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何かを置き忘れた朝

何かを置き忘れたような朝
二人の少女が階段を駆け登っていた

既に過去となった未来が
今を目覚めさせる

将来は医者になるのが夢だった少年が
定年を三年後に控えたサラリーマンに
なってしまっていた
そんな現在の自分にがく然とする
というようなことなのか

そんなしょぼくれたことじゃないだろう
夕べ寝る前は明日だったはずなのに
夜が明けたら今日になっていた
今からどうやって生きていけばいいんだ
と布団の中で目が覚めて
ぼう然とすることなのか

言葉はいつも遅れてやって来る
過去の方角から来て
心をせきたてる
未来を過ぎて
帰って来る

何かを置き忘れたような朝
二人の少女が階段を駆け上っていた
何かを見つけたのだろうか
足跡が未然形になっていた


(詩集『フンボルトペンギンの決意』第3章「記憶の保存場所」より)
note投稿にあたり一部改訂した。



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