そして誰も来なくなった File 16

「美里、知らなかったのか?」 僕は意外に思って美里に確かめた。彼女は少し俯いて肯定する。 「うん。私が遺体を運んだばっかりに事件を混乱させたのが気になって、私のこと以外を喋る余裕が無かったの」 「仕方ないわ。まあ、状況が状況だったし、厳罰にはならないでしょう。執行猶予になるかもし…

毎日更新クリアのためにシリーズものの記事や連作記事を多用するのは要注意!

noteのアカウントを育てるために毎日更新して、noteの連続投稿記録を伸ばすことは、とても大事なことなんですが、毎日の記事更新に追われて大変な思いをすることも事実ですよね。 だからといって安易な気持ちで、投稿する記事ネタをシリーズものにしたり続きものの話を持ってきて連作シリーズにしてし…

連作詩「flos」

本作は、R Sound Design氏の「flos」に登場する花および花言葉を題材にした連作詩です。作曲者であるR氏と原曲に敬意を込めて。 Daphne(沈丁花)貴方は 私を か弱いと お思いでしょう 本当は 私が 貴方に そう 思わせているのです 来るべき時のために 私は 貴方に しなだれているのです 花…

短歌連作 - 六月

六月   坂中 茱萸 うつくしいものを教えて 空港の窓とかガソリンの揺れかたとか お逃げなさい 頭痛は日々にとけだしてあなたの生きる六月がある 風ばかりよく笑っている公園で紫陽花もこもこと茂っている 好きな街がないのがあなたの長所だからわたしと工作をしてほしい 風さらさ 映画のあ…

『海の見える街で』

好きだった夏の音楽 海沿いの少女が毎日聴いてた音楽 少年の抱えるギターのアルペジオ 跨線橋が風に揺られて 身体より少し冷たいビー玉のほのかな青に光は滲む 紫陽花の薄桃色の髪飾り 雨の予感を髪にまとって 海風を詩に閉じ込めて壊れないようにノートの中に隠そう 肩を寄せる二つの自動販売…

そして誰も来なくなった File 10

大学に入ってから体育の授業を取らなくなり、運動不足だった足がすでに悲鳴を上げている。豆電球が列になって続く青白い通路を、マーガレットの背中を追いかけて歩く。羨ましいほどの長い足をしているので、歩幅も大きく、小柄な美里はついていくのに必死だった。 「どれだけ歩くんですか?」 とうと…

やすみじかん【短編小説】

 その人は、雨降る中、薔薇の下のベンチにいた。  薔薇公園と呼ばれるその憩いの場は、文字通りさまざまな種類の薔薇の花が有名だった。入り口から庭園の奥へと伸びるモッコウバラのアーチを抜けると、公園と周りの住宅街を隔てるかのように、たくさんの薔薇があちこちに生い茂っていた。垣根の一つ…

私の好きな短歌連作5篇(と入りきらなかったのを思いつくだけ)

短歌は基本的に一首で作品が完結するものですが、私は連作という形式で作品を読むのも好きです。 連作はざっくりいうと、数首〜数十首の短歌の並びを構成して一つの作品とする形式です。何かしらのストーリーが展開するものもあれば、あるテーマのもとで一つの世界観を作り上げるものもあります。 有…

そして誰も来なくなった File 9

飛鳥は二枚の招待状を机に並べて凝視していた。 午前六時。マーガレットが煙のように消えてしまった。彼女の部屋のベッド下やクローゼットのなか、館中のフロアを見て回ったが、結果は徒労に終わった。飛鳥は昨晩のうちに彼女の秘密を訊いておくべきだったと悔やんだ。だが、もはや後の祭りだった。二…

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きるけー