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短歌 作品

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つくった短歌の一部です、ときたま思い出したように更新します よかったら感想おしえてね!
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記事一覧

大恋愛記 【短歌五首連作】

すりきれるまで響かせよ恋と薔薇 大きく腕はふりまわしなさい 聴かせたい、麒麟のような眼をしてたきみが知らない真夏の曲を 風が耳を千切ってしまった幕開けのわたしときみの大恋愛記 青春が夏風に乗り駆けぬけて映画を一日四本観たい 心臓にひかり伝ってゆくような恋だと思うあなたに会えば

デキャンタ 【短歌五首連作】

年末年始の空気がいちばん好きだ。このままずっとみんなが浮かれ歩いて、どの店にも琴の音楽が流れていればいいと思う。今年も食べたことのないものを食べて、会ったことのない人に会い、知らない場所をたくさん訪れたい。 お正月の短歌連作を書きました。 ■ 十二支の吐く息みちてたれさがる桃の赤味のやや強くなる ひたむきにきらめき志向やもんなあデキャンタひとつおねがいします 鳥は花の蜜を飲むのよたましいの発育にいいと知っているから 遊牧をいまだ続ける人々が青いベンチのカラオケ映像

油そば 【短歌五首連作】

油そば輝きなさい灼熱の中国四千年を背負って 誰だろう待っているのはどうしようみんなが労働してなかったら 油そばの話を続け三年目 春日亭もまあ戦えてるよ  あの夏のまじえげつねー引き笑いひびかせながら歩き続ける 熱狂の油そばバトルいけます、自分やれます魅せてあげます

千年 【短歌二十首連作】

めずらしく寿司を手で食うひとといていまどきめずらしいなと思う 桟橋は弱った人をひきよせる銀のぬめりをひけらかしつつ カーペットのない部屋に住む友人の家で地べたが硬すぎること アルコール濃度は赤くたかまって指は揺れれば革命家めく のろのろときみは膝から立ち上がり別れの言葉に廊下がのびる 引き分けねらいで訪れている ほら、ご覧 歯医者も花の世話をわすれる ハンバーグ寿司でも食べにいきましょう喧嘩腰でもたずさえながら 公園に褒められて伸びる子どもたち、あるいはそうじゃ

炎天下 【短歌八首連作】

人のいない路地をぬければ呟きのごとく静かな塔ひとつ建つ 手のひらの花冠のほろほろと涯からほどけゆく炎天下 水切りの鋭い石が駆けぬける とおく とおくとおく とおく へと 膝をつき道を歩いた 題名を失ってから長い童謡 落とし物 玉虫は花咲く姿、またあるときは現るようで 連絡をとらずに死んだ友人の眼差しだけを覚えている たましいがついばまれている音がする急いで腸を守らなければ 誤答ばかりの川のほとりに引き抜いてあでやかな紺碧の背骨を ■ この連作が掲載された10

鴨鍋 【短歌七首連作】

鴨鍋はまきもどされてとぼとぼと鴨が神話をしょってくる景 満天の星がうらやむ祝言にほてってやまない眼が並んでる 懺悔懺悔六根清浄やまびこはいまだいまだにまぐわっている なまもので皿は一面ぬるぬるに生き血を吸ったりするわけないよ あおくびをこっくりゆらすみたことがあるかい恋は絶壁である よく来たね 花をあふれて嬌声をあげながらゆくこの世の川を 一匹がはぐれて泳ぐ でも君ははぐれていないと思っていたわ □ 2023年11月に行われる文学フリマ東京で頒布予定の本にもこ

JOLENTA WYDAWCA 【短歌七首抄】

ずっと手を振る人たちが遠のいて見えなくなってその繰り返し 硝子片ひろってあるく夕まぐれ何度踏み潰されたのだろう 火刑すらねじ伏せる眼だ掴み取るようにあなたも空を見上げて 遠さへと眼の焦点が合ってゆく釦をはめるようだと思う 硝子瓶叩き割る手を叩き割る手を見つめればかがやきのさなか 星月夜 くつがえることばかりだね背中に薄い手が触れている 乾いている指に指輪の真鍮のいのり そろそろ日がしずむころ ■ わたしは拷問をうけたことがなくて、その痛みを想像できない。彼女が

運転免許証 【短歌七首連作】

運転免許証 どんなにか輝くだろうわたくしにまだ生まれえぬ運転免許証 話し足りないままだけど外国に晩杯屋ってあるんかなあ ぜったいにさわらないから宿すまでとうもろこしがとうもろこしを 落椿をきみがはじめて撮るときのいつか神話になる瞳だね わかるんだ燃え移るように手を取って昔見た琵琶湖を話してよ 大きな声をはりあげたくてもうずっとひとりぼっちの噴水のため 観覧車ひろびろまわる少しだけ遅くなるよう心で太る □

おへそ 【短歌五首連作】

おへそ 海にいて朝焼けを見る ほんとうに朝と私と海だけがある たましいの重さの限り眼をつぶる母のおへそをつらぬくように 些細な声も手放せないねふるさとの位置も確かになってしまうね 会いたいひとがまだ生きている世界にはなるべく器をふやさなければ 朝焼けのなかを歩いて毛があってもおかしくはない手の甲ゆらす □

昼食を忘れる 【短歌七首連作】

昼食を忘れる 流星群ふりまわしている手のひらに危うく息を盗られてしまう 歩きタバコで近づいてくるお兄さんの完全版の死がありました 丸腰でペルセウス座にも勝てます、いまのわたしの体調ならね 昼食を忘れることを信じられない気持ちを恥じつつあなたと話す 口角からひかりあふれている人よ 真夏のこけらおとしはすぐそこ 久しぶりに風に吹かれて思い出す聴いてた曲の大きなサビを 朝五時の夏の明るさコンビニの前に男女がまだ座ってる □ この連作は歌会ピオーネのフリーペーパー『

反芻 【短歌五首連作】

『反芻』 せやねんなの扱い方を正された動物園の記憶まぶしく おそらく罠とおもうのだけどとてもとても野薔薇のような横顔をくれる 三月は風が生まれてくるために編み込みのある揺りかごの形 駅前に大きな噴水が有ったから瞳をうしなわなかったそうだ ためらいなく真っ直ぐと立つ牛のような動物がいる 反芻燃える

顔面 【短歌五首連作】

ひとりになれば案外冷やし中華など食べないことの大きな川だ 全身がユニクロだけど下着だけは無印良品みたいな感じ ひっそりと昼夜逆転なのだったハムスターでも飼いたいのだった 桜の葉はりつけてゆく顔面のそれはもうねぇまばゆかろうて 冷凍の米をぴかぴかチャーハンに変えゆく時はいつもうれしい

相槌 【短歌五首連作】

『相槌』武田ひか 信号がかわるまで待つ対岸の花になるまで手を振ろうかな 海沿いに伸びている道あるきつつ瓦礫のごとく冷える指先 冴えていく感じがあって 図書館の生まれる様を誰も知らない 蟹鍋の祭りをひらく日取りだけ決まって道は帰路へと変わる 君の打つひどくあかるい相槌に火傷のような部分があって

生菓子 【短歌十五首連作】

私の生家には仏壇のすこし見えにくい位置に、エコー写真が置かれている。それに気づいたのは、仏壇を覗けるくらいに背が伸びたころだった。 ■ 『生菓子』 日向にも井戸にもやがて配られて君へしずかに降る変声期 一九九五年 心臓の台座のごとく生菓子は座す ホールケーキを生菓子とよぶ母親のもとへ生まれてしまって真夏 つるつるの部分にふれる 兄さんの年齢の数だけ母は火を 文鳥に骨格がある寂しさよ 花垣をつらぬく滑り台 お祝いをのべれば長くなりそうにゆっくりと時間はとろけだす