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書けない時にどう過ごすか

 年が明けてから急に体調が悪くなり、この1か月半、だましだまし過ごしてきた。理由はよくわからない。最初は目が開けられなくなり、肩と背中が重くなり、物事に集中できなくなった。その上、2歳になる息子のイヤイヤ期が突然始まった。何でもかんでも「싫어싫어(イヤイヤ)」と首を振り、泣き叫び、つないだ手は振り払う。噂には聞いていたけれど、この自己主張はすさまじい…!

 まだ「싫어싫어」と正確に発音できない息子が「チロ、チロ〜」と駄々をこねるたびに、同じレベルになって「チロ、チロ〜」と泣いてみるか、「じゃあ勝手にして」と無視するか、マリア様の心で朗らかに「何が嫌なの?どうしたいの?」と聞いてあげるか…などと瞬時にいろいろ考えてみるのだが、自分の身体のコンディションが悪いと、結局「うるさーい!!プンプン」と口調きつめで怒り気味に対処してしまうのである。そして「子ども相手に何やってんだろう、私」と自己嫌悪。

 幸い、唯一の頼りである相方が、最近やっと最後まで投げ出さず息子の面倒を見られるようになってきたので、平日は無理だけど、休日どうしても辛い時は、数時間息子から離れて部屋に籠ることができるようになった。

 そこで、読みかけの本、書きかけの文章、韓国語の勉強のために始めた翻訳に取り掛かろうとするものの、身体が痛いのでどうにも集中できず。結局、ただ寝転んでいるだけでも楽しめるドラマの世界に入り込むことにしたのだった。

 選んだドラマは韓国の作品ではなく、過去に日本で放送されていたものだ。1つは臓器提供のために作られたクローン人間として生きる若者の人生を描いた『わたしを離さないで』と、筋萎縮性側索硬化症(ALS)という難病と向き合い今を生きる若者を描いた『僕のいた時間』。いずれも昨年夏に逝ってしまった故・三浦春馬が主演の作品だった。

 もともとテレビよりラジオ派で、韓国語を勉強し始めた11年前からは特に、日本の番組より韓国のドラマや映画を好んで見ていたので、正直言って彼の出演作品はほとんど見たことがなかった。でも昨年、命の長さや生死について考えざるを得ない出来事が続いていた時、一人の若き俳優が自らの手で生涯を終えてしまい、彼の人生に関心を持たずにはいられなくなった。そして、彼の遺した出演作を見てみたいと思ったのだった。

 しかし、人は言葉にならない悲しみを受け止め、それとしっかり向き合えるようになるまでには、時間がかかるものらしい。夏が終わり、秋が来て、冬ももう少しで終わりを告げようとしている今になってやっと、「よし、見よう」と決心がついた。

 まだ長時間パソコンの前で文章を書く体力がないので、物語の詳細や感想については触れないけれど、いずれも「人はなぜ生きるのか?」「何のために生きるのか?」「与えられた生をどう生きるのか?」という、根源的な問いについて考え、自分の人生をまっとうしようとする若者の姿が描かれていた。

 こういうことを話題にすると、「そんな重いまじめな話…」と言って目を背けたがる人が多いし、実際にそう言われたこともあるし、なんとなく、今まで堂々と話したり書いたりしづらかったのだけど、今回これらのドラマを見て、もうそうやって人に何と言われるのかを気にして自分の発言を控えて生きるのはやめよう、と思った。

 誰しもそうだと思うけれど、私ももう40年近く生きてきていろいろなことがあったし、いつまで生きられるのかもわからないし、たった一度の人生なのだから。これからは誰にも遠慮せずに思ったことを話し、書き、「私も生きることについて、人と深く話したかったんだよ」という同志と、もっとたくさん出会っていきたい。

 私は真面目な話がしたいんだよ。生きるってどういうことなのか?そういうことを深く考えて、自分なりに哲学をしてきた人、表現してきた人と出会ってたくさん話したい。そういう時に一番幸せを感じるし、ずっとそういう仲間を探し求めてきたから。

 ファンでも何でもなかった私が三浦春馬という俳優の旅立ちにこんなにも影響を受けたのは、彼の遺した言葉や、作品に向かう姿勢を知るたびに、同じ時代に生きていた同志を失ってしまったように感じたからだと今は思う。

 彼の訃報が大きなきっかけとなり、私は8年続けたブログをやめ、昨年秋に新しくこのnoteを始めた。自分なりの表現の形はまだ見つかっていないし、毎日なかなか思うようにいかないことばかりだけど、それでも、その葛藤をここに書き残しておくことは、私が生きている証になるんじゃないだろうか。

 書けない時には、他にやりたかったことをやる。すると、書くこととは別の筋肉が動く。動くと新たな感情が生まれ、少し書きたくなる。その繰り返し。そんなリハビリのような毎日はもう少し続きそうだ。


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