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掌編ファンタジー小説「異世界伝聞録」その14

ある灰の名は、グレイウッドの森にある石碑にこう書いてある。

『天昇りしものたちの碑』

石碑の裏に碑文が書いてある。

僕の世界では多くの人はいつか死ぬ。

僕らは死んだら灰になる。

死んだら幸せになるのだろうか?

苦痛から解放されるだけではないか?

僕は幸せを掴んだんだ。

ある灰の名とは“命(いのち)“

即ち、生きた証そのものだ。

皆が笑えば、雨だろうが、雪だろうが、じきに晴れ間も見えるだろうにね。

空はすべて知っているよ。

土がなければ雨は海にもなる。

水がなければ緑は育たず。

人の営みがなければ、それを知ることもない。

ある灰が幸せだったとは限らないし、その終わりの順番だって定かではないよ。

それでも灰のあとには花だって咲くんだ。

命とはどうあっても繋がるものだよ。

あぁ、君はきっと……。

僕たちはどうでもいいことに悩んでいたんだね。

ーーー異世界伝聞録。
   ある灰の名の詩。


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