お化けを見た!
僕は小さい頃に、お化けを見たことがある。
ばあちゃんの膝の手術のお見舞いをしに、夜病院に行ったときだ。夜の病院というだけでただでさえ不気味なのに、田舎の病院はとても静かで、周りに何もないので余計に恐ろしい。
母、妹、僕の3人でお見舞いに行き、駐車場に車を止め、非常用入り口から病室へと向かう。
夏なのに海が近いからかやけに肌寒い。
なぜかその病院は夜だけなのか、階段が通行禁止になっていた。祖母の病室は3階にあるので、必然的にエレベーターを使って向かう必要がある。
だが、病院に来るまでは結構な時間がかかったため、病室に行く前に各自トイレに行って、自動販売機で温かいココアを買って飲んでいた。
僕と母は早めに出てきていたのである程度飲み終わっていたが、ちょっと遅れて出てきた妹が飲み物を買うのを待っていた。
その時、ちょうどエレベーターに乗り込んでいく60代くらいの女性がいた。自動販売機からエレベーターまでさほど距離はなかったので、妹に急ぐように伝えて母と僕は先にエレベーターの方へと急ぎ足で向かった。
エレベーターの扉が閉まりそうだったのでかなり急いだが、ぎりぎり間に合わず僕らが扉の前につくと同時に扉は閉まってしまった。
ただ、妹もすぐそこまで来ていたので、ボタンを押してそのエレベーターに乗ろうとした。まだ扉は閉まったばかりなので、もう一度ボタンを押せば上の階に行くことなく扉は開くはず。
そして、予想通り扉は開いた……。
が、
中に入っていったはずの60代の女性が見当たらない。
その女性がエレベーターに入って扉が閉まり、僕らがボタンを押してもう一度扉があくまで間にあった時間は3秒程度。
3秒はどう考えても一個上の階に行って戻ってこられるような時間ではない。じゃあ、その女性はどこに行ったのか。
一瞬で起こった目の前の出来事に、力が抜けてしまって体が動かなくなった。隣の母を見ると母も口をもごもごしながら呆然としている。
どうやら見てしまったのは僕だけではないらしい。そして母と目が合う。
「え、あんたも見たん?」
「見ちゃった……」
あの60代の女性はどこに行ったのだろうか。
あの病院で亡くなった方なのか、それともまだご存命の夫や友達をお見舞いしにあの世からやってきたのか。
僕はまだ知らない。
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