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「柳田國男を読む」シリーズ

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個人的偏向に基づいた柳田國男の論文読書録をまとめました。 スーパー利己主義的な動機でマガジンを組んでいます。
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#歴史

国旗、校旗、"推し"の幟旗...「ただの旗」に魅了される古今東西の人々ー柳田國男を読む外伝_02ー

国旗、校旗、"推し"の幟旗...「ただの旗」に魅了される古今東西の人々ー柳田國男を読む外伝_02ー

(アイキャッチはニューヨーク公共図書館より)

①『折口信夫全集第二巻』中央文庫(1975)

②『柳田國男全集 14』ちくま文庫(1990)

序論 最近は、もう媒体を問わなくなってきていますかね。チケットを握り締め、会場前の景色にふと目を配ると町内会の催しで大変嫌気が差していた旗が幟旗が翻っているではありませんか。

興奮に乗じてが、なりふり構わずカメラを振り回す者、感慨に浸って開演時刻を忘却

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たかが昔話、されど昔話...昔話に潜む"慰め物"だけじゃない壮大な連絡網ー柳田國男を読む_14(「口承文芸史考」「昔話と文学」「昔話覚書」)ー

たかが昔話、されど昔話...昔話に潜む"慰め物"だけじゃない壮大な連絡網ー柳田國男を読む_14(「口承文芸史考」「昔話と文学」「昔話覚書」)ー

(アイキャッチはニューヨーク公共図書館より)

『柳田國男全集 8』ちくま文庫(1990)

序論 さて、今回は前回の伝説回に関連しての昔話の回となります。

昔話といえば、戦後日本人にあって、にほん昔ばなしという漫画やアニメが大変脳裏に焼きついている感じですが、皆様はどうでしょう。

大人になると"慰め物"要素として、忙しいがモットーのbusiness社会へのある種の反抗、幼児帰りとして摂取する

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迷信か真実か?...全国に広がる"伝説"の奇妙な一致についてー柳田國男を読む_13(「伝説」「神を助けた話」「伝説のこと」)ー

迷信か真実か?...全国に広がる"伝説"の奇妙な一致についてー柳田國男を読む_13(「伝説」「神を助けた話」「伝説のこと」)ー

(アイキャッチはニューヨーク公共図書館より)

『柳田國男全集 7』ちくま文庫(1990)

序論 伝説...今日では、日常語として溶け込み過ぎていますが、地元ヤンキーの武勇伝擬きは置いておくとして、対象としての伝説に触れる機会ってそう多くない気がするのですが、いかがでしょう?

社寺を訪ねれば、それの一つや二つに当たることはしばしばありましょうが、その場限りという感じで、その定義の広さゆえ、なか

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「福は内、鬼も内」!?...節分に現れる「鬼」の正体ー柳田國男を読む外伝_01ー

「福は内、鬼も内」!?...節分に現れる「鬼」の正体ー柳田國男を読む外伝_01ー

(アイキャッチはニューヨーク公共図書館より)

①『柳田國男全集 2』ちくま文庫(1989)
②『柳田國男全集 4』ちくま文庫(1989)
③『折口信夫全集 第十五巻』 中央文庫(1976)

序論 「鬼嫁」「餓鬼」「鬼婆」「鬼上司」.....
近頃でも尚、耳にすることができる接頭語としての「鬼」は、談笑時に友人や上司らのぎこちない笑みと共に発せられる言葉というイメージがどうしても先行してしまいま

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卑猥、悪口、歓喜、何でもあり?...失われし祖先の労働唄ー柳田國男を読む_09(「民謡覚書」「民謡の今と昔」)ー

卑猥、悪口、歓喜、何でもあり?...失われし祖先の労働唄ー柳田國男を読む_09(「民謡覚書」「民謡の今と昔」)ー

(アイキャッチはニューヨーク公共図書館より)

『柳田國男全集18』 ちくま文庫(1990)

序論 21世紀の今日、職場で音楽ないし歌曲が流れることもそう珍しいことではなくなってきています。しかし、ふと目を配ると大体は受動的であって、恭しく上司好みの歌曲を拝受するか()、世間で"流行歌"と見做されるものが垂れ流されているケースが大半のように思われます。
いずれにしても能動的にとなれば、勤務怠慢と

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元祖『半農半X』から中農への道...明治期の日本食料安全保障問題ー柳田國男を読む_08(「時代ト農政」「農政学」「農業政策学」「中農養成策」)ー

元祖『半農半X』から中農への道...明治期の日本食料安全保障問題ー柳田國男を読む_08(「時代ト農政」「農政学」「農業政策学」「中農養成策」)ー

(アイキャッチはニューヨーク公共図書館より)

①『柳田國男全集29』ちくま文庫(1991)
②『柳田國男全集30』ちくま文庫(1991)

序論 遅ればせながら、明けましておめでとうございます。
大分ご無沙汰しておりましたが、今年も不定期ながら、細々と活動していきたいと思念しておりますので、何とぞご贔屓の程、宜しくお願い申しあげます(跪拝

さて、今回も飽くせず柳田國男シリーズをお送りする訳です

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都会vs田舎?...いやいや元は兄弟ではないか。ー柳田國男を読む_06(「都市と農村」)ー

都会vs田舎?...いやいや元は兄弟ではないか。ー柳田國男を読む_06(「都市と農村」)ー

(アイキャッチはニューヨーク公共図書館より)

『柳田國男全集29 』ちくま文庫(1991)

序論 今回のテーマは普段のものとは様変わりした農業問題に関するものです。とりわけ、当論文は農業問題というより、そこを起点に日本経済の構造を解剖する形式が窺えます。

柳田國男といえば、民俗学という印象ですが、彼は東京大学卒業後、農商務省に勤務し、同省農政課に一年半ほど所属していた経歴があります。なので、

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日本人の信仰の根底、田の神とは?ー柳田國男を読む_05(「月曜通信」)ー

日本人の信仰の根底、田の神とは?ー柳田國男を読む_05(「月曜通信」)ー

(アイキャッチはニューヨーク公共図書館より)

『柳田國男全集16』 ちくま文庫(1990)

序論 今回の論文は終戦間もない頃の時代の変化が著しいなかで、「若い人たちの郡のために、辛抱強く書きつづけ」た「宛名のない手紙」を自然消滅せぬよう、一つにまとめたものになります。つまり、日本民俗学の父である柳田國男版noteということですね()
そのためか、いつもにも増して散文的ではありますが、その中であ

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昔の日本人の生活リズムとは?ー柳田國男を読む_04(「年中行事覚書」「新たなる太陽」)ー

昔の日本人の生活リズムとは?ー柳田國男を読む_04(「年中行事覚書」「新たなる太陽」)ー

(アイキャッチはニューヨーク公共図書館より)

『柳田國男全集16 』ちくま文庫(1990)

序論
 年中行事というのは、自然と我々の体内に生活リズムとして刻まれ、これを通してより強く四季折々の空気を感じ取ることができます。 

まさに人々の生活に欠かすことのできない生きた史料というものを柳田氏が見逃すはずはなく、見事喰らいついています。
柳田氏曰く、日頃からジャーナリズムが騒ぎ立てるような毎年

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昔も恋愛結婚だった!?ー柳田國男を読む_03(「婚姻の話」)ー

昔も恋愛結婚だった!?ー柳田國男を読む_03(「婚姻の話」)ー

(アイキャッチはニューヨーク公共図書館より)

『柳田國男全集12』 ちくま文庫(1990)

序論 第三回目は、恋愛結婚に関連する論文を取り上げます。
当論文は戦後間も無い頃に作成された複数の論文より構成されており、婚姻体系として古い封建主義的な見合い結婚ではなく、アメリカ型の恋愛結婚を大いに学ぶべしといった気風が蔓延していた中で、柳田は我が国の古来の風習としても婚姻が恋愛結婚によって成立して

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神社にある社殿、あれ何なん?...神社以前の神道ー柳田國男を読む_02(「神道と民俗学」)ー

神社にある社殿、あれ何なん?...神社以前の神道ー柳田國男を読む_02(「神道と民俗学」)ー

(アイキャッチはニューヨーク公共図書館より)

『柳田國男全集13』 ちくま文庫(1990)

序論 第二回目は、神社精神文化研究所の希望に応じて作成した民俗学の大意なる論稿へ加筆修正を加えた論文を取り上げます。
とりわけ、御社(社殿)の成立と氏神の変遷に関連する内容を抄録し、手前勝手ながら、硬直した自分の脳みそへの教練作業を温かい目で見守って頂ければと思います。
再三申し上げることになりますが、

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そもそも日本の祭りとは何ぞ?ー柳田國男を読む_01(「日本の祭」)ー

そもそも日本の祭りとは何ぞ?ー柳田國男を読む_01(「日本の祭」)ー

(アイキャッチはニューヨーク公共図書館より)

「柳田國男全集13 」 ちくま文庫(1990)

序論 本日は、新たなシリーズものとして、柳田國男特集を組み、境界人という名の無学の偏愛家を少しでも賢くさせてあげようという至極利己主義的な企画を実施しようかなと思っております。

今回は第一回目ということになりますが、そもそも、何故柳田國男の特集を組んだかという需要なき動機について、一言述べさせて頂け

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