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エッセイ集『おとぎの森』

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ゆるゆるエッセイを投下します。 お化け出てきます👻
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やっちまった!

やっちまった!

「やべぇ、やっちまった!」と朝起きて思った。

 ベッドから体を起こすのさえ気後れするほど、体中が鉛のように重たい。頭もゴワゴワする。

 今日一日で終わらせたいことがあったのに、体も頭も動かなくなってしまった。前日の夜、僕は夜中まで起きて、ひたすら絵を描いていた。

 僕はこの時期——といっても二週間くらいだけれど——ひたすらに絵を描き続けていた。

「本を書く」という自分のやりたいことを見つけ

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ルールのある喧嘩

ルールのある喧嘩

 ヒップホップ、もう少し厳密に言うと、ラップバトルに出会ったのは確か高校二年生の夏頃だった。

 YouTubeで何の気なしに音楽を聴いていると、たまたまお勧めの欄にラップバトルの動画が出てきたのだ。

 サムネイルの画像だけを見ると、何やらかっこいい男の人二人が向かい合って「今から戦うぞ」というオーラを出している。

 幼い頃に見た戦隊ものに始まり、ドラゴンボール、ワンピース、空手と強そうなもの

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蜂蜜と檸檬

蜂蜜と檸檬

 マヌカハニーというものを知っているだろうか。

 ニュージーランドの代表的な名物である蜂蜜で、結構高いけれど凄く美味しい。パウア貝という水色の綺麗な貝殻から作られたネックレスと一緒に帰りの空港で買って帰って来た。

 外国を訪れたとき、大抵の観光客は自国の通貨に外貨を変換しなおすのが面倒だから、現地や空港でお金を使い切って帰ってこようとする。

 僕もそうやって何となく「名物だから」という理由だ

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イルカウォッチング

イルカウォッチング

 僕は高校一年生の夏に、初めて海外を訪れるという経験をした。

 親がいきなり「ハワイに行かない?」という話を持ち出してきたのだ。

 今まで海外に行ったことなんて一度もなかったし、国内旅行でさえそんなに頻繁にする家庭ではなかったのに、いきなりそういう話が出てきたのだ。

「短期であれば、何とか行けそう」ということだった。

 僕はもともと海外に対する憧れが強かったので、「行きたい」という気持ちは

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帰り道のチーズケーキ

帰り道のチーズケーキ

 幼稚園に通っていた頃、僕は送迎バスに乗って毎朝登園していた。

 幼稚園が出しているお迎えのバスが来る場所が決まっていて、そこで行きも帰りも乗り降りしていた。

 毎朝、親と一緒に歩いてバス停まで向かい、帰りは親がそこで待っていて、一緒に歩いて帰る。そういう毎日だった。

 幼稚園には遊具や砂場があったので、毎日休み時間に遊べることを楽しみに、毎日ウキウキでバスに乗り込んでいた。

 でも、行き

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いじってくる人への対処法

いじってくる人への対処法

 世の中には、自分と気が合う人と合わない人がいる。そしてちょっぴり、自分に攻撃してくる人がいる。

 今日はそんな「嫌な奴ら」への対処法を小中学生の頃の僕のエピソードを踏まえて紹介しようと思う。

 まず、「マウンティング」という言葉を聞いたことはあるだろうか。

 僕が「嫌な奴だな」と思った人をスルーしやすくなったストーリーを紹介するのに、マウンティングは大事なキーワードなのだ。

 中学生のと

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アーティストからのメッセージ

アーティストからのメッセージ

 日々の生活の中に欠かせないものになっている音楽。

 以前はCDを買って音楽再生用のデバイスに曲を入れないと聴くことはできなかったが、最近はスマホで簡単に音楽を楽しむことができるようになっている。

 周りの人を見ていても、音楽を全く聞かないという人はほとんどいないように感じるし、もし音楽を聴かなかったとしても小説などの文学に浸っている人が多いと思う。

 最近ふと音楽を聴きながら気づいたことが

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ご注文の品が届かないときは

ご注文の品が届かないときは


 僕は小さい頃、とても外で遊ぶのが好きだった。

 両親が休日に「れいじ、どこ行きたい?」と聞くと、決まって「公園!」と即答していたらしい。

 父親からしたら別にいいけれど、母からしたら体力的に凄くきついからやめて欲しかったと後から聞いた。

 確かに小さい頃はよく公園に行って父親とキャッチボールしたり、サッカーしたりしていた。

 僕は小さい頃、元気にはしゃぐわんぱく小僧(?)だった訳なんだ

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お父さんは迷子

お父さんは迷子

「あ、あのぉ……」

 僕は迷子センターのスタッフさんに話しかけようとしていた。大型ショッピングモールで父とはぐれてしまったからだ。

 ショッピングモールに来ることには慣れていたけれど、迷子になることは初めてだったから凄く動揺していた。

 緊張してスタッフさんの後ろの方でもじもじ格闘すること数分を経て、勇気を出して話しかけた。

「どうかしましたか……?」

「あの、お父さんがいなくなりました

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三歳の頃の夢

三歳の頃の夢

 三歳の頃、保育園の帰り道に初めて建築現場を見た。

 小さい頃の低い視線からすると、すべてのものが今よりももっと大きく見えていた。

 とんでもなく大きな木材を抱えながら歩いていく大工さん。さらに、上を見上げると鉄パイプの骨組みの上を素早く歩く人影。

「なんだこのかっこいい人達は!」

 三歳の僕は「大工さん」に釘付けになった。自分が住んでいる家もこうやってできたのかと、ワクワクが止まらなかっ

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コーヒーのある暮らし

コーヒーのある暮らし

 僕は毎日コーヒーを飲む。

 もともと小さい頃から両親が毎朝2人で飲んでいて、コーヒーはとても身近な存在だった。

 両親が毎朝楽しそうにコーヒーを飲んでいるから、次第に興味を持ち始めて、父親に淹れ方を教えて貰った。それから、朝起きてから両親にコーヒーを淹れてあげるのが僕の日課になった。

 ただ、当時初めてコーヒーを飲んだ時は「なんでこんな苦いものを大人は飲むんだ?」と不思議で仕方がなかった。

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お化けを見た!

お化けを見た!


 僕は小さい頃に、お化けを見たことがある。

 ばあちゃんの膝の手術のお見舞いをしに、夜病院に行ったときだ。夜の病院というだけでただでさえ不気味なのに、田舎の病院はとても静かで、周りに何もないので余計に恐ろしい。

 母、妹、僕の3人でお見舞いに行き、駐車場に車を止め、非常用入り口から病室へと向かう。

 夏なのに海が近いからかやけに肌寒い。

 なぜかその病院は夜だけなのか、階段が通行禁止にな

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