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【小説】「渋谷、動乱」第8話
――まさか、こんなことになるとは。
ハチ公前広場の群衆の波にもまれ、身動きが取れなくなっていた奥田秋生は、当初の計画の変更を余儀なくされつつあった。奥田はネットカフェ「トマリギ」の303号室で、掲示板の監視を行っていた最中、急に立ち上がった箭内聡明に関するスレッドに、渋谷の書き込みを見つけた。さらに、YouTubeでの動画配信を見た瞬間、居ても立っても居られなくなり部屋を飛び出した。出動の時
【小説】「渋谷、動乱」第7話
ハチ公前広場から4車線の神宮通りを挟み、広場全体を見下ろすことが出来るガラス張りのビルの3階のカフェに、予定より早く仕事を切り上げた美容師の藤堂凌太朗の姿があった。藤堂が聞いたあの地鳴りからすでに、3時間近くが経過していたが、仕事中も耳鳴りのように、あの地鳴りが反響し続けていた。藤堂は絶対音感を持っていたわけではなかったが、音のことに関して、自分が聞いた音がどこから、何から発せられているのか、同
もっとみる【小説】「渋谷、動乱」第5話
YouTuberの錦戸愛斗と野間紅が待機していた場所から、渋谷駅の構内へと下る階段を挟み、ハチ公前広場にでんと置かれている東急5000系の電車、通称「青ガエル」の前には、時間にして10分ほど前から、示し合わせたかのように、10代から20代の若者たちが集まり始めていた。皆、スマートフォンに視線を落とし、その場に集うほかの若者たちの顔を見る素振りを一切見せないことから、彼らが単に、この場所で友人や恋
もっとみる【小説】「渋谷、動乱」第4話
スクランブル交差点から、地下を東急田園都市線が走る道玄坂の大通りを進み、間もなく右手に見えてくるセンタービル手前の信号を左に折れ、ラーメン屋や寿司屋、焼き肉屋などの飲食店が軒を連ねる2車線の細い通りに、奥田秋生がよく利用するネットカフェはあった。
ビルの表の立て看板には、黄色の背景に赤字でデカデカと、「24時間無料」の文字が躍っていた。店内は、他のネットカフェと大きな違いはないのだが、この街に
【小説】「渋谷、動乱」第2話
大澤美桜が、高校時代の友人の中村早矢香と、あらかじめ調べに調べ尽くしたルートを通り、その街の裏通りにある、知る人ぞ知る古着屋を訪れようと思ったのは、その日が初めてだった。
地下鉄のホームからエレベーターで地上に上がり、新宿駅の改札を抜け、平日の真昼間にもかかわらず、若者たちの姿でごったがえす竹下通りに出た時、すでに2人はかなりの体力を消耗していた。自宅のアパートから、今日だけ特別にタクシーに乗
【連載】「灰かぶりの猫の大あくび」#20【RPG編~黄泉がえりは突然に~】第3話
前回のあらすじ
城跡へとやってきたアイとミヤビの二人は、難なくターミネーターの正体を突き止める。それは外ならぬ、モノリスだった。モノリスが流した「カントリー・ロード」を聴き、現世での記憶をすべて取り戻した二人は、いよいよ灰かぶりの猫の復活のため、時空ゲートを通り、時の最果てへと向かう。
登場人物
アイ
夏目愛衣。黄昏新聞の新米記者。アニメ好き。今期放送中の『怪異と乙女と神隠し』の化野乙ちゃん
【連載】「灰かぶりの猫の大あくび」#19【RPG編~黄泉がえりは突然に~】第2話
前回のあらすじ
見知らぬ家で目覚めたアイは、母親らしき人物にそそのかされ、地元の神社の例大祭に赴く。そこで行われていたテレポーテーションショーに参加したところ、何の因果か別の時空へと転送される。転送先の魔物の森で出会ったミヤビという剣豪と共に、町で情報収集に当たった後、町の西にある城跡にターミネーターが出ると言う噂を聞き、二人は正体を突き止めるため、城跡へ向かう。
登場人物
アイ
夏目愛衣と