マガジンのカバー画像

親子は嫌なところばかり似る

13
父、母に纏わる思い出話です。
運営しているクリエイター

記事一覧

コーヒー牛乳

コーヒー牛乳

うちの親父は工場を経営しており、昼は工場・夜は接待でほとんど家には居ませんでした。母は寂しかったのか、夜は台所で酒を飲んでいるか、友達と飲みに出掛けていた。

小学生のある日のこと。

遊んで帰って来ると台所においなりさんが作って置いてあった。「明日はお父さんが休みだから、お花見に行こうって言ってたよ」と母が教えてくれた。

おいなりさんは明日のお弁当にする為に置いてあったのだ。夕方から作り置きす

もっとみる
反りが合わない人でも話し合えば、何やかんやで やっぱり反りが合わない!

反りが合わない人でも話し合えば、何やかんやで やっぱり反りが合わない!

数年前、弟が一軒家を買った。部屋を持て余すのも何だからと親父を引取り一緒に暮らしている。その親父は一年前に再婚した。四十を越えて新しい母ができた。当然、義理の母も弟宅で暮らしている。

大人な弟は上手く義理の母と折り合いをつけて仲良く付き合っているが、僕は正直苦手だ。反りも気も合わない。だからと言って、どうこう言うつもりはない。

一方、兄である僕は住むところもままならず社会的地位も金も毛もない。

もっとみる
死に至る病、そして!

死に至る病、そして!

七夕の夜にしか会うことが出来ない悲しい運命の織姫と彦星だけど、星の寿命における一年間を人間の時間感覚に置き換えると約2秒に1回は会っている計算になるそうです。

そんな事を思いながら夜空を見上げると「悲しい運命なのは、人間、お前達の方だよw」と織姫と彦星が笑ってるのかのように天の川が輝いていた。頬が自然と緩んだ、ある年の七夕。

皆さんはどんな七夕を過されるのでしょうか?短冊に願いを託し素敵な夜に

もっとみる
どこの家庭にだって、独自のルールがある!

どこの家庭にだって、独自のルールがある!

朝帰りして玄関入った所で寝ぼけながらトイレ行く親父と鉢合わせした。寝ぼけている親父は僕を泥棒と思い一喝した。

「お…おい!おまえは…誰でちゅか!」

でちゅかって、息子でちゅよ♪
どうも、改めまして、バルスです。怖かった、親父と赤ちゃんプレイするとは思わなかったです。

若干、おっちょこちょいな親父なんですが、僕がまだ十代の頃、帰宅すると当時飼っていた犬が親父に向かって吠えていた。

親父はテレ

もっとみる
おにぎり~改訂版~

おにぎり~改訂版~

*以前書いた記事の改訂版になります。お付き合い出来る所までよろしくお願いします。

昨日までの雨が嘘のような雲1つない空。透き通るような青と言うよりは、研ぎ澄まし刺さるような蒼い空。昨日までの冷たい風とうって変わり、心地良い風が吹いている。心地良い上に何処となく懐かしい風で忘れかけている昔の思い出が甦りそうな風。

風の温かさ、強さ、匂い、質感…上手く説明出来ないが、たまに『この風、何処かで吹かれ

もっとみる
テトラの親子 ~前編~

テトラの親子 ~前編~

寝ぼけているようにも、発声練習をしているようにも聞こえる不規則な蝉の鳴き声が響き渡る、早朝。カーテンに塞き止められた陽射しが、わずかな隙間から部屋の中に入り込み、浮き上がるでも沈むでもなく舞う小さな埃を照らしていた。

「おい…、おい…。」

遠慮がちに身体を揺り動かされ目を覚ました。ゴツゴツした手の感覚で親父だと直ぐ分かる。親父に起こされたのは何年ぶりだろうか。

不機嫌に寝ぼけ眼を擦り、あくび

もっとみる
テトラの親子 ~中編~

テトラの親子 ~中編~

昼過ぎに浜名湖中央署に電話を入れ担当者から説明を受けた。

簡単に言うと、親父の知人が詐欺行為をした。それに加担、即ち共犯の疑いで連行したとのことだった。親父の意思でやったのか、それとも上手く利用されただけなのかは分からない。

ただ息子として言わせて貰うと、うちの親父はすぐ人を信用すると言うか、人が良いと言うか、警戒心が無さ過ぎと言うか。

何はともあれ、一度親父に面会したい。そう担当者に伝える

もっとみる
テトラの親子 ~後編~

テトラの親子 ~後編~

某年 初夏

あれから数十年、親父は残念ながら相変わらず元気です。ただ、困るのは差し入れで持っていったジャージを夏になると今だに着ている。

新しいジャージを買えと勧めても「このジャージはお前から貰った唯一のプレゼントだからな。」と言って譲らない。

俺は親父に誕生日も父の日もプレゼントを渡したことが一度もない。勿論、そのジャージはプレゼントではなく、留置所にいた親父への差し入れだから返事に困る。

もっとみる
追想。~桜の咲く頃に~前編

追想。~桜の咲く頃に~前編

その日、会社に無理を言って有給を取り、入院している母方のじいちゃんに会いに行った。

病院の駐車場に着き、フロント硝子越しに眺める病棟は、空の青を後ろに押しやるように輪郭が鮮やかだった。駐車場の隅に植えてある桜は前日の雨のせいでかなり散ってはいたが、春を喜ぶかのように咲き誇っている。

車から降りて背伸びをしながら深呼吸すると、静けさだけが胸に流れ込んでくる。風も温かく、とても気持ちがいい。こんな

もっとみる
グリーンサラダ~前編~

グリーンサラダ~前編~

朝と言うには遅すぎる。かと言って、昼と言うには早すぎる中途半端な時間に母のマンションを訪れた。

年に数回、母と晩御飯を一緒に食べるのですが、運が良いのか悪いのか今日は地元の祭りと重なり早くに来たが、間がもたない。

暇潰しにスマホを開く。脂でテカテカの画面を拭く為にティッシュに手を伸ばした。

「ん?ティッシュきれてるやん?」

「寝室の化粧鏡の横にあるから取ってきぃ」

仕方なくティッシュを取

もっとみる
少年が見た世界

少年が見た世界

それはまだ、牛に果物だけを食べさせ絞ったのがフルーツ牛乳になると本気で思っていた幼少期、朝ごはんを食べるのが嫌だった。

そんな僕に朝ごはんを食べさせようと母は様々な工夫をしてくれた。

目玉焼きにケチャップで顔を描いてみたり、縦に細長く切っただけのウィンナーをヒラメだと言い張ってみたり。母の努力を見ていると「なぜタコは作らないの?」そんな素朴な質問すら出来ず、朝ご飯を文句言いながらも食べれるよう

もっとみる
おにぎり(前編)

おにぎり(前編)

昨日までの雨が嘘のような雲1つない空。透き通るような青と言うよりは、研ぎ澄まし刺さるような蒼い空。

昨日までの冷たい風とうって変わり、心地良い風が吹いている。心地良い上に何処となく懐かしい風で忘れかけている昔の思い出が甦りそうな風。風の温かさ、強さ、匂い、質感…上手く説明出来ないが、たまに『この風、何処かで吹かれた風だ』って風がある。

久しぶりにそんな風が吹く小春日和に地元に帰り母親に会ってき

もっとみる
全力疾走。

全力疾走。

僕が小学生の頃、うちの親父は工場を経営しており、昼は工場・夜は接待でほとんど家には居ませんでした。母は寂しかったのか、夜は台所で酒を飲んでいるか、友達と飲みに出掛けていた。

そんなのある日。

遊んで帰って来ると台所においなりさんが作って置いてあった。

「明日はお父さんが休みだから、お花見に行こうって言ってたよ」と母が教えてくれた。

おいなりさんは明日のお弁当にする為に置いてあったのだ。夕方

もっとみる