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イルカウォッチング
僕は高校一年生の夏に、初めて海外を訪れるという経験をした。
親がいきなり「ハワイに行かない?」という話を持ち出してきたのだ。
今まで海外に行ったことなんて一度もなかったし、国内旅行でさえそんなに頻繁にする家庭ではなかったのに、いきなりそういう話が出てきたのだ。
「短期であれば、何とか行けそう」ということだった。
僕はもともと海外に対する憧れが強かったので、「行きたい」という気持ちは強くあったが、自分の英語力が現地で通用するとは到底思えなかったし、何より初めての海外だったので、行くという決断をするのはそれなりに勇気がいるものだった。
ただ、いろいろ悩んだ末に結局ハワイに行くことが決まった。
パスポートを作り、旅の計画を立て、荷物の準備をして空港へ向かった。
初めての海外への飛行機。
あまり飛行機に乗る方ではなかったというのもあって、余計に緊張した。
「フィッシュ、オア、チキン」とCAに聞かれ、ドキドキしながら「チキン」と言って食べた機内食は、びっくりするほどまずかった記憶がある。
飛行機の中で、今からどういうことが起こるのだろうと、ワクワクとドキドキで胸がいっぱいになっていた。
中学校二年生ぐらいから、海外というものに憧れを強く持つようになり、ずっと行ってみたかった海外。
期待と不安を胸の内に秘め、僕は飛行機での時間を過ごした。
気が遠くなりそうなほど長いフライトの末、僕はハワイの土地に降り立った。
ホテルにチェックインして、いろいろな場所を散策したり、現地の食べ物を食べて回ったりした。
初めてのアメリカンサイズのハンバーガー、日本人だと知って奇抜な形の照明具を押し売りしてくる店員さん、変な柄のトランプカード、蛍光色のギラギラしたシューズ、ドカドカとした燃費の悪そうなアメ車、刺青だらけの人々など、いろいろなものを見てきた。
現地では刺青を入れている人ばかりで「怖い町だな」と思っていたのだけれど、現地では文化として刺青を入れることが普通と知って驚いた。
———これが、異文化!
他にも、ちょっと小腹が空いたからと軽い気持ちで入ったパンケーキ屋さんで、要塞みたいなサイズのパンケーキが出てきて撃沈したり、憧れていた洋画に出てきそうながたいの良いアメリカンな人達を見つけてテンションが上がったり、たくさんの刺激的な経験をした。
一回プールで携帯を無くしたときに、サングラスをかけたイカツイ感じのおばちゃん警官に話しかけたことがある。
いかにも、スパイ映画やアクション映画に出てきそうな雰囲気のある人だったので、まるで有名人に話しかけるかのようにおろおろしながら拙い英語で話しかけに行った。
バズーカでもぶっ放してそうな雰囲気があって少し尻込みしたけれど、丁寧に対応してくれた。
「旅先で携帯無くすなんて馬鹿じゃないの」と笑顔で言われたけれど、バズーカを打ち込まれることはなかった。
全ての物事が新鮮で、刺激的だった。
「これが海外か!」と思った記憶がある。凄く楽しかった。
その中でも一番印象に残っているのは、やはりイルカの大群を目の前で見たことだ。
朝四時に起きて、ホテルの前に迎えに来る送迎バスに乗って、イルカウォッチングへ行った。そのバスに乗っていたスタッフさんは、バスの運転手を除けば全員日本人だった。
出迎えてくれたのは凄く陽気で、大阪のおばちゃんを思わせるような四十代の女性で、他にも、「日本を飛び出したい」といって勢いで現地までやって来て、このツアーグループで働いているという二十代前半のお姉さんもいた。
「そんな人生もあるのか!」と当時勉強して大学へ行くことしか頭になかった自分は結構な衝撃を受けた。
そして、イルカウォッチングの説明や現地での生活がどんな感じなのかといった話をしながら、目的地の海まで向かった。
目的地に着くと、「アロハー」と手を振りながら現地のクルーの人達に迎えられて、僕たち一家はイルカがいる可能性の高いスポットへと船で向かった。
「イルカに会えますように」というおまじないを込めた花を船に乗っている人全員で海へ撒き、野生のイルカがいるというスポットまでやって来た。
そして、そのスポットでウエットスーツを着て、海へと入っていった。
ハワイの海は透明度が高くて、海底までくっきりと見える。
クルーの人に、「海底まで透き通って見えるから浅く見えるけど、結構深いから安全具は外しちゃだめだよ」と忠告された。
ここまで透き通った綺麗な海に入るのは初めてだったかもしれない。
遠くの岩陰に隠れているカメさんも見つけた。
そうこうして、しばらく泳いでいると、何やら不思議な音が聞こえてきた。
キリキリキリキリキリキリキリ……
「何の音だ?」と思っていると、「来たぞ!」という叫び声が近くから聞こえてきた。
すぐそこに、イルカの大群がいる。
辺りを見回してみたけれど、どこにもイルカの姿は見当たらない。
「どこだ?」と思って、探し回っていると、前方の海底に、イルカを二匹見つけた。
ゆっくり滑らかに、スイスイと泳いでいる。
「お、いた!」と思っていると、後方から急にイルカの群れが泳いできた。目の前を九匹のイルカの群れが通り過ぎていく。
その中の一匹が、頑張って手を伸ばせば触れられそうな距離を泳いでいった。こんなに間近でイルカの大群を見ることができるなんて。
あのキリキリキリという音はイルカが出す超音波の音らしかった。
相当近くにいないと聞こえないが、偶然超至近距離にいたため、かすかに聞こえた。
あの光景は恐らく一生忘れられないだろう。
初めての海外へやって来て、今まで見たことがないものを見て、食べたことがないものを食べ、触れてこなかった新しい世界へと踏み込んでいった。
凄く興奮しっぱなしの旅行だった。
ここから、海外に対する抵抗感が薄れ、あまり通じなかった自分の英語力を鍛えて、海外の人と積極的に話したり、実際に海外に飛び込んだりした。
母が三語ぐらいしか使っていないのに、現地の人と何とかコミュニケーションをとれていることが悔しくって、日本に帰ってきてから英会話を始めた
最後の日には、船に乗って夕陽を見ながらディナーを食べ、陽が沈むと街中から上がる花火を見るという最高のイベントに参加した。
船に乗り込んで、夕陽を見ながらその船に立っているアメリカの国旗を見ながら、旅の終わりを実感し始めた。
今まで数日間の楽しい思い出を振り返りながら、これからもいろいろなところを旅していきたいと思うようになった。
海外や国内に限らず、まだ見たことがない景色や、まだ会ったことない人達に出会い続けていきたいと、心の底から思っている。
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