西岡泉

おもに詩を書いています。あとはプータローしています。

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秋に手紙を出してきた(詩集版+動画)

秋に手紙を出してきた 時候の挨拶は 省略した いつまた会えるか 分からないから 夜の藍色のインクで 手紙を書いた インクが乾く頃 手紙は風に乗って 配達されるだろう 秋の住所は不明にしても 自分の目で見ていないものは 詩には書けない 目に見えないものを 言葉にできなければ 詩ではない うまくいったためしなどない 思い切って口にすると 忘れていた歌を 想い出すことがある たとえば ズー・ニー・ヴーの 『白いサンゴ礁』 言葉が 想い出を運んでくるのか 忘却の深さが 言葉を想

    • 採集する夏

      桃をかじったあとは 執念深い繊維が歯にからみつく いつもこうだと思いながら 唾を吐く 道の真中を歩いたら雷にうたれるきに 注意しいや 祖母は しゃぶりつくした魚の骨を 冷や飯の上にのせて 茶漬けにして食べていた 高知県香美郡土佐山田町 八井田病院のみえる川辺で ぼくはアオハダトンボをまちうけていた 青い半ズボンに木綿のランニングシャツ 肩には三角罐をかけている (木綿ではなくナイロンのシャツだったような気もする) 食欲と好奇心だけでよく生きれたものだ 風に砂が舞う砂漠の

      • ありのまま

        ありのまま ありのまま 人間の子供に捕まって コップの底に沈められそうになったことがある 子供が勉強部屋に戻った隙に キッチンから逃げだした 玄関の隅に隠れていた トノサマバッタの背中に乗って 命からがら 庭の草むらへ飛び込んだ 逃げ遅れた友達は キュキュット除菌洗剤の泡を全身に浴びて ステンレスの流し台の上で 息絶えていた ありのままでいることはキケンだ いつ人間にひどい目にあわされるか分からない ありのままでいられなくて 毎日のように学校をさぼっていた もう人間には戻

        • 海に書いたラブレター

          老いぼれてたどり着いた 鄙びた教会で 涙ながらに 牧師から職を与えられた かつての肉体派女優 快楽の極みを死にとりかえた アイドル歌手 彼女はインタビューに こう答えた  <今年は賞をいただいて最高に幸せでした   来年もがんばります> 海と戯れるときのあなたの肌は 原始の輝きを蘇らせる ぼくらは海に由来する生き物なのだ それにしても ぼくらに肉体があるとは! 波は塩辛い想い出を 砂浜に浸み込ませては引き 海は水平線の向こうで 空の涙を拭っている 夏にこういえばよか

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        秋に手紙を出してきた(詩集版+動画)

          ラバーなこころ

          私の決意は1ミリたりとも動きません? 1ミリだって? そんなみみっちいこと言わずに 1000キロでも 500マイルでも 好きなだけ動けばいいじゃないか いったい何を言いたいの? 1ミリだって? 動いたかどうか どうやって測るんだい? こころを定規で測れないだろ ずるしちゃだめだよ こころはラバー・ソウル ラバーは伸びたり縮んだり ソウルは魂 靴底でもいいけど こころが空っぽで ああ はち切れそうだ 1000キロでも 500マイルでも 飛んでゆくよ 君のいるところへ 電車

          ラバーなこころ

          そんなこと

          砂場で 三人の子供たちが 自分たちよりも大きな穴を 掘っていた そんなことわかってるよ と言いあいながら 子供たちは 自分たちが掘った穴を 覗き込んでいた どうしても こころが通い合わない そんなことがある 書いた手紙を 出すかどうか迷う そんなことが 君にもあっただろう やりたくない そんなこと 人生はそんなことで満ちている その気になれば 変えることができる そんなこと 砂場の子供たちよ 掘った穴の底に何か見えたかい? そんなことないよ 愛してる 雲に約束した とにか

          そんなこと

          夢のひと

          悲しいひとだけがいた ぼくの横に君はいない 悲しいひとがいるだけだ 悲しみを知ったひと 悲しい時に 悲しいと言ってはいけない? そんなことを言う詩人を 信じてはいけない 通りやすいところばかり通っていると 行きたいところに行けなくなる 夢のひと 夢のなかに君はいない 悲しい人がいるだけだ 君の顔をたしかに見た場所がある 心を合わせれば 行けたかも知れない オレンジ色に光る夕空の果て 君を呼び続けている 止まらない血のように 君は夢の方へ駆けて行った 君が君でなくなるくら

          夢のひと

          ヒマワリが車から降りてきた

          茶色い目をしたヒマワリが 車から降りてきた マリーゴールドも 後ろからついてきた わたしちょっと休みたいの 日当たりのいい部屋にしてね マリーちゃんは 庭で休んでらっしゃい ヒマワリをサンルームに案内してあげた 細い首の上で頭がゆらゆら揺れていた 大谷翔平のボブルヘッド人形みたいだった オレンジジュースを出してあげたら ストローで器用に飲んだ 私の種はまだ食べないで そう言ってまばたきしたら おおきな茶色い目から 涙がポロポロこぼれ落ちた ヒマワリの涙を 拭いてあげた

          ヒマワリが車から降りてきた

          五番目の季節

          笑い続けることはできる 泣き続けることができるなら 雨は降り続けることはできる 時間を忘れることができるなら ゆきたいところにゆくことはできる すべてを捨てることができるなら 企はこのようにいつも タイトルも与えられないまま取り換えられた 物語にはおわりがある うそにはおわりがないように 夢にはおわりがある 鉄格子にはおわりがないように 愛の唄にはおわりがある わかれにはおわりがないように おわりはこのようにいつも ねじれて訪れた 街では 靴下よりも安い優しさ

          五番目の季節

          日本国際救助隊

          どうしても書いておきたいことがある 私はアリをコップの水で溺死させたり、小さなバッタを冷蔵庫の製氷室で凍死させたり、カエルを2B弾で爆死させたりして遊んでいた。いったいどれだけの命を奪ったことか。そんな遊びに耽っていた子供の頃からずっと考えていることがある。それは、自衛隊を軍隊ではなくて、あの「サンダーバード」のような国際救助隊に変えることはできないかということである。「サンダーバード」とは世界各地で発生した災害や事故で危機に瀕している人々を救助する国際救助隊のことだ。ただ

          日本国際救助隊

          何かを置き忘れた朝

          何かを置き忘れたような朝 二人の少女が階段を駆け登っていた 既に過去となった未来が 今を目覚めさせる 将来は医者になるのが夢だった少年が 定年を三年後に控えたサラリーマンに なってしまっていた そんな現在の自分にがく然とする というようなことなのか そんなしょぼくれたことじゃないだろう 夕べ寝る前は明日だったはずなのに 夜が明けたら今日になっていた 今からどうやって生きていけばいいんだ と布団の中で目が覚めて ぼう然とすることなのか 言葉はいつも遅れてやって来る 過去

          何かを置き忘れた朝

          いいから言ってみな

          - ビートルズの “Things We Said Today“ に捧げる - 言ってしまったことは仕方がない 言わなければよかったと 今さら後悔したって仕方がない 想い出は消えても 言ってしまったことは消せない 取り返しがつかなくなっても仕方がない もう言ってしまったんだから そう言おうと思って 言ったんだろう? だからいいじゃないか 言わなかったことにして欲しい なんてこと言いだしたら 歴史になんないよ 歴史って ぼくらが言ったことが 一杯詰まってるんだろう? 言って

          いいから言ってみな

          泪橋

          目蓋をあけて見え始めてくる 消えかけの風景が好きだ 何があっても踏みとどまろう 近過ぎる夢から 繋げて 繋げて 遠過ぎる夢へ 泪の橋を架ける 風に結わえつけた ほどけかけの記憶 希望ヶ丘商店街の上に 朝焼け空が架かっていた 豆腐屋のおじさんが おばさんと一緒に作った朝一番の豆腐を 冷たい水から掬い上げてくれた 黄昏には 駅に通じる通りに灯りがついて 「ローレライ」のマダムが ほかほかのポークカツを テーブルに運んできてくれた ささやかな生活の秘密のなかにいた もう遭えなくな

          駆けてゆく少年

          少年は 樹木と夕陽と詩が好きだった 少年は樹木を愛し過ぎたので 彼の涙は夜露に似ていた 少年は夕陽を愛し過ぎたので 彼の頬は人に遇うと赫くなった 少年の言葉は少し異様だったので 詩を書くことはいつも少年を傷つけた 機械工場の片隅に 油にまみれた工具と おどけた瞳をもつ仕上工がいて それがかっての少年だったりする 彼の毎日は同じ繰り返しで 一週間が一年に思えたりする あすにはきょうがきのうになり あさってにはあすがきのうになり きのうときょうとあすのあいだから たいせつなも

          駆けてゆく少年

          空の雲の手入れをした

          冷蔵庫から ブルガリアヨーグルトを出す ナイフで輪切りにしたバナナを ヨーグルトの上に乗せる ジャムとシロップは気分次第 ネスカフェゴールドブレンドに 90度に沸かしたお湯を注ぐ頃 チーズトーストが焼きあがる 君はいつもコーヒーを飲み残し ぼくはいつもコーヒーを2杯飲みほす 庭に出て 空の雲の手入れをした ラナンキュラス・ラックスが 朝陽に光っていた 雲は過去形と現在形が 混じっていた 文法上は正しくても 本当のことを言わなくていいのか 地球は乾いていて 冬を忘れた言葉が

          空の雲の手入れをした

          夜が明けるときいちにちは終わる

          夜が明けるとき いちにちは終わる そう信じて生きてきた 息も絶え絶えの夢をみて 夜にはじかれ続けてきた 眠れないものは月の下に集まれ 空の音階に紛れて 海が密かに降りてくるのを待とう 明けがた 苔のように眠り込んでいる もうひとりの自分に逢えるから 飛行機のジェットエンジンが 夜の街を吸い込んでいった 幸せは温かい拳銃 ジョン・レノンの声が 空を掻き回していた 幸せは熱いのか温かいなのか 夏休み明けの朝のような うっとうしい物語が続いている 物語は終わらせなければならない

          夜が明けるときいちにちは終わる