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#しゃかせん

恋愛がテーマの映画をカップルで鑑賞すると、2人の絆は深まる?

恋愛がテーマの映画をカップルで鑑賞すると、2人の絆は深まる?

鑑賞する前から、かなりの感動は得られるだろうと予測していた。そして、それは的中した。

気づくと場内のあちこちから、すすり泣きが聞こえてくる。
私は、そっと隣の彼を盗み見る。
すると、彼の目が心なしか潤んでいるように見えた。
私の視線に気づいた彼が、ちょっと照れたように微笑んだ。

映画ゴーストは、1990年に公開。
主演はデミ ムーア、パトリック スウェイジ。
ニューヨークで陶芸家の恋人と暮らす

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引き裂かれた恋 (連載小説 3)

引き裂かれた恋 (連載小説 3)

もうすぐ雅人に会える。
期待と興奮で胸が高鳴る。
新幹線に乗車してから、じっと座ってなどいられないほど、ずっと落ち着かない状態だった。
雅人に会えるのは現実のことなのに、夢の中にいるようだった。

東京駅に到着すると、東海道新幹線に乗り換える。
車内は3割程度、席が埋まっている。
座席に座ると、先刻までは小雨だったのに、
次第に雨粒が激しく車窓を叩きだした。
予報通り、台風がこちらに近づいているの

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引き裂かれた恋 (連載小説 2) 

引き裂かれた恋 (連載小説 2) 

アパートに帰宅すると、郵便受けに1通の封筒が入っていた。丸みを帯びた筆跡で記された亜矢の住所と名前を不思議な思いで眺めた。

(誰からだろう?)
裏を見ると、雅人の名が記されている。
(えっ、雅人からの手紙?)
手紙が届くことなど想像すらしたことがないため、驚いた。ドキドキしながら封を開けた。
便箋には、将来亜矢と結婚したい。今は寂しい思いをさせるけど、必ず迎えに行く、と書かれていた。
丁寧に書か

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引き裂かれた恋 (連載小説 1)

引き裂かれた恋 (連載小説 1)

「時間が止まってしまえばいいのに」

時計の秒針を、じっと見つめながら、
彼はポツリと呟いた。
「時間は、どんどん過ぎていく。前にしか、進まないんだね。止まったり、後戻りはできないんだね」

もし、時が止まってしまったら、永遠に歳を取らない、すなわち、永遠の命を手に入れることができるのかしら?

彼の言葉を聴きながら、頭の片隅で亜矢はそんなことを思った。

今日は、雅人が大阪へ発つ日だ。
今春、大

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ブルートパーズ (掌編小説)

潮騒の音を頼りに、闇に沈む海原に向かって立つ。
彼の願いを叶えるために。
悲恋の過去と決別するために。

数日前、不意に幸司が言った。
「その指輪、毎日してるね」
美和の左手の薬指には、いつもブルートパーズの指輪がはめてある。四つ葉のクローバーの形をしたデザインだ。元カレからプレゼントされた指輪だ。
「うん、気に入ってるの」
「自分で買ったの?」
幸司の問いに何と答えるべきか、一瞬言い淀む。
嘘を

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鈍色の街 (掌編小説)

鈍色の街 (掌編小説)

彼が住んでいた街を通り過ぎる。
ハンドルを握る手が強ばる。
もう二度と来ることはないと思っていた。
来たくもなかった。だが、どうしても外せない用事があった為、仕方なかった。

スッキリとした秋晴れだ。
それなのに車窓から見える街は、どこかボヤけて
久美の目に映る。
湖に沈んだ街、とでも表現したらいいのか。
それは恐らく、もうここに彼、和也がいないから
以前とは違ってそう見えるのかもしれない。
街が

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元作詞家の我流ポエム(詩)①

元作詞家の我流ポエム(詩)①

「 幸 せ 」早く大人にならなくちゃって
頑張って 頑張って 走ったね

もっと強くならなくちゃって
いっぱい いっぱい 我慢したね

何処まで来たか…何処にいるのか…
知る余裕なんかなかったね

今が一番暗い瞬間 ?

綺麗だよ
君みたいだよ
水平線が橙色を集めると
空は明るくなるんだね

もう大丈夫だよ
神様が言ってたよ
輝いていいんだよ

大人になんかならなくていいって
やっと やっと 気付

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深海 (掌編小説2000字のホラー)

深海 (掌編小説2000字のホラー)

もう、何も見たくない。
何も聞きたくない。
何も考えたくない。
何も感じたくない。
無、になりたい。

早朝、私は船の甲板から眼下を見下ろす。
そこにあるのは群青色の海面。
潮の流れが激しいのか、所々渦を巻いている。
凝視していると、吸い込まれていくような感覚に陥った。

(あそこに飛びこめば、楽になれるだろう。
寂しさと苦しみから開放される)

飛び込んだ後、しばらくは苦しいかもしれないが、

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近くて遠い場所

近くて遠い場所

少し遠出するくらいの気持ちで運転すると
着いてしまう距離。
決して、遠い場所ではない。

東北のニュース番組で、時折耳にする故郷の地名。
その地名を聞く度、郷愁がドッと押し寄せてくる。

地球上で唯一の場所で私は生まれ、成長していった。
夥しい思い出と共に。
私は、その地に確かに存在していた。
悲しみも喜びも、故郷は全て見ていた。

まだ両親が健在だった頃、考えていたことがある。
いずれ両親がこの

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あと1分だけ ❲掌編小説❳

あと1分だけ ❲掌編小説❳

助手席に乗り込んだ途端
私は怯える。
また、いつものように時間が瞬く間に過ぎ
別々の場所に帰る時が訪れる。
その辛さに耐えるのは
容易ではないことを知ってるから。

「久しぶりだね。今日は何時まで大丈夫なの?」
彼の問いに、いつも通りと私は答える。
私の胸中など知る由もなく、彼は車を発進させる。
やっと会えて嬉しいはずなのに、私は途端に寂しくなる。

ハンドルを握る彼は
時折、笑顔を向けてくる。

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宙ぶらりん [短編小説]

宙ぶらりん [短編小説]

激しく窓を叩く雨音。
部屋中がざわめく。
こんな嵐の夜は、自分は地球上に取り残された
唯一の人間のように思えてくる。
全人類が死に絶え、自分1人だけが生き残った
ような感覚。

孤独で不安な夜に、私は彼を想う。
心の中で問いかける。
生きてる?

それを、確かめる術はない。
ただ、問いかけることしかできない。

例えば、もし、呼吸もままならないほど
痛みに耐えきれないほどの病に伏してるとしたら

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カッコウ

カッコウ

今年もまた、カッコウが鳴いてるよ。
カッコウ、カッコウ、って一生懸命鳴いてるよ。
母さん、聞こえる?

「カッコウは、カッコウって鳴くから、カッコウっていう名前なの?」
小学生だった私は、母に尋ねた。
「そうかもしれないね」
母は微笑んだ。

カッコウの鳴き声は、初夏の便り。
毎年、5月の中旬を過ぎると、実家の裏山で
美声を響かせる。

【カッコウ、カッコウ、カッコウ、
カッ! カッ! カッ! カ

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かげろう

かげろう

私は、かげろう。

イヤ、偽物のかげろうだ。

生まれるや否や、時の渦に呑み込まれ

あたふたしながら、死へとまっしぐら。

つい、この間、成人式を終えたと思ったら

そろそろエンディングノートを準備しなければ

いけない年齢にまで達した。

本物のかげろうは私に比べ

ちゃんと(人生?)を全うしている。 

脱皮し、パートナーを見つけ 

産卵し、使命を全うし

やがて死に至る。

その間、たっ

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拭えない 消えない

拭えない 消えない

油断すると、あいつはすぐさま

心の隙間に忍び込む。

「あっちに行ってよ!」

追い払っても

飼い犬のようにすり寄ってくる。

それは、未来への漠然とした不安。

芥川龍之介が自ら命を断った理由も

ぼんやりとした不安が原因だったとか。

私は溜め息をつく。

拭っても、拭っても消えない不安。

Tシャツに過ってつけてしまった口紅を

何度も擦って拭おうとしても、なかなか取れずに

擦っている

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