武田ひか

短歌 | ワサビが食べられません

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    短歌の本について書いた文章。感想文であったり、評であったりします。歌集のほうもぜひ手に取ってください。

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    #みんなの2000字 です。 はじめてのnote企画。40人ほどの書き手が『それぞれの思い』を2000字程度でまとめてくれた作品たちです。

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武田ひか、試し読みなど

そういえば、スーパーの試食コーナーってめっきり減ってしまった。ウイルスの流行もその理由だろうが、流行の以前から、既にもう数は多くなかったと思う。 子どもの頃、試食コーナーが大好きだった。欲深い小学生だった。いっかいに三個くらい食べさせてもらっていた気がする。試食コーナーの意味をあまり理解していなかったのだ。車で10分くらい走ったところにあるスーパーの、パサパサのフライドチキンが好きだった。 試し読み、という言葉で、試食コーナーを思い出したのだった。そう、試し読みは良い。パ

    • ほんとうに好きな仕事は体に悪い

      労働力資本を売りはじめて、しばらくが経つ。ヴェイユが『工場日記』をつけたのは89年前。昼食をできるだけ早く食べて、日向ぼっこをし、できるだけ「のろのろ」と歩いて会社に帰るという記述を見つけた時は、おどろいた。それは、私が昼休みにやっている動きのまさにそのままだった。 日本で、労働者として生きている。労働現場の摩訶不思議さ。みなし残業、業務内容が決まっていない状態での採用など、労働者側に不利な慣習がある。平均給与は20年以上上がっていない。物質的には豊かになっている。にもかか

      • 角曲がるたび、風に出会う頬

        『風とマルス』を開いたときに、堀静香さんの文章をふと思い出したのだった。 そういえば、もっと若い頃、10代のときは風なんて気にも留めなかった。今よりずっと周りが見えていなくて、部活の疲れや友達と歩く帰り道、無意味な長電話が生活に自然に組み込まれていた。なにか、触れている時間そのものに価値があったと思う。 何も考えなくても、時間の輝きを感受できていたのかもしれない。しかし、大人になった今振り返るとき、見えていなかったものごとを思う。例えば、それは吹く風のことで、私がスポーツ

        • JOLENTA WYDAWCA 【短歌七首抄】

          ずっと手を振る人たちが遠のいて見えなくなってその繰り返し 硝子片ひろってあるく夕まぐれ何度踏み潰されたのだろう 火刑すらねじ伏せる眼だ掴み取るようにあなたも空を見上げて 遠さへと眼の焦点が合ってゆく釦をはめるようだと思う 硝子瓶叩き割る手を叩き割る手を見つめればかがやきのさなか 星月夜 くつがえることばかりだね背中に薄い手が触れている 乾いている指に指輪の真鍮のいのり そろそろ日がしずむころ ■ わたしは拷問をうけたことがなくて、その痛みを想像できない。彼女が

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          星のように疲れていたり

          タワーレコードの前で待つ友人を見て「星のように」疲れている、と思う。人間には想像も及ばない時間を持つ星を喩えに使って、友人の疲労感を表している。それにしても、星。うつくしく巨大なもの。微妙な日常を切り取っていく『輪をつくる』のなかでも象徴的な一首だ。 竹中が詠み込んだ物事のなかで、最大の魅力を放つのは「疲れ」の描写である。 疲れは生活と切っても切り離せない。失恋、支出、家族との関係。どのように歩こうと付いて回る。この歌集の中には様々に表出した疲労感が収められていて、観察と

          星のように疲れていたり

          『銃と桃売場』試し読み

          篠原治哉さんと本をつくりました。 短歌の本です。 お互いが相手の短歌から抜粋した二首、自薦の五首を、「試し読み」として公開します。気になる作品がありましたら、ぜひ実物の本の方もお手に取ってご覧ください。140首を収録。「保存する」ことについて考えました。 ▼オンラインでの注文はこちら ■ 篠原治哉おそらく手を銃の形にしてる人 苦しいね、好きで喋っていないと 人をバカにする幼さを抱えててずっと東京の花吹雪 永遠は時間ではなく忘れてもいいということだよ月の石 車では

          『銃と桃売場』試し読み

          ダンスと、そうめん

          福岡のダンスグループ「jABBCLAB」の動画を狂ったように観続けている。仕事に疲れた時、寝る前、ご飯を食べている時、スクワットをしているとき。新作の動画もぜんぶ観ている。 真ん中で踊るyurinasiaさんが、インスタで「音楽が(ダンスによって)形を持つ」みたいな感じのことをちょっと前に言っていた。しびれる。通っていた大学の近くにあった大きな体育館のガラスの壁に向かいあって、夜な夜なダンスをしている人たちのことを思い出す。jABBCLABの『金木犀の夜』の動画を観てから、

          ダンスと、そうめん

          脱毛と、アステロイドシティ

          脱毛に行った。今日で17回目くらい。今日の担当は、はじめてのお兄さんだった。脱毛を始める前までは想像していなかったのだけれど、脱毛の仕方はスタッフひとりひとりでちがっている。 例えば、今日のお兄さんは冷却ジェルの塗り方はけっこう丁寧なのだが、レーザーの照射はけっこうサクサクといく。茶髪で恰幅のいいお兄さんは全てが早すぎて不安になるし、レーザーの痛みもなぜか少ない。雑談をするかどうかも人によってそれぞれで、今日のスタッフさんは事務的なこと以外はしゃべらなかった。 脱毛が終わ

          脱毛と、アステロイドシティ

          眼鏡と、パ

          眼鏡を買いに行った。友達全員の中で、一番眼鏡がさまになっている人にほとんどすべてをゆだねた。どんな形が似合うかをみてもらって、あらゆる角度からどんな眼鏡を選ぶべきかを考えてくれる眼鏡エージェント。渋谷の眼鏡屋さんの五店舗をおとずれた。五店舗のうちの一店舗では、店員さんが熱心に接客してくれたけれど、わたしは一言も喋らなかった。友達がほしい眼鏡の特徴を挙げると、店員さんはそれに該当するモデルを4つ持ってきて見せてくれた。 いろいろなものを見た末に、最終的には18000円くらいの

          眼鏡と、パ

          国士の気配が漂ってくる

          わたしたちが通った岡山大学のキャンパスはなかなかに広い。からっとした風が吹き、夕陽の青さや赤さがよく見える。大学も、大学のまわりも平坦で自転車があればどこにでも行けた。映画館、音楽、美術、喫茶店、大きな公園はひととおり揃っていて、過ごしやすい場所だった。 初めて話したとき、長谷川さんはすでに大学を卒業していた。当時流行っていた音声通話アプリで、共通の知り合いづてにたまたま初めて喋って、同じ大学に通っていたと知る。その何ヶ月か後に、長谷川さんが岡山に寄った折、からあげ屋さんで

          国士の気配が漂ってくる

          運転免許証 【短歌七首連作】

          運転免許証 どんなにか輝くだろうわたくしにまだ生まれえぬ運転免許証 話し足りないままだけど外国に晩杯屋ってあるんかなあ ぜったいにさわらないから宿すまでとうもろこしがとうもろこしを 落椿をきみがはじめて撮るときのいつか神話になる瞳だね わかるんだ燃え移るように手を取って昔見た琵琶湖を話してよ 大きな声をはりあげたくてもうずっとひとりぼっちの噴水のため 観覧車ひろびろまわる少しだけ遅くなるよう心で太る □

          運転免許証 【短歌七首連作】

          おへそ 【短歌五首連作】

          おへそ 海にいて朝焼けを見る ほんとうに朝と私と海だけがある たましいの重さの限り眼をつぶる母のおへそをつらぬくように 些細な声も手放せないねふるさとの位置も確かになってしまうね 会いたいひとがまだ生きている世界にはなるべく器をふやさなければ 朝焼けのなかを歩いて毛があってもおかしくはない手の甲ゆらす □

          おへそ 【短歌五首連作】

          へたくそなハンドサインを

          短歌のおもしろさに気づいた2019年に、まほぴさん(岡本真帆)を知った。固定ツイートになっていた作品を好きになった。いまも輝きは褪せない。親近感もすごかったのである。傘をなくしつづけてきた人生はこの国にあふれていて、その孤独なたましいたちに届く歌だ。 京都のごはん処で、丸山るいさんの名前をはじめて聞いた。まほぴさんから。まほぴさんが京都にいて、たまたま一緒にお酒を飲める機会があったときに。当時、わたしは津中堪太朗と文学フリマで売る『硝子回覧板』という短歌の本をつくっていて、

          へたくそなハンドサインを

          昼食を忘れる 【短歌七首連作】

          昼食を忘れる 流星群ふりまわしている手のひらに危うく息を盗られてしまう 歩きタバコで近づいてくるお兄さんの完全版の死がありました 丸腰でペルセウス座にも勝てます、いまのわたしの体調ならね 昼食を忘れることを信じられない気持ちを恥じつつあなたと話す 口角からひかりあふれている人よ 真夏のこけらおとしはすぐそこ 久しぶりに風に吹かれて思い出す聴いてた曲の大きなサビを 朝五時の夏の明るさコンビニの前に男女がまだ座ってる □ この連作は歌会ピオーネのフリーペーパー『

          昼食を忘れる 【短歌七首連作】

          反芻 【短歌五首連作】

          『反芻』 せやねんなの扱い方を正された動物園の記憶まぶしく おそらく罠とおもうのだけどとてもとても野薔薇のような横顔をくれる 三月は風が生まれてくるために編み込みのある揺りかごの形 駅前に大きな噴水が有ったから瞳をうしなわなかったそうだ ためらいなく真っ直ぐと立つ牛のような動物がいる 反芻燃える

          反芻 【短歌五首連作】

          顔面 【短歌五首連作】

          ひとりになれば案外冷やし中華など食べないことの大きな川だ 全身がユニクロだけど下着だけは無印良品みたいな感じ ひっそりと昼夜逆転なのだったハムスターでも飼いたいのだった 桜の葉はりつけてゆく顔面のそれはもうねぇまばゆかろうて 冷凍の米をぴかぴかチャーハンに変えゆく時はいつもうれしい

          顔面 【短歌五首連作】