西岡泉

おもに詩を書いています。あとはプータローしています。

西岡泉

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記事一覧

朝の7時頃夢をみた

トイレに行ったら タケシが先に入っていた 自転車で駅まで送って行ってよ いつの間にかスーツに着替えていたタケシが言った タケシを乗せて自転車をこぐのは重たいなあ 嫌…

西岡泉
3日前
144

僕の装備品

君のことを愛したいのに どうしても愛することができない せめて友だちでいたい でも君は 僕の言うことなど聞きもしない いきなり襲ってくる 刺せるところならどこでも刺し…

西岡泉
10日前
179

兵隊だったことがある

JR灘駅を 山側に歩けば王子公園に 海側に歩けば 私が毎日働いていた会社に 行き着く 灘駅から会社に向かう道の途中に 肉とマッコリがたまらなく旨い焼肉屋がある 毎朝八…

西岡泉
2週間前
218

又三郎のいうことには

さわやかな九月一日の朝 小学校の窓ガラスをがたがた鳴らせて 風の又三郎が帰ってきた ゴーシュがもうセロを弾けなくなったぞ 年取って指が動かねえって シューマンのトロ…

西岡泉
3週間前
214

雨の神

雨の日も椋鳥は鳴く 欅の枝に群れに群れ 鳴くに鳴く 世界中の欅の葉を集めたよりも多く ただ 鳴くに鳴く まるで 打ちまちがえたメールが 空を飛び交うように 少女は心を…

西岡泉
1か月前
215

採集する夏

桃をかじったあとは 執念深い繊維が歯にからみつく いつもこうだと思いながら 唾を吐く 道の真中を歩いたら雷にうたれるきに 注意しいや 祖母は しゃぶりつくした魚の骨を…

西岡泉
1か月前
230

ありのまま

ありのまま ありのまま 人間の子供に捕まって コップの底に沈められそうになったことがある 子供が勉強部屋に戻った隙に キッチンから逃げだした 玄関の隅に隠れていた ト…

西岡泉
1か月前
225

海に書いたラブレター

老いぼれてたどり着いた 鄙びた教会で 涙ながらに 牧師から職を与えられた かつての肉体派女優 快楽の極みを死にとりかえた アイドル歌手 彼女はインタビューに こう答え…

西岡泉
1か月前
244

ラバーなこころ

私の決意は1ミリたりとも動きません? 1ミリだって? そんなみみっちいこと言わずに 1000キロでも 500マイルでも 好きなだけ動けばいいじゃないか いったい何を…

西岡泉
1か月前
213

そんなこと

砂場で 三人の子供たちが 自分たちよりも大きな穴を 掘っていた そんなことわかってるよ と言いあいながら 子供たちは 自分たちが掘った穴を 覗き込んでいた どうしても …

西岡泉
2か月前
229

夢のひと

悲しいひとだけがいた ぼくの横に君はいない 悲しいひとがいるだけだ 悲しみを知ったひと 悲しい時に 悲しいと言ってはいけない? そんなことを言う詩人を 信じてはいけな…

西岡泉
2か月前
233

ヒマワリが車から降りてきた

茶色い目をしたヒマワリが 車から降りてきた マリーゴールドも 後ろからついてきた わたしちょっと休みたいの 日当たりのいい部屋にしてね マリーちゃんは 庭で休んでらっ…

西岡泉
2か月前
279

五番目の季節

笑い続けることはできる 泣き続けることができるなら 雨は降り続けることはできる 時間を忘れることができるなら ゆきたいところにゆくことはできる すべてを捨てること…

西岡泉
2か月前
215

日本国際救助隊

どうしても書いておきたいことがある 私はアリをコップの水で溺死させたり、小さなバッタを冷蔵庫の製氷室で凍死させたり、カエルを2B弾で爆死させたりして遊んでいた。…

西岡泉
3か月前
226

何かを置き忘れた朝

何かを置き忘れたような朝 二人の少女が階段を駆け登っていた 既に過去となった未来が 今を目覚めさせる 将来は医者になるのが夢だった少年が 定年を三年後に控えたサラ…

西岡泉
3か月前
270

いいから言ってみな

- ビートルズの “Things We Said Today“ に捧げる - 言ってしまったことは仕方がない 言わなければよかったと 今さら後悔したって仕方がない 想い出は消えても 言っ…

西岡泉
3か月前
251
朝の7時頃夢をみた

朝の7時頃夢をみた

トイレに行ったら
タケシが先に入っていた
自転車で駅まで送って行ってよ
いつの間にかスーツに着替えていたタケシが言った
タケシを乗せて自転車をこぐのは重たいなあ
嫌やなあ
大雨が降って来た
玄関閉めてきて
ミチの声
土砂降りの雨で
大きな渡り廊下がびしょ濡れになっていた
海を泳いでいた
横で白いテリアが懸命に泳いでいた
海の端まで泳いだ
向こうにまた海が見えた
「海だーっ」と犬が叫んだ
犬は子供の

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僕の装備品

僕の装備品

君のことを愛したいのに
どうしても愛することができない
せめて友だちでいたい
でも君は
僕の言うことなど聞きもしない
いきなり襲ってくる
刺せるところならどこでも刺してくる
僕も仕方なく
身を守る
先制攻撃だってする

お互いに相手を尊重し合おう
自分とは違う生き方も認め合おう
君のことを理解しようとした
これまでのことを水に流そうともした
ブーンという音がすべての努力を台なしにする

キンチョー

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兵隊だったことがある

兵隊だったことがある

JR灘駅を
山側に歩けば王子公園に
海側に歩けば
私が毎日働いていた会社に
行き着く
灘駅から会社に向かう道の途中に
肉とマッコリがたまらなく旨い焼肉屋がある
毎朝八時から九時前まで
何百人という社員がその店の前を通った

ザッ ザッ ザッ ザッ
兵隊さんが行進してるみたいやったで
あんたらの足音
韓国人のおばちゃんが私に言った
オレは兵隊だったのか オモニ
ひとは殺さずに
自分を殺していたよ

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又三郎のいうことには

又三郎のいうことには

さわやかな九月一日の朝
小学校の窓ガラスをがたがた鳴らせて
風の又三郎が帰ってきた

ゴーシュがもうセロを弾けなくなったぞ
年取って指が動かねえって
シューマンのトロメライも
弾けねぇって
そういう又三郎もずい分年を取って
風のマントがよれよれになっていた
杖をついた三人の老人たちが
教室に集まってきた
嘉助と佐太郎と耕助だった
これからゴーシュのところに行くぞ

イギリス海岸に沿って町に向かい

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雨の神

雨の神

雨の日も椋鳥は鳴く
欅の枝に群れに群れ
鳴くに鳴く
世界中の欅の葉を集めたよりも多く
ただ 鳴くに鳴く
まるで
打ちまちがえたメールが
空を飛び交うように

少女は心を折り畳んで
雲母のように光る小箱にしまう
涙が渇いても
まだ残っているものがある

ぼくが君だった頃
ため息には価値があった
昼間に
空に飛んで行った魂が
夜には欅めがけて帰ってくる
君はまだ泣くことができるだろう?
血管の中には

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採集する夏

採集する夏

桃をかじったあとは
執念深い繊維が歯にからみつく
いつもこうだと思いながら
唾を吐く

道の真中を歩いたら雷にうたれるきに
注意しいや
祖母は
しゃぶりつくした魚の骨を
冷や飯の上にのせて
茶漬けにして食べていた

高知県香美郡土佐山田町
八井田病院のみえる川辺で
ぼくはアオハダトンボをまちうけていた
青い半ズボンに木綿のランニングシャツ
肩には三角罐をかけている
(木綿ではなくナイロンのシャツだ

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ありのまま

ありのまま

ありのまま
ありのまま

人間の子供に捕まって
コップの底に沈められそうになったことがある
子供が勉強部屋に戻った隙に
キッチンから逃げだした
玄関の隅に隠れていた
トノサマバッタの背中に乗って
命からがら
庭の草むらへ飛び込んだ
逃げ遅れた友達は
キュキュット除菌洗剤の泡を全身に浴びて
ステンレスの流し台の上で
息絶えていた

ありのままでいることはキケンだ
いつ人間にひどい目にあわされるか分か

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海に書いたラブレター

海に書いたラブレター

老いぼれてたどり着いた
鄙びた教会で
涙ながらに
牧師から職を与えられた
かつての肉体派女優

快楽の極みを死にとりかえた
アイドル歌手
彼女はインタビューに
こう答えた

 <今年は賞をいただいて最高に幸せでした
  来年もがんばります>

海と戯れるときのあなたの肌は
原始の輝きを蘇らせる
ぼくらは海に由来する生き物なのだ

それにしても
ぼくらに肉体があるとは!

波は塩辛い想い出を
砂浜に

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ラバーなこころ

ラバーなこころ

私の決意は1ミリたりとも動きません?
1ミリだって?
そんなみみっちいこと言わずに
1000キロでも
500マイルでも
好きなだけ動けばいいじゃないか

いったい何を言いたいの?
1ミリだって?
動いたかどうか
どうやって測るんだい?
こころを定規で測れないだろ
ずるしちゃだめだよ

こころはラバー・ソウル
ラバーは伸びたり縮んだり
ソウルは魂
靴底でもいいけど
こころが空っぽで
ああ はち切れそ

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そんなこと

そんなこと

砂場で
三人の子供たちが
自分たちよりも大きな穴を
掘っていた
そんなことわかってるよ
と言いあいながら
子供たちは
自分たちが掘った穴を
覗き込んでいた

どうしても
こころが通い合わない
そんなことがある
書いた手紙を
出すかどうか迷う
そんなことが
君にもあっただろう
やりたくない
そんなこと
人生はそんなことで満ちている
その気になれば
変えることができる
そんなこと
砂場の子供たちよ

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夢のひと

夢のひと

悲しいひとだけがいた
ぼくの横に君はいない
悲しいひとがいるだけだ

悲しみを知ったひと
悲しい時に
悲しいと言ってはいけない?
そんなことを言う詩人を
信じてはいけない
通りやすいところばかり通っていると
行きたいところに行けなくなる

夢のひと
夢のなかに君はいない
悲しい人がいるだけだ
君の顔をたしかに見た場所がある
心を合わせれば
行けたかも知れない
オレンジ色に光る夕空の果て
君を呼び続

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ヒマワリが車から降りてきた

ヒマワリが車から降りてきた

茶色い目をしたヒマワリが
車から降りてきた
マリーゴールドも
後ろからついてきた

わたしちょっと休みたいの
日当たりのいい部屋にしてね
マリーちゃんは
庭で休んでらっしゃい

ヒマワリをサンルームに案内してあげた
細い首の上で頭がゆらゆら揺れていた
大谷翔平のボブルヘッド人形みたいだった
オレンジジュースを出してあげたら
ストローで器用に飲んだ

私の種はまだ食べないで
そう言ってまばたきしたら

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五番目の季節

五番目の季節

笑い続けることはできる
泣き続けることができるなら

雨は降り続けることはできる
時間を忘れることができるなら

ゆきたいところにゆくことはできる
すべてを捨てることができるなら

企はこのようにいつも
タイトルも与えられないまま取り換えられた

物語にはおわりがある
うそにはおわりがないように

夢にはおわりがある
鉄格子にはおわりがないように

愛の唄にはおわりがある
わかれにはおわりがないよ

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日本国際救助隊

日本国際救助隊

どうしても書いておきたいことがある

私はアリをコップの水で溺死させたり、小さなバッタを冷蔵庫の製氷室で凍死させたり、カエルを2B弾で爆死させたりして遊んでいた。いったいどれだけの命を奪ったことか。そんな遊びに耽っていた子供の頃からずっと考えていることがある。それは、自衛隊を軍隊ではなくて、あの「サンダーバード」のような国際救助隊に変えることはできないかということである。「サンダーバード」とは世界

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何かを置き忘れた朝

何かを置き忘れた朝

何かを置き忘れたような朝
二人の少女が階段を駆け登っていた

既に過去となった未来が
今を目覚めさせる

将来は医者になるのが夢だった少年が
定年を三年後に控えたサラリーマンに
なってしまっていた
そんな現在の自分にがく然とする
というようなことなのか

そんなしょぼくれたことじゃないだろう
夕べ寝る前は明日だったはずなのに
夜が明けたら今日になっていた
今からどうやって生きていけばいいんだ
と布

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いいから言ってみな

いいから言ってみな

- ビートルズの “Things We Said Today“ に捧げる -

言ってしまったことは仕方がない
言わなければよかったと
今さら後悔したって仕方がない
想い出は消えても
言ってしまったことは消せない
取り返しがつかなくなっても仕方がない
もう言ってしまったんだから
そう言おうと思って
言ったんだろう?
だからいいじゃないか
言わなかったことにして欲しい
なんてこと言いだしたら

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