。

 なぜこの世に生まれ、いつまで生きられるのか?そんな答えの出ない問いを抱えながら何十年

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韓国に住む日本のおばちゃんが読んでみた。 『台湾はおばちゃんで回ってる?!』

韓国に住む日本のおばちゃんが読んでみた。 『台湾はおばちゃんで回ってる?!』

 人が見知らぬ誰かに対して親近感を抱く瞬間って、相手が自分と似たような経験をしていたり、共通項や共感できることが多かったりした時じゃないかと思うんですが、みなさんはどうでしょうか? 例えば私の場合、ある女性のプロフィールにこんなキーワードが並んでいるのを見て、とても親しみを抱きました。

 80年代前半生まれ、編集者、ライター、海外移住、離婚、再婚、国際結婚、ステップファミリー、男の子の母。ここま

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韓国と縁深い役者たち ~上野樹里、三浦春馬〜

韓国と縁深い役者たち ~上野樹里、三浦春馬〜

 7月7日の七夕になると、毎年思い出す大切な映画があります。それは、亡き佐々部清監督の作品『チルソクの夏』(2004年公開)。

1970年代の山口県下関市と韓国・釜山を舞台に、関釜陸上競技大会を通して出会った日韓の高校生の淡い恋や友情が描かれています。

▲映画『チルソクの夏』予告編。(予告編を見ただけで泣けてくる)

 この映画に出演していた上野樹里さんは2006年、ドラマ『のだめカンタービレ

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韓国の嫁・姑・舅事情① ~漫画『ミョヌラギ』より~

韓国の嫁・姑・舅事情① ~漫画『ミョヌラギ』より~

 今から数年前、子どもを産んで間もない頃だったでしょうか。『ミョヌラギ(며느라기)』というWEB漫画の存在を知りました。書籍化されたものを読もうと思いながら、機会を逃してはや数年。前回の記事で紹介したソウル国際図書展で『ミョヌラギ』作者のブースを見つけたこときっかけに、やっと手に取り読んでみました。

 このタイトルが意味する通り、漫画『ミョヌラギ』では、韓国で嫁(며느리)という立場になった人の多

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人生を変えた「ソウル国際図書展」へ。おすすめ韓国小説も

人生を変えた「ソウル国際図書展」へ。おすすめ韓国小説も

 先日、8年ぶりにソウル国際図書展(以下、ブックフェア)へ行ってきました。場所は江南に位置する総合展示場、COEX。後日新聞記事で、国内外36か国、530の出版社が参加し、5日間で約13万人が訪れていたと知りました。

 私が行ったのは最終日、かつ日曜日ということもあってか、10時にオープンする前から行列ができ、会場は人、人、人で溢れかえっていました。

 このブックフェアとは、読者と作家、出版社

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一冊の書に歴史あり  『書籍修繕という仕事(어느 책 수선가의 기록)』

一冊の書に歴史あり 『書籍修繕という仕事(어느 책 수선가의 기록)』

 私は幼い頃から本が好きで、書店や図書館のように本がたくさんある場所も大好きです。これまでいろんな土地で暮らしてきましたが、どこに行っても私のそばにはいつも本がありました。

 こう書くと、「文学少女」や「本の虫」といった印象をもたれるかもしれませんが、実際はちょっと違います。書棚に並んだ本の背表紙をただ眺めているだけの日もあるし、本を開いたとたんに眠ってしまう日も多いし、かばんの中に本を入れたま

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「いいかげんなイタリア生活」と日韓のルッキズム

「いいかげんなイタリア生活」と日韓のルッキズム

 ルッキズムとは〝見た目の良し悪しで人の価値をはかること〟で、日本では外見至上主義と言われていますよね。

 日本で暮らしていた時は「もうちょっと痩せたらいいのに」、「化粧ちゃんとしたら?」、「よく二の腕出せるね」などと身近な人に言われたり、人と会った時に頭の上から足の先まで舐めるようにチェックされることがよくありましたが、韓国でも身内から「太った?」とか「皮膚科行ったら?」と容姿について時々言及

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続ける勇気がわいてくる。韓国映画『不思議の国の数学者』

続ける勇気がわいてくる。韓国映画『不思議の国の数学者』

 20~30代半ばまでは、映画館で映画を観ることが大好きでした。大学時代の後半を過ごした札幌では講義をさぼったり、さぼらなかったりしながら、「シアターキノ」や、今はなき名画座「蠍座」によく通ったものです。

 関西に戻ってからは、神戸の「元町映画館」や「シネリーブル神戸」に足繁く通ったり、神戸100年映画祭で過去の貴重な名作を大スクリーンで鑑賞したり。大阪の「シアターセブン」「シネリーブル梅田」「

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Netflix『舞妓さんちのまかないさん』を見た、韓国の人に言われたこと

Netflix『舞妓さんちのまかないさん』を見た、韓国の人に言われたこと

 つい先日、Instagramでヨーロッパ在住の日本人女性がNetflixで配信中のドラマ『舞妓さんちのまかないさん』を絶賛しており、是枝裕和監督が総合演出と書いてあったので、早速見てみることにした。

 物語は、青森の中学を卒業したばかりの2人の少女、キヨとすみれが、舞妓になることを夢見て京都の屋形に住み込むところから始まる。修業が始まるや否や、頭角を現すすみれ。一方、キヨはマイペースすぎて明ら

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